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新しいワクワクへ〜柱焼酎仕込〜

柱焼酎仕込のお酒をバシバシ出します!

ついに、ようやくこのお話を記載できる時がやってきました。
僕がやりたかった事がまた一つ実現します!!

それが、『柱焼酎仕込みの清酒製造』です!!
下記に詳細を記載します。

背景

阿部酒造は昔ながらの槽という搾り機を使って酒を搾っています。
酸化はしますが、発酵中の醪にも負担をかけずに搾れるので酸化がいいように作用してまろやかな酒質になると思ってこの搾りを採用しています。
 先代からこの搾りであったこと、酒蔵の数が多い新潟県の中で全量槽で搾る蔵も減ってきていることから、逆張りが大好きな阿部酒造では槽を採用してお酒を搾ります。
研修生が多く、研修生の多くは搾り工程において「槽」を採用することが多く、阿部酒造であればそれが嫌という経験できるのも槽を採用し続けていることの理由の一つです。ですが、槽は醪に負担をかけない分1つ大きなデメリットがあります。それが、

酒粕問題

具体的には酒粕が大量に発生してしまうこと、そしてそれを処分するのが大変であることです。
槽搾りは圧力も最低限しかかけないことから、1回の仕込で出てくる酒粕の量が通常の圧搾機で搾るよりも大量に出てくるんです。

なぜ、大量に発生することがデメリットかと言うと、大量に出てきてしまうと処理に困ってしまうんです。
出てきた酒粕をどうするかと言うと、いくつかパターンは存在します。

酒粕の処理方法

・酒蔵の直売所で直売
・酒粕をスーパーなどで販売
・漬物屋さんに引き取ってもらう
・肥料屋さんに引き取ってもらう
・産業廃棄物として処理する
・肥料に使う
・蒸留機を導入し粕取焼酎を製造する

例えば、直売。酒粕をよく販売してほしいと言うお声をもらうことがあります。ですが、1回の仕込で450kgが年間50回以上続いたとすると小分けてして販売して、と言う時間が全くないんです。と言うより販売するより毎週のように500kg近くの酒粕が出てくるので酒粕で溢れますw
 それならばと、スーパー量販店での販売に関しては、当社の使用する種麹が理由で販売が現状難しいです。
 と言うのも当社の酒粕は糖化酵素が多くでる種麹としてもちょっと高価な麹菌を使っています。その麹菌を使うと、甘さをしっかり出すことができるのですが、一方で、「黒粕」と言って酒粕に時間経過と共に酒粕に黒い斑点が出てきます。これがカビと間違われてしまってクレームにつながってしまうんです。(むしろこの黒粕が出てしまうとスーパーなどで酒粕が売れないから、使う種麹を制限している蔵もあったりします)

なので、引き取ってもらうのが一番なのです。ですが、考えてみてください。槽であろうと新しい圧搾機であろうと、粕は出るんですね。
そしたら、みんな同じこと考えるわけです(笑)
そして、新潟県って酒蔵が多いって聞いたことないですか!?

なので、割と漬物屋さんはもう間に合っているんですよね(笑)
じゃあどうするかと言うと、当社は2つの対応を経験しました。

  1. 産業廃棄物として処理
    →一番悲しいです。お金払って捨てるので。。農家さんの顔が見えた直接取引が増えれば増えるほど色々考えさせられました。

  2. 肥料屋さんへ引き取り
    →1−2年前から肥料屋さんが買い取ってくれるようになりました。これでも大分ありがたかったです。

この2つを経験しながら特に1の期間がとにかく長かったこと、全量槽で搾っていることからもずっと酒粕を活かせないか考えていたんです。


引き取り前の酒粕。これがパレットでどんどん出てくるんです。

そこで取り組んだのは
契約農家さんにそのまま米づくりの肥料に使ってもらうこと

酒粕肥料化ものがたり

2017年くらいでしょうか。蔵の農業をやっている同世代の蔵などから酒粕を液肥にする方法や肥料にする方法を聞いて回っていました。
それを農家さんに共有し、農家さんもやる気満々で引き取っていただき、
「まずもみがらと発酵させて肥料を作ろうと思います!!」
と話が進み、うぉー!!これで酒粕が田んぼに撒かれて米作れたら最高だなー!!って思っていたんです。

後日連絡が来ました。
「阿部さん、発酵中の肥料腐敗気味なので、失敗です。。処分しますね」
と。

まじか、、、となっていた翌日。

農家さんから電話があって「1日の間で、イノシシの餌になって綺麗さっぱり無くなりましたwww」と。
流石にこれは笑いました。
なぜなら捨てる手間は省けるわ、酒粕はなくなるわで、これ循環じゃんってwww思わぬ所で循環してました。(酒粕から肥料に変えることに関して当時の僕達の知識がなかったのでうまくいかなかっただけで、多分これちゃんとできているところあるんですよね。頑張ってそのレベルに辿り着けるよう頑張ります!!)

