スマブラの改造MOD炎上は正しかったのかー改造行為の善悪と国外との比較
どうもこんにちは。実はスマブラで3キャラくらいVIPに入っているあべしんです。最近のスマブラ界隈、なんだかちょっと炎上していますよね。本日はざっくりと炎上についてのおさらいと、国内外の改造MODシーンの比較から色んなことを考察していこうと思います。それではどうぞ。
まずは炎上のおさらい
今回の炎上は、ムタマ氏というスマブラ解説系Youtuberが上げたある動画が原因で起きました。
それが、「改造MOD動画」です。改造MODとはゲームを改造データのようなもので、NintendoSwitchといったゲーム機やPCの内部データをカスタムして自分のやりたいように遊ぶという遊び方の一つです。
MODとはゲームデータに手を加えてしまう遊び方なので、別に法に触れているわけではないですが、ゲームメーカーによってMODに寛容だったり厳しかったりなど対応が分かれたりするものだったりします。
今回ムタマさんがMODを使用したのは任天堂による「スマブラ」。普段の任天堂は比較的ゲーム機のカスタムには寛容な方ですが、今回は運悪くムタマ氏の動画が削除されてしまいました。
削除動画はスマブラの過去シリーズの技を現行シリーズで再現した物
上記動画は映像編集での再現版
削除動画は改造MODを利用しこの内容をゲーム内で行っていた
ムタマ氏はそれを受け
「Youtube上には他にもMOD動画が上がっている筈なのに、なぜ自分の動画だけ…」
「(具体名を出して)他の人もやっているのになぜ自分だけなんだ…」
とTwitter上で怒りを露わにしてしまいました(※内容は僕が勝手に要約したものです)。その発言がスマブラ界隈の反感を買い、炎上に至ったというのが事の顛末です。
何が叩かれた?炎上のポイント
今回の炎上のポイントとしては、大きく2点あります。それは、
・ムタマ氏が権利元である任天堂に感情的に怒ってしまったこと
これは正直炎上してしまっても仕方のない部分です。例え多少理不尽であろうと、スマブラを扱う以上その扱われ方を決める権利は任天堂にあります。任天堂が無ければスマブラをそもそも遊ぶことすらできない。
特にMODはグレーな遊び方です。個人的に遊ぶものや無償配布などならまだしも、今回はYoutubeにアップロードし収益を得ています。
なので、今回のような削除はあくまでも冷静に「仕方のない事」として済まされなければなりません。任天堂が許してくれるからグレーに遊べているだけなのですから。ましてや他人を巻き込むなど言語道断です。
(現在は本人が謝罪されてツイートを消しているので敢えてここで該当スクショを載せることはしません。見たければご自分で探してください)
そしてもう一点。こちらが今回の議論のメインテーマになります。
・日本における改造行為への風当たりが悪いこと
正直、ここまで炎上が広がっているのは日本における改造行為への風当たりの強さが少なからず関係していると思います。改造MODの使用はあくまでグレーな行為で、全部が良いとは言えませんが全部が悪いとも言うことが出来ないものです。
実際に今回の改造動画の削除は改造コンテンツが任天堂的にダメだったわけではない可能性も十分にあります。ムタマ氏が炎上の際に言っていたようにまだ消えていない収益化された改造動画もYoutube上に多数残っています。
にもかかわらず、Twitterで「スマブラ、改造」等で検索すると今回の騒動と関連して改造そのものがアウト、改造動画なんか言語道断といった意見もちらほら出てきたりします。
仲には「スマブラ改造系Youtuber」のような改造動画をアップロードすること自体をネガティブな意味として利用しようとする動きもあります。
その一方で改造行為自体を擁護する意見はほぼ存在しませんでした。一応ムタマ氏本人とそれに賛同した方達から任天堂に改造コンテンツの是非を問う動きがあったくらいです。しかし結局この動きも炎上に巻き込まれて縮小していきました。
良し悪しのあるグレー行為のはずが、良くない部分ばかりが議論されてしまいがちのスマブラ改造。それは正しい事なのか、それとも他のやり方があるのか。それを考えるためにも、海外でのMODの扱われ方について少し触れていきます。
改造MODユーザーが堂々と任天堂に抗議する海外シーン
実は海外シーンでは、もっとポピュラーに広く改造コンテンツが扱われていたりします。代表的なのは改造MODを利用したesportsの大会が堂々と行われていたこと。当然参加費などもかかり賞金も出る大会です。
