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ディテクティブ シーズン1 完全日本語版

 昨年、Portal社の『Detective:A Modern Crime Boardgame』を偶然見つけて購入、遊び初めて以来、ボードゲームのさらなる「沼」にはまり、ついでに主にミステリっぽいゲームについては詳しい感想も書いておこうかなと(それ以外のゲームもたくさん買ったり遊んだりしているのだけど、そっちはほぼ素人の感想になるので)このnoteも始めたわけだが、随分長い月日が経ったような気もするのに実はあれから1年とちょっとでしかないと気づいてびっくりだ。そしてこの6月10日にはあの『Detective』の入門編として、同様のシステムを使って後から出された「Season 1」の日本語版がアークライトから発売されることになった。オリジナルだと、一回3時間強かかるシナリオが5本、それもキャンペーンで連なっているため、同じメンバーで(一人でもできるのだが、複数で始めてしまうと毎回集めるのが大変)やらなければならないためかなりハードルが高いところを、1、2時間で終わる単発のシナリオ3本でパッケージになっているため、価格も安く、気軽に遊びやすい。こういうものが発売されたということは、やはりオリジナルの『Detective』はネイティブの人にとってもかなり重めだったということなのだろう。

 実は発売前の時点だが、このnoteに載せていた無料シナリオ「Suburbia」の翻訳をブラッシュアップして実装してもらうこととなった関係で、一足先に「Season1 完全日本語版」を遊ばせてもらうことが出来た(一体何がどうなるか分からないものですね……って割と人生ずっとこんな感じの気もしますが。AntaresDatabaseの「郊外に死す」より日本語版がダウンロードできますので、以前の和訳は削除しておきます)。
 前作をプレイ済みorレビューを読んでくださっている方向けに大きな違いと個々のシナリオの紹介を。
 システムは、かなり簡略化されている。
・スキルトークンは一種類に絞られた。(前は4種類+ワイルド)
・捜査官の個別能力はなくなり、ほぼフレーバーに。
・日付の概念はなくなり、それに伴って「残業」「ストレス」もなくなった。
 唯一増えた要素が、
・人物カードがついてくる。
 オリジナルではデータベース上のプロフィールに写真があっただけなのだが、「シーズン1」では絵で書かれた人物カードが同梱されており、シナリオの指示に従って持ってきてめくる、というシステム。写真の方がイマーシブな気はするが、絵の方が「ゲームらしい」とも言える。そして「そこに既に積んである」カードを持ってきて開く、という方が「ボードゲーム」的なワクワクは存在する(まだ1枚開いてないカードがある!という状況も色々とメタ推理を働かせる余地があって楽しい)。
 概ね「なくてもいいんじゃない?」という要素が削られた、という印象ではあるが、その分没入感が減じているのは否めないかも。一長一短ですね。

1話「自然死なるや?」はもっともオリジナルのテイストに近いシナリオ。防犯ビデオの確認等、アンタレス・データベースも十分に活用しなければならない(このゲームはスマホかパソコンが必須です)。タイトにまとまった、入門に最適の作品。
2話「血とインクと涙」はがらっと雰囲気の違う本格ミステリ調。パーティで富豪が殺され、嵐のために警察への連絡もままならず、データベースも役に立たない……という(ある意味)驚きの発端。シナリオはよくできているけれど、若干別のミステリゲームを遊んでいるような気にはなる。
3話「崩せぬアリバイ」収監されていたかつての街の大物が長い刑期を終えて出所した日、ある男が殺された……しかしその男は実は……? 「ディテクティブ」らしさ、でいうと1話と2話の中間くらいの感じか。
 3話を通じてとにかくみっしりとテキストが詰まっていて、「日本語で読んでもやっぱり結構なボリュームだなあ」と思うと同時に、英語を必死で読み解きながらプレイするのではやっぱり細かいフレーバーを読み落としてしまっているなということを改めて思った。要点だけを掴めばそれでいいというゲームではないし、細かいニュアンスの中に重要な情報が紛れてしまったりもするのだ。できることなら本作が売れてくれて、オリジナルも日本語版が出たら、もう一度ざっとプレイし直してみたいものだ。結構散々な点数だったエピソードもあったはずだし……。

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