Chronicles of Crime その後

 一昨年「Chronicle of Crime」を手に入れてプレイし九月にはこのような記事を書いた。そして「日本語化は絶望的」と締めくくったのだったが……すみませんでした。何と……日本語版が出ました!! 

 いやー、日本語版が出る、と知ったときは驚いたものです。しかし昨年の春先には出るのかなと思っていたものが、いつまで経っても発売日が分からず、暮れになってようやく発売。しかしそれも、プレイしてみれば分かることと思いますが、普通のボードゲームのテキスト量ではなく、小説を一冊分丸々翻訳しないといけないわけで(もしかするとそれ以上?)、それはボードゲームに詳しく普段ルールブックだけを訳している人にも、普段小説だけを訳している人にもなかなか難しいものかもしれない。そのご苦労を思うとぜひともこの日本語版にはヒットしてもらいたい、と切に願う次第です。そして、これがヒットしてくれたなら、まだ翻訳されていない「追加シナリオ」や拡張の「Noir」「Welcome to Redview」、そしてまたさらに控えているミレニアム三部作、「1400」「1900」「2400」とさらにその拡張「Chronicles of Time」まで訳してもらえるかもしれないじゃない……?

 ほとんどのものを買って(あと「2400」が届けば揃う)いるものの、つまみ食いのようにプレイしているためまだ全シナリオをやったのはオリジナルの「ロンドン科学捜査班」と第一拡張の「Noir」だけという有様だが、どんなものが控えているのか知ってもらいたいので分かる範囲でざっとご紹介したい。

 まずは「Noir」。これは写真を見てもらえば分かるように、がっつりハードボイルド、パルプ・フィクションの世界である。時代も1930,40年代か? そしてプレイヤーが操作する主人公の名は、サム・スペーダー! もちろん、私立探偵。探偵なので、基本まず依頼人がやってくる。依頼を聞いて移動すると、殺人事件が起きていたりする。起きているのだが、あくまで探偵なので現場には入れない。オリジナルの「ロンドン科学捜査班」のように鑑識やハッカーは助けてくれないわけだ。そして、その代わりに用意されているのが「Bribe 賄賂」と「Intimidate 脅し」、そして「Spy 監視」に「 Break-in 侵入」という四つのアクション。これらのアクションは例のQRコードのついたカードとして用意されており、鑑識などのキャラクター同様いつどの場面で使うかは完全に自分の判断。もちろん賄賂を使うためにはお金がないといけないので、今作では時間以外に「所持金」の項目もあり、現場捜索の際などに見つけたお金を着服したりしておくことで警官に鼻薬を利かせて見て見ぬふりをしてもらったりできるのだ(コンプライアンス? そんな言葉は知らないね)。
 そもそもが拡張パックなのでチュートリアルシナリオはなく、「The Thelma Dott Affair」(Normal)、「A Life Lost」(Normal)、「A Cure to Die For」(Hard)、「Hell's Hawk」(Hard)の4シナリオ。どれもいい感じだけれど、探偵が交通事故を起こしてしまい、相手の車のトランクから死体が出てくる!という発端の「A Life Lost」と、持ち主に災いが降りかかるという鷹の像(!)を探してうさんくさい連中が右往左往する「Hell's Hawk」が印象に残った。

 第二拡張の「Welcome to Redview」は完全未プレイだが、1985年、アメリカの田舎町、レッドビューで6人のティーンエイジャーが奇妙な出来事に立ち向かうシナリオがキャンペーンになっている模様。ヤングアダルトとかスピルバーグ映画的な感じなのではないかと予測している。これはシリーズ中唯一、6人から複数のキャラクターを選んでプレイするようになっていて、各人能力に違いがある。そして時々ダイス(そう、ダイスも入っている)を振って能力値にプラスマイナスし、判定しなければいけないという若干RPG味の強いものになっていそう。何人でプレイするのが楽しいかなと思案中。

 そして、Millenium Series。「1400」「1900」「2400」と題された単体で遊べる三部作と、それら三つ全部を持っていないと遊べないという変則拡張パック「Chronicles of Time」の四つで構成されている。それぞれ、1400年、1900年、2400年のパリを舞台とし、血が繋がっていると思われる、同じラストネーム(ラヴェル)を持つ探偵役を主人公とした1000年の時をまたいだ壮大なシリーズだ。「1400」のオリジナル要素は「犬」と「予知夢」。主人公に常に付き従っている愛犬に、手に入れたアイテムを嗅がせてやると持ち主のところへ導いてくれることがあるのだ。乗り物に乗ったりして途中で痕跡が途切れてたりもするわけだけど……。「予知夢」はシナリオの冒頭で指定のカードを引いてきて、これから起きることのイメージだけを観られる、というもの。といってもほぼ物語の予測はつかず、推理の役には立たないようになっていて、その場面に到達したとき「ああ、これのことか」と分かるという仕組みになっているわけ。面白い演出ではある。
「1900」には「パズル」要素が付け加わった。シナリオを進めて行くにつれ、時折「?」のついた「パズルカード」を引くように言われ、そこには暗号や、謎めいた絵が描かれていたりする。そのパズルを解かない限り先へは進めないという、若干脱出ゲーム味のある趣向。そしてそのパズルがどうしても解けない時のため、新聞のクロスワードパズル欄を担当する女性に頼むとヒントをくれる(主人公はその新聞の記者なのだ)。
 米アマで注文済みの「2400」はまだ届いていないので未プレイだが、年号から分かる通り未来の設定。犬ならぬサイバー・レイブン(カラス)を連れ、人間と区別のつかないアンドロイドのいるブレードランナーっぽい世界で最新機器を使って捜査をする模様。
 そしてそして、「1400」の追加シナリオ、「1900」の追加シナリオ、「2400」の追加シナリオ、全部を持っていないと遊べない(!)追加シナリオの四本が一緒に収められているのが「Chronicles of Time」(2022/1現在Kickstarter分のみでリテール版の販売はまだ。中古で放出した人がいたので取得済み。ただしまだ公開されているシナリオは二本だけ)。ラヴェル一族の1000年にわたる物語の結末が(そもそもこういう設定になっていることの意味が?)明かされるに違いない。……ってそう聞いたら、プレイせずにはいられないでしょう?

 そして昨年末発売された「完全日本語版 ロンドン科学捜査班」について。これ、実は英語版と大きく違うところがあって、元々は別売の「VR眼鏡」(スマホに取り付けるタイプ)が同梱なのだ。別で買うと結構高いのでこのお値段で同梱なのはなかなかお得。そしてこの眼鏡は実は単体ではなく、追加シナリオの一つ、通常なら520円する「極秘報告」がおまけとしてついているのだ(いくつかある追加シナリオは時々セールで安くなることもある)。
 この「極秘報告」は、やはりQRコードで読み込ませるようになっているのだが、あくまでユニークなコードで、別のスマホに二重にインストールすることはできないらしいのでご注意を。(機種変の際は、アカウントに購入記録が紐付いているらしいので更新すれば大丈夫だそうです!)

 今月には「2400」も届くと思うので、そしたらとりあえずミレニアムシリーズは頑張ってクリアし、全体の感想など書きます。

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