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着物、はじめました。(その12・案外、馴染む場所もある)

前回は「なんで着物着てるの?問題」について書いたが、今回は、その先の延長線、「なんで?」と思われない空間について書いてみようと思う。

確かに。
今の日本を生きていく上で(って、何だこの書き出し)、着物姿だとヘンと思われる場所が多数あるのは否めない。
着物姿で、二郎系インスパイアとか、まぁ店内の客や従業員全員から「Why、何故に???」と思われるのは間違いない。
日傘に夏着物は素敵だけど、でも、そのカッコでビバホーム行って、電動ドライバーとか買ってたら、絶対不思議がられる。
着物姿で保育園のお迎えもヤバいだろう。いくら「仕事帰りなんです!!」と言った所で、他の保護者達から絶対「遊んでる人」と思われそうだ。
「だから絶対、着物って分(ぶ)が悪いよなー」と、うちの夫は言う。
私も、残念ながらその通りだよなと思う。

しかし。
4年くらい着物にハマって、あちこち出歩いてみて「案外、しっくり馴染む場所ってあるんだな」と感じた空間もある。
と言ってもそれは「お茶のお稽古」とか、そういう和事がらみの場所ではない(私は、お茶やお華や歌舞伎とかの趣味はない)。

1回目の原稿にも書いたが、「ミコちゃん」こと弘田三枝子のライブイベント会場(そんなに広くはない)では、不思議とすんなり馴染んでた。
なんでだろう。やはり「弘田三枝子」だからだろうか(ご存知ない方は、ネットで検索してみて下さい・・・・)。
加えて、ミコちゃんの大親友の山田邦子が、赤系のド派手な格好で会場にいたからか。そして場内は、若い世代の弘田三枝子ファンでぎっしり。
なんというか「ガバガバなくらいに懐が広い輩」が大挙してた空間だったと思う。そんなふうだから、いちいち着物に「?」と反応する雰囲気ではなかったのだろう。

新宿2丁目のゲイバーも、これがなかなか馴染んでた。
友人のサムソン高橋さんが「いい加減、飲みに来なさいよ!!」と、御自身が働くお店に誘って下さったのだ。
さっそく友人と連れ立って、そのお店を訪ねてみたところ。
そこには、これまたド派手なメイクとファッションの、ドラァグクイーンの方がいらっしゃった。
その日は、このお姐さんの誕生日だったらしく、お客さん皆にバースデーケーキが振舞われ、明菜の曲がワッショイ状態で合唱され、完全に非日常な空間。着物姿でウキウキ気分が上がってる所に、さらにコレだもの。
楽しいったらありゃしない。
「なんで着物着てるの?」って聞いてくる人は誰もいない。
「あー、今日、着物着てきてホントよかったなぁー!!!」と、トイレの鏡に映る自分を見て、心底思った。
「着物着てる自分、好きだー☆」
自己肯定感が、ググググっと高まった瞬間だった。

それにつけても、弘田三枝子だのゲイバーだの、「結局そういう所ばっかりか!!」と言われそうだが、ついでだからもうひとつ。
「SMバーで着物」というのも、これがなかなかオツなものだった。
(ドン引きしないで下さい)

仕事がらみで知り合った知人の「女王様」が、面白いイベントに誘って下さったのである。そ・れ・が。
「人間家具」。マゾの男性を家具・椅子にして、そこに座ってお酒やおしゃべりを楽しむという企画。とはいえ、家具になってるマゾに話しかけるのはNG。彼らはあくまでも「モノ扱い」。

2人の女友達が「めっちゃ行きたい!!」と名乗りを上げてくれ、さっそく都内の某SMバーへ。20人くらいの女性が来てたと思う。
会場に入ったら、「黒いTバック一丁」まさに「パンツ一丁」のM男性達が(これまた20人くらい)四つん這いになって「座ってもらう」のをじっと待ってる。

その日、私は「黒系の十日町紬」であった。
黒を選んだのは、女王様達がよく黒のレザーとかお召しになってるので、それに合わせてみたのである。
とにかくM男さん達が喜んで下さればいいなと思い(って、どっちがMなんだか)品のある感じにコーディネートした。
(にしても、四つん這いの男に腰掛けるって、いくらM男性とはいえ、やっぱりすっごく気を使ってしまい、私には女王様の素質はないなと実感)

イベント終了後、洋服に着替えたM男さん達と、お酒飲みつつ交流したのだが、「和服姿の女性に座って頂いて光栄でした」と言われ、めちゃくちゃ嬉しかった(笑)。
ちなみに、このイベントに誘って下さった女王様も実は着物好きの方で、ご実家が呉服屋さんなのだそう。この方が以前、こちらのバーで着物姿で「SM落語」をやったのを見に行きましたが、「半衿、自分でつけてるんですか!?」と聞いたら「いや、お母さんでーす!!」というお茶目な回答にめちゃウケました。

さて、私にとっての「着物・案外、馴染む場所」が、随分と非日常なとこばかりの印象を持たれたかもしれない。しかし、もう少し普通の場でも、馴染む場所はある。

昨年のこと。
友人が「文学フリマ」なるイベントで、自費出版の本を売るという。
せっかくだから着物で行く事にした。なんか「文学」、だし。
場所は「流通センター第一展示場」。アクセスは東京モノレール。
うっかり急行に乗ってしまい、目的地を通過して、そのまま羽田空港まで行ってしまった。
昼時だったので、空港内で何か食べてから戻る事にした。

にしても、いやー、大昔の羽田は国内便だけだったと思うが、今はぜんぜん違うのでびっくりした。
ウェルカムジャパン♫で、ニッポンのおもてなし文化ガンガンぶっ込み。
天丼弁当がうまそうだったので購入し、空港内のベンチに座ってモリモリと舌鼓を打っていた。
そうしたら。
ふいに「視線」を感じて、隣のベンチを見た。
どこの国の方か分からないが、バックパッカー風の、年配の白人女性が私をガン見している。
きっと、着物姿がめずらしかったのだろう。
お互い目があって、思わずにっこり微笑みあってしまった。
それがなんだか、すっごくすっごく嬉しかった。

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ニッポン・コクナイでは、「なんで着物着てんの?」と、同じ日本人から言われて凹んでたりするのに。
けれど、国際線の空港では、すごーく胸張っていられるという、この、不思議。
「着物って素敵でしょう〜〜〜〜???♫」と、ジワ〜っとした自信が持てるこの感覚、たくさんの人に味わって欲しいって思う。
言葉は交わさなかったけど、お互いにっこり。
着物着るようになって、ほんとによかったなぁと思った瞬間だった。



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