母親があんまり好きじゃないってことを誰にも言えなかった話(中編)

前記事に引き続き、母親を好きになれない要因について書いていく。ちなみにここに書いていることについて自分が実は傷ついていたと気づいたのは高校から大学にかけて。

この「気づけた」ということが私にとってかなり大きなことだったのだが、その話にたどり着く前にもう少しなぜ母を好きになれないのかについて掘り下げていきたい。

本選び、漫画選びに口出しする母

またまた小学五年生頃。私は母に本屋に連れて行ってもらった。その頃にはもう本が好きだったので、私は母と別れて児童書のコーナーにいた。そこで二つの本に興味を惹かれた。池田美代子の『妖界ナビ・ルナ』シリーズと上橋菜穂子の『精霊の守り人』だ。

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当時はまだお小遣い制が導入されておらず、本はお年玉か誕生日・クリスマスなどのプレゼントで手に入れていた。

どちらの本も手に取って吟味していたところで母が声を掛けた。「『精霊の守り人』のほうなら買ってあげるよ」。もちろん買ってもらったのだが、私の心は晴れなかった。なぜ『妖界ナビ・ルナ』はだめで『精霊の守り人』はいいのか。ネガティブな意味を見いだせずにはいられなかった。

当時小学校ではアニメにマイナスなイメージを持つ同級生がだんだんと増えてきていた。特に女子はアニメではなくジャニーズや歌手、俳優などに興味を持つ子が増え、「アニメは子どもが見るもの」「この歳で見ているのはダサい」という感覚が広がっていた。

母がどのような意図で『妖界ナビ・ルナ』をだめといったのかはわからないが、私は母の言葉にこの学校での風潮を当てはめてしまった。「アニメっぽい表紙の本を読むなんて恥ずかしい」「こんなものはもっと小さい子が読むものだ」「みっともない」そんな風に母に思われているのだと思った。

そしてその予想はおそらく正解だった。中学二年生のとき、私は友人に勧められて有川浩の『塩の街』を読んだ。ご存じの方も多いとは思うが、現在日本を代表する作家のひとりである有川浩もライトノベル出身だ。そして角川文庫から発行されている印象を持つ人もいいであろう『塩の街』も最初はライトノベルのレーベルで発行された。

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母も本が好きな人で、私はおもしろい本があると母にも勧めていた。もちろん小中学生と40歳前後の中年女性という歳の差だから私がおもしろかった本を必ずしも母もおもしろいと感じるとは限らなかったが、それでも読んではくれる。そういうひとだった。

今回も今までと同様に勧めたが、母はめずらしく渋った。言葉には出さなかったが「そんなアニメっぽい表紙のものは趣味が合わない」というような顔だった。泣けるから!と強く勧めて読んでもらえたが、この出来事以降私はアニメチックに表紙絵が描かれている本については誰にも読んでいることを言わなくなった。

このあたりの経験を経て私は、ライトノベルを読んでいることを誰にも言えなくなった。中学時代は有川浩作品の他、『少年陰陽師』『彩雲国物語』『デュラララ‼︎』などを読んだが、友達を含めて誰にも言うことはなかった。

(後編へ続く)

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