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すべての始まり。

無事文化祭が終了し、9月も終盤に差し掛かる。

夜は涼しく感じるようになってきた。

10月後半には修学旅行が控えている。みんなその楽しみを控えて勉強に打ち込んでいた。


私の学校は所謂進学校だった。中学受験でみんな入学し、やはりそれなりに皆頭脳レベルが高かった。

私 美嘉はそんな中でも高校生になってからは落ちこぼれ組。
中学生の間に勉強してこなかったツケがここになってかなり辛くなっていた。


「文化祭も終わったし気合い入れなおすために席替えしようか。」

担任の先生がそう言い、私たちは歓声をあげる。


私はいつも通りくじを引く。


最悪だ。前から二番目の左端。もう少し後ろがよかったな。

なんて思いながら席をゾロゾロ移動させていく。

周りを見渡す。

まぁ・・・。前に仲の良い女の子もいるし。問題ないか。
そう思い右側を見た。


「・・・よろしくー。」


右には男の子が座った。私もとっさに挨拶だけした。


・・・、うわ。私この人苦手なんだよな・・・。


その男の子とはいままでほとんど話したこともなければ、怖いイメージさえあった。

二年前くらいに授業で一回助けてもらったことがあったけど、その時もなんとなく睨まれているような感覚があった。

仲良くない人には少し口調がきついようなイメージさえあった。


仲良くなれるか不安があったが、その人が頭が良いということも知っていたので、もし何かあったら助けてもらおう・・・、という思いだけ心にとめておいた。


その日は特になにも起きるわけでもなく経過していった。


9月30日

その日よくわからない感情が私に降り注いできた。

授業中隣の男の子が私に声をかけてきた。

「ごめん、教科書忘れた。見してくれない?」

その要望に快諾し、机をひっつけて一緒の教科書を眺める。

この距離感がそのときすごく近く感じたのだ。

いつもより近くに感じる声、表情もすごく詳細に見える。

結構きれいな顔立ちだよな・・・。とチラチラみていると

「・・・・zzzz」

彼は授業中だが居眠りを始めた。しかも私が教科書を見せてあげているというのに。

もちろん寝顔もかなり間近で見えるわけで。

何かわかりませんが、それが無性に可愛いく感じたのだ。


いつもはクールな感じで、特に仲良くない子に対しては結構鋭い話し方をするような人が

私の目の前で子犬のように眠っているのだ。


・・・・もう私は授業どころではありません。

「・・・、あ寝てた。教科書ありがとー。」

授業が終了し休憩時間には普通の男の子に戻る。


その後の授業でもうたた寝し、先生に名指しされる。

「・・・・あーそれは○△ですね。」

・・・回答できている・・・。こいつ天才だ。あなた今まで寝てたじゃない。


驚いている私をみて笑っている彼。

「俺すごいやろ?」

とでも言っている表情。

真剣に授業を聞いてても理解できていない私。もう内心いろんな意味で笑っていた。

またほかの授業中には有線のイヤホンを袖に通して音楽を聴きだす。

なんなんだこの人。不真面目すぎないか。


でも知ってる、この人は成績上位の男の子。
隠れて努力はしているのだろう。


一日でこんなにも彼の不真面目さ、可愛さ、天才さを目の当たりにし、

なんだかこの人面白いな、という感情になった。



その日の夕方学校の帰り道にて彼のことを考えていると、彼から連絡が来たのである。

手が震える。

お互い連絡先は知らず、クラスのグループラインから登録してわざわざ私にラインを送ってきた様子。


「ごめん、英語のプリントの答え写メできる?」


・・・私もしかして良いように扱われているのか、?

でもそれ以上に彼からの連絡がうれしかった。
少しでも話しやすい対象になれてよかったと。

写真を送り、そのあとお互いについて話していた。

やはり彼は陰でかなり努力をしていた。

学校の人と会わないようにわざわざ遠い塾まで出向き、毎日かなりハイレベルな勉強をしていた。

しかもちゃんと部活をしてそのあと1時間ほど電車に乗り、23時くらいまで勉強する日々だった様子。

しかも彼が目指していたのは医学部。


もう私と比べものにならないくらい頭いいじゃないか・・・。


と感じていたのもつかの間。

そのまま話は弾み、お互いの恋愛観の話へ。

17歳である。所詮恋愛経験も知れているだろう。と恋愛経験豊富な私は鼻を高くしていた。

しかしほぼ同じレベルの経験はしており、お互い驚いていた。


そんなラインをその日を境にするようになりお互い徐々に打ち解けていったのである。


私の青春時代。





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