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着物、はじめました。(その1・とはいえ、どこに着てくんだ?)

「冷やし中華、はじめました」みたいだが、「着物、はじめました」である。私が着物にハマって、3年がたとうとしている。まだまだ、まーだ「初心者」だ。
そんな、初心者の私が、この3年の間にリアルに感じた、着物についてのアレコレを「現場からは以上です!!」的に、書き綴ってみようかと思う。
「今年は着物に挑戦してみたい!!」と思ってる方々のお役にたてれば嬉しい限りです。

さて、「着物、すごく着てみたい!!」「けど、着る機会がぜんぜんない!!」というこの悩み、巷でホントによく耳にする。
で、本やネットで調べてみると、真っ先に出てくる答えが「お茶や歌舞伎」
・・・・ザ・王道、である。その次に「観劇・コンサート」、そして「美術館や神社仏閣めぐり、レストランでのお食事」などが挙げられている。セレモニー系でいえば「結婚式・七五三・入学式&卒業式」といった所か。


にしても、こうして改めて書き出してみると、なんだか、「ぐははは!!」とか爆笑してたら怒られそうなとこばっかである。「観劇やコンサート」って聞くと、なにやら「これから帝国劇場でリア王を観てきますの」みたいなイメージがわくし、「レストランでのお食事」って言われたら、「フレンチのフルコースを食べに」な雰囲気が伝わってくる。着物、イコール「ぐはは」ではなく、「おほほ」でなければならないような感じだ。
それがとにかく「着物って堅苦しい!!」そして「敷居が高い!!」という印象を与えるのだと思う。
七五三や卒入学式に至っては、子供がいなきゃ始まらないし、結婚式。
これに関しては、私の場合、周囲に結婚しそうな人がもういない。友人は、あらかた結婚しつくしたというか、さもなくば、独身を貫いてる輩ばかり。なので、「結婚式は着物で」な機会は、もうしばらくはなさそうである。
そして私自身、お茶や歌舞伎にも全く興味がなく。
だから、着付けを習い始めた当初は「ホントに、一体どこに着てくんだ・・・?????」と、悶々としたものであった。

で、今回、これを書くにあたって思い出してみた。
自分で着付けして、初めて出かけたとこってどこだっけ?と。
「そうだ!弘田三枝子のイベントに行ったんだっけ!!!」


・・・・・弘田三枝子。世間ではその(整形しすぎな・・・)容姿でビックリ人間的な扱いを受けているようだが、れっきとした、昭和を代表する歌手である。代表曲は「人形の家」「バケーション」など。
着付けを習い始めて間もない頃、ゲイの友人が興奮気味に「大変!!二丁目のクラブにミコちゃんが来るわよ!!」とメールをくれたのだ。
「だったら、着物で出かけてみよう!!」と、思わずほくそえんだ私。
こうして、私を含め、総勢7人(ゲイ3人・ノンケ女3人・妊婦1人)で二丁目の某クラブに押しかけた次第である。立ち見の店内フロアは、弘田三枝子ファンの若い男達(多分あらかたゲイの方々)で、すし詰め状態。
間近でミコちゃんの姿を拝みたかった我々は、ステージ近くの場所をなんとか確保できて、ウキウキしながらショーが始まるのを待っていた。
と、その時。
「ステージ前にいらっしゃる方々は、後ろのお客様が見えないので座ってくださ〜い!!」というスタッフの声。
私の頭は一瞬、真っ白になった。
「・・・・・えええ!!???だって私、着物だよ!!??」

・・・・とはいえ。
その日、私が着てた着物はポリエステルのものだった。
ポリ着物は、汚れても、ネットに入れて家で洗濯出来る優れものだ。
まさに「ええい、ままよ!!」である。
私は「ガバ」と着物の裾を膝の上までたくし上げ、そのままドスンと体育座りを決め込んだ。帯は、名古屋帯で一重太鼓(半幅帯ならもっと楽だったろうに)。ちなみに、見知らぬ男(多分ゲイ)に「え!!??」と、笑われたけど、全く気にも留めなかった。私、着物ど素人のくせに、相当図太い神経してた。

そしてその帰り道。タクシーを降りたら、なんと外は土砂降りの雨。
「・・・・だから私、今日、着物だっつーの!!!」
で、この日二度目の「ええい、ままよ!!」である。
そのまま200メートルくらい先の自宅まで、ダッシュで帰宅。雨の中走りながら私は感動してた・・・・・「着物に草履でも走れるじゃないか」。
そして。
家で着物を脱ぎながら、しみじみと思った。
「着物着てても、どこへでも行けるんじゃないか」と。

ちなみにこの、えんじ色の着物はミコちゃんのイベントに着ていったものではなく、その後、義母さんから譲り受けたものである。
塩沢紬という着物。(一応、紬なので、家では洗濯できない。だから「地べたに体育座り」とか「土砂降りダッシュ」などのおてんば行為はご法度である。)帯は、たんす屋のセールで買ったリサイクル。帯揚げ・帯締めは着物屋くるり。帯留めは京都ちどりや。半衿はKIMONO MODERN。


考えてみれば、この着物でも色々お出かけしたもんである。
九段下のホテルで、地元山形関連のパーティがあった時(タダ酒タダ飯を思いっきり堪能。てか、タダ酒の方が比率多し)。
木曽路にしゃぶしゃぶ食べに行った事もある。
正月にこれ着て義理実家に挨拶に行った時は、随分と喜んでもらえたっけな。宿泊してた名古屋のビジネスホテルで着付けして、義理実家訪問。
新宿紀伊国屋裏の磯丸水産で、普段はカナダ在住の幼馴染と盛大な酒盛り。
二丁目のタイ料理屋でタイ飯かっくらってから、その足でそのままゲイバーにも行った。

私の人生には、「おほほ」よりも「ぐはは」な機会が圧倒的に多い。
「おほほ」な機会の時だけ着物を着てたら、あっという間にタンスの肥やしだ。だから私は「ぐはは」な集まりにもどんどん着て行くようになった。
「どこに着て行ったらいいか分からない」とお嘆きの方には、是非、「おほほ」以外の場にも目を向けて頂きたい。「ぐはは」な場でも着物はぜんぜんOKだ。
個人的には、「うふふ♡」な場に着ていく機会はもうないんだな、と、ちょっと寂しくなってたりする、もうすぐ50歳の私である。


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