2017くらいの製造数量であればもちろん問題ないのですが、どんどん製造数量が増えれば増えるほど酒粕の量は増えていくのです。

上記で解決すればそれに越したことはなかったのですが、ウルトラCとして残していた方法がありました。今回阿部酒造はそれに挑戦します!!

阿部酒造の取った課題解決方法

それは今回の粕取焼酎を製造する方法です。

そもそも
・全量槽の搾りであること
・新潟県はアル添吟醸本醸造でマーケットを取ってきた

という背景から新潟県の蔵としてアル添の技術は新しい伝え方ができないかなとずっと考えていたんです。そしてたどり着いたのが粕取焼酎使用した製法

「柱焼酎仕込み」

これは、酒粕を蒸留して粕取焼酎を自社で製造し、それをもう一度醪に加えて日本酒を造る仕込み方法です。これめちゃめちゃ面白いじゃんと。蒸留と醸造酒のフュージョンですよ!!
酒粕で粕取焼酎(蒸留酒)を製造して、発酵中の醪に加えても「日本酒」の範疇なんです。
これめっちゃ面白くないですか!?
世界中探しても、醸造酒に蒸留酒混ぜても混ぜなくても同じ区分のアルコールってそんな多くないはず!しかも酒粕を余すことなく使える超アップサイクル商品!!

さらに、この製法ハードルがめっちゃ高いんですw

酒造法を当時色々みていたのですが、他社に酒粕を預けて粕取焼酎を造ってもらい、粕取焼酎を仕入れて醪に加えて酒を造った場合は「日本酒」にはならないですwww
自社製造のみ使ってよし!!!(ハードル高い!!)

つまり、「粕取焼酎」造って発酵中の醪に加えても「日本酒」って名乗っていいぞ。ただし、自社製造の粕取焼酎に限るからな!!ってことです。
この時点でめちゃ面白いww
そして何より、この粕取焼酎の設備が鬼高いwww
頑張ったな阿部酒造。普通この設備投資するなら、もっと他の設備に投じるんですよ。タンクだったり、熱殺菌の設備だったり。もう阿部酒造においても同じで、他にも投じなければいけない設備はたくさんあるわけです。

でも

そこに投じないのが阿部酒造。
だって自社で蒸留酒(焼酎)造って製造中の「日本酒」の醪の中に突っ込んでも「日本酒」なんですよwwwも!?いやめちゃめちゃ面白い。面白い方に優先的に投資しますw
しかも、こんなニッチな領域誰も広げてないw

そもそも粕取焼酎を加えた柱焼酎仕込の焼酎の使い方はほぼほぼ「アル添」と同じように使っているケースが多いはずです。(僕の調べた限り)
それであれば、醸造アルコールの方がすっきりして酒粕の風味もつくし、酒粕を蒸留するなんてただただ手間なわけです。

粕取焼酎を用いた「柱焼酎仕込」のお酒は特定名称が名乗れない

さらに、柱焼酎仕込みのお酒は特定名称が名乗れないんです。
いくら45%の精米歩合でも柱焼酎を加えたらあら不思議。規格は普通酒規格になります。なので、柱焼酎仕込のお酒は「大吟醸規格」のような表現をされているのも見ます。

特定名称にとらわれない酒造りをやっていた甲斐がありました。
もう普通酒規格だからとか、いっぱい磨いても大吟醸と名乗れない、としても

「全く気にならないww」

粕取焼酎万歳!!

何より
・粕取焼酎でアルコールを飛ばした酒粕は田んぼに撒ける→最高
・粕を処分することなく新しいプロダクトを誕生させることができる→最高
・粕取焼酎単体としても販売することができる→最高
・粕取焼酎の用途が幅広い→最高

最高なことしかないw

しかも阿部酒造として、しっかりこの「柱焼酎」のプロダクトを伝えていけば、これをきっかけにアルコール添加のイメージも払拭できるかもしれない!!新潟県のアル添酒もさらに注目を浴びるかもしれない!!

すでにこれを記載している時は「柱焼酎仕込み」をすでに製造しているのですが、これ間違いなく技術!!超難しい!!でもやりがい抜群!!

アル添吟醸本醸造でマーケットを取ってきた新潟県の蔵として結果にコミットします。

この「柱焼酎仕込み」の流れを読んだ方、もうお気づきかと思いますが、
一つの日本酒を製造するのに、蒸留酒(粕取焼酎)製造の工程が入るこのお酒、純米規格より価格高いです。工数も原価も高いので。

ここから阿部酒造は「柱焼酎仕込み」のアップデートと「アル添のイメージ払拭」を開始します。

そしてこの動きはこれからの阿部酒造の初動です。
ここからさらにぶっ飛んで参ります。

ちなみに、柱焼酎仕込のお酒はわかるように何かマークでも作ろうと思います。

お楽しみに。

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