「スマブラDX」とは大乱闘スマッシュブラザーズシリーズ2作目に当たる作品です。2001年発売のゲームながらその競技性の高さから度々esports的な盛り上がりを見せ、最近まで世界最高峰の格闘ゲームの祭典であるEVOの種目として採用されていたほどプレイヤーに愛されています。日本でも、あのエナジードリンクで有名なRedBullからスポンサードを受けるaMSa選手などが有名です。
スマブラDXは旧世代機のゲーム機である任天堂ゲームキューブを利用しているため、オンライン対戦のためにはPCでのエミュレーターやMODが必要不可欠です。スマブラDXの発展と改造コンテンツの関係性は切っても切れないものなのです。
先ほど紹介した記事では「The Big House」というイベントの大会が中止になってしまっています。ですが、この大会は2011年から中止になった現在までスマブラの世界大会として競技シーンを盛り上げ続けてきたのは間違いありません。そのうえ現行のシリーズであるスマブラSPでは、今現在もプロたちが目指すべき大会のうちの一つとして存在しています。
任天堂はこれまで、あくまでスマブラは本格的な競技ゲームではなくみんなで楽しく遊べるパーティーゲームだというスタンスを取ってきました。
公式大会も存在しましたが、プロゲーマーが参加するような競技シーンで行われてきたような本格的なルールではなく、ランダム性の強い独自のルールでした。そのためスマブラユーザーとしては、競技シーンはユーザーが自主的に盛り上げてきたものという自負があります。
こちらはまた違ったイベントですが、同様に任天堂がイベントを中止したニュースです。こちらの中止騒動の際は、海外の有名スマブラプロゲーマーであるHungryBox氏が自分の名を出して批判を行っていました。
海外ではどんな手段でもゲームが面白くなること=ユーザーとゲーム会社の両方の利益であるという考え方が強いように思います。そのため既に売っているゲームに不便な要素があれば自分でカスタムし、多少の親告罪の違反程度であればゲーム会社は目を瞑るというプロセスがあるのではないでしょうか。
↑スマブラDXの歴史として大変参考にさせていただいた記事
実際にスマブラDXの競技シーンはそうして発展してきましたし、MODが不要になった現行のスマブラSPの競技シーンでもスマブラDX時代を基にした発展を遂げています。
ユーザー主体の発展を見せてきたスマブラ界隈ですが、最近ではとうとう任天堂も重い腰を上げ公式が競技シーン参入してくるという事態も起きつつあります。
始めは公式が意図しない盛り上がり方だったとしても、やがてはシーン全体を巻き込むほどのコンテンツへと成長しています。海外シーンはこうした形て敢えて白黒ハッキリつけない事へのメリットを示しているのではないでしょうか。
補足資料:MODがそのまま独立したゲームになる場合もある
こちらの記事はスマブラから少し派生して、ゲームのMODそのものが独立しMOVAというゲームジャンルを確立した歴史について語られています。
MOVAというジャンルのゲームは、オリンピックの種目候補となったLeague of Legends(通称LOL)や最近日本でも流行っているポケモンユナイトなどもありますよね。
グレーな改造を容認することのメリットをここで少し補強しておきます。
まとめ
ここまで書いてみて思うのは、果たして本当に現状の改造=悪とする風潮は正しいものなのか?という事です。もちろん、ムタマ氏が他人を巻き込んで感情的になってしまったのは批判されてしかるべき事かもしれません。
しかし、ムタマ氏があげていた改造MOD動画は純粋にスマブラを好きな人から見ても面白く、スマブラの新たな遊び方を魅せてくれるものでした。
全ての理解が浸透した上でのバッシングならば仕方ないと思いますが、改造MODとそれに伴った歴史や発展性というのは本当に知られているのでしょうか。バッシングが起きるにしても、他の選択肢を理解した上の議論に発展していけばなあと思ったりします。
【次回予告】"疑わしきを罰する"日本のITモラルと社会システム
今回の記事では話が壮大になりすぎるので辞めておきますが、近いうちに「グレーを許容しない風潮はどこから生まれたのか」という観点に基づいて、IT業界で有名なCoinhive事件などと絡めて話す記事を上げようと思います。興味があればフォローを是非お願いします。
いつもありがとうございます。