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Chronicles of Crime(犯罪年代記?)

 これを最初に見つけたのは日本Amazonでのおすすめだったのだけど(多分「Detective」を買ったせいだろう)、割高な気がして米アマ(amazon.com)から輸入し始めるきっかけになってしまったほど気になったゲーム。色んな意味でちゃんと届くのか心配だったが、10日ほどであっさり届いて拍子抜け。送料を入れてももちろん安上がり(これが更なる“沼”への罠……)。
 そしてこれがまた、何とも先進的でよくできたシステムのゲームだったのだ。

 中には「ボード」や「カード」が入っているのだけれど、果たしてこれを「ボードゲーム」と呼んでよいのかどうか、実は微妙なところである。言葉のいかなる意味においても「アナログゲーム」でないことは確かだ。スマホアプリが必須のゲームであり、すべてはアプリを通じて進行する「デジタルゲーム」「コンピュータゲーム」である。では「ボード」や「カード」はどう使うかというと、こんな感じになります。

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 被害者と手がかり、証拠品なんかを並べていく場所のあるハードボードが1枚あり、その周りに配置していくのが「場所Location」カード。それぞれの場所に登場する人物が配置できるようになっている。手前には必ずスコットランドヤード(今置いてあるのは上司)。その上の「03」の女性が今回の事件の被害者(行方不明)。左側にちらっと見えている4枚のカードはいつでも電話で色々教えてくれる助っ人、「医者」「科学者(鑑識)」「犯罪学者」「ハッカー」。
 そして、もうお気づきだろうが、すべての場所カード、人物カード、証拠品カードにQRコードがついている。まずは「Chronicles of Crime」のアプリをダウンロードし(誰でも無料でダウンロードできる)、起動する。と、「London's Forensic」(基本パック)内のチュートリアルを含め6つのシナリオがプレイできる状態になっている。「Extras」には一本520円で買えるシナリオが数本。(「Noir」「Welcome To Redview」は拡張パックをリアルで買わないとプレイできない。設定が全然違うようなので追加の場所カード等が入っていると思われる)
 どのシナリオでも、最初のテキストは誰でも見ることが出来る。たいていスコットランドヤードの上司が「あなた」を呼びつけるところから始まる。しかしそこで、「人物カード」の15番(今回の場合は)をアプリ内のQRスキャナーで読み取らなければならない。そうして初めてシナリオが進む。上司は「あなた」に事件の概要を伝え、どこそこへ行って誰々に話を聞け、などと言う。その場所カードを引っ張り出してきて(A~Pまである)そのQRコードを読みとるとそこに移動したことになり(一応このゲームには大雑把ながら時間の概念があり、何をしても時間が進む。もちろん移動も)、そこにいる人物が出てくるのでQRコードを読み取って話しかける。誰かと話をしている間は、もちろん別の人物や証拠品などのQRコードを読み取れば「それについての質問」をすることができる。とにかくすべてがQRコード、QRコード、QRコード。
 そして、初めてプレイした人が必ず「おーっ!」と言ってしまうこのゲーム一番の売りが、現場を「360度パノラマ」で捜索できるというところ。

 現場で時折「Search Clues」と出ることがあり、それがパノラマ映像捜索タイム。Searchを選ぶとVR眼鏡をスマホに装着するかどうか聞いてくる(つまり、装着しなくてもいいのだけど装着した方が臨場感はある。ただし装着するとピンチして拡大とかができなくなるので一長一短)。
 そして一分?ほど現場をぐるりと360度見回せる時間がある。死体があったり、その周りに血だまりがあったり、凶器が落ちていたり、書類が散乱していたり……と様々な情報をその時間で見て取る。複数でプレイしている場合は、とにかく見えるものを何でも言葉にしていく(1人しか見られないので。リプレイを選んで他の人に渡すことは可能だが、その分時間は経過する)。そして残りのメンバーは、抽象的な表現の証拠品カードの中からそれに相当すると思われるものをどんどん抜き出す。「ナイフ」があったら、「Melee Weapons」、「花」があったら「Plants」、猫がいたら「Animals」といった具合。そうしてできるかぎり抜き出した証拠品をQRスキャン。重要証拠だった場合は、ボード上に配置、関係なければ(あるいはそもそもそんなものは存在しなければ)、元に戻しておく。それらを鑑識に見せたり、ハッカーに見せたりして更に解析、どんどん新たな事実が判明し、新しい人物、場所、「特別な手がかり」が出てきて真相に近づいていく……。
 時間制限があったり、突然イベントが発生することも。
 最後にはスコットランドヤードに戻って上司の質問に答えていく。すべて正解すれば100点(ボーナス点があったりもする)。もし失敗しても、再挑戦できるので(最初から、だけど)、納得いくまで調査することが可能だ。

 基本セットだけで遊べるシナリオは先ほど書いたようにチュートリアル含め6本。「Power Behind」はeasy、hard、hardと3つのシナリオが連なったいわばキャンペーン(人物カード等はその都度新しく手に入れるので別にボードの状況を保存・再現する必要はない)。なかなかに緊迫するサスペンスフルな展開をする。「メインシナリオ」と言っていいものだろう。
「Curse of the Pharaos(easy)」は古代エジプトのスカラベが博物館から強奪され、その調査に出向いて調べていると途中で怪しい男が殺されてしまい……という展開。
「Every Roses Has Its Thorns(medium)」は、現場に必ず薔薇を残して美女を誘拐し、二日後には死体を遺棄するという事件が連続している中、モデルが失踪、現場には薔薇が! 何とか彼女が殺される前に見つけ出せ、という指令。ところが……?
 先ほど書いたように基本パックとは別に一本ずつ購入できるシナリオもあるのだが、先ほどリンクしたVR眼鏡(やや割高)にも一つシナリオをオープンするシリアルコードがついている(多分、普通に購入もできるのだと思うがさっさとオープンしてしまったので未確認)。
 プレイ時間は大体どれも60分~120分といったところ。ゆっくり悩みつつやればもっとかかるかもしれない。
「Noir」「Welcome To Redview」というそれぞれ四本ずつのシナリオが入った拡張パックがあることも先ほど書いた。遊びごたえは十分……というところだと思うが、実のところこのゲームの一番すごいところは「誰でもこのシステムを使って追加シナリオを作れる」というところなのである。

 ここに、公式にアップされたシナリオエディターがある。使い方も説明してくれている(もちろん英語)。360度パノラマ画像の作り方も指導してくれている。そして実際、ボードゲームファンが集まるBoardgamegeekというサイトにはファンが作ったシナリオデータがいくつもアップされている。それらをスマホにダウンロードすれば、このアプリでオープンすることができるという仕組みだ(ただし、ファイルをダウンロードする際はBoardgamegeekにアカウント登録が必要。このサイト自体がそういう仕様なので)。
 是非とも作ってみたい。そしてアップしてみたい……しかしもちろん、日本語では駄目なんだなあ……。ヨーロッパ数カ国語に対応してるんだけど……。
 日本語化は絶望的なので、どこか日本の会社がこういうのを作ってくれるのを待つしかないのかな。

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