モノづくり産業のポテンシャルを解放したいからものづくり白書を読んでみた
GWいかがお過ごしでしょうか?私はふと思い立ちました。
「『モノづくり産業のポテンシャルを解放する』をミッションに掲げているキャディ社員である私がものつくり白書*を読んでいなくて良いのだろうか、いや良くない!」
思い立ったが吉日。
早速読んでみました。まとめてみました。要約メモとしてご査収ください。それではどうぞ!!!
*経済産業省・厚生労働省・文部科学省の3省で共同執筆された「ものづくり基盤技術振興基本法」に基づく法定白書
**「2020年版ものづくり白書」令和2年5月発表
***今年版もそろそろですかね、また読みます
・概要版
https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2020/honbun_pdf/pdf/gaiyo.pdf
・全体版
https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2020/honbun_pdf/pdf/all.pdf
総論
・不確実性が高まる中で製造業の企業変革力(ダイナミック・ケイパビリティ)を高める必要があり、その際デジタル化が有効。
・デジタル化により製造業の設計力を強化し、企業変革力を高めて不確実性に対処するための方向性を示す
1-1. 業界動向
■世界の不確実性が高まり常態化している
└背景:米中貿易摩擦や新型コロナ
└影響:80年代半ば以降形成されてきたグローバル・サプライチェーン寸断のリスク浮上
└変化:効率性だけでなく、経済安保の観点からも柔軟性を備えたサプライチェーンの再構築が必要に。
■ではいかに不確実性を克服するか
・不確実性の高い世界での環境適応には、組織内外の経営資源を再結合/再構成する企業変革力が競争力の源泉だ。
・企業変革力には3つの能力が必要
└①脅威・機会の感知
└②機会を捕捉して資源を再構成/再結合し、競争優位を獲得
└③競争優位性を持続可能なものにするために組織全体を変容
・これらはデジタル化で強化可能である。
└①データ収集/連携
└②AIによる予測/予知、3D設計やシミュレーションによる製品開発の高速化
└③変種変量・柔軟な工程変更
*番号は上記企業変革力の各構成要素に対応
1-2. 日本の製造業のDXにおける課題
①デジタル化やデータ活用は製造工程についてもマーケティング連携についても十分進んでない(対象企業の50%でデータ収集出来ている、10-30%でデータ活用出来ている状態)
②変化に柔軟な企業のIT投資はビジネスモデルの変革に向かっている一方でそうでない企業は平時の効率性/生産性を重視し旧来の基幹システムの更新や保守が主目的化している
1-3. DX推進のためになぜ設計力の強化が必要なのか
・デジタル化の進展に伴い競争力の源泉はエンジニアリングチェーンの上流にシフト
・エンジニアリングチェーンの上流を厚くすることで設計力を強化し、設計から生産までのリードタイムを短縮。こうしたフロントローディングにより企業変革力を強化できる
1-4. どのように設計力を強化するのか/障壁はなにか
・データの活用や設計のデジタル化(3Dデータでの背系による設計-製造-サービスの連携)が重要
・しかし3D設計は普及しておらず、企業間や部門間でのデータ受け渡しも図面を中心に実施
・理由は下記
└主な設計手法が依然2Dであること
└調達部門が見積のために図面を必要とすること
└発注内容と現物を照合する現品表を兼ねていること
2 ものづくり産業を支える人材の雇用と労働の現状
■ものつくり産業の全体観
・携わる人/事業所が減少
└国内製造業就業者数:02年1202万人→19年1063万人と11.6%減
└製造業に関する事業所数も20年間で約半数に減
・依然として製造業は日本の屋台骨
└名目GDPの産業別構成比において製造業は20年で徐々に減少しているが依然として日本のGDPの2割を占める
└非製造業より名目労働生産性の水準は高く高付加価値化が進展している
■ものつくり企業の経営課題
・製造業の経営課題は企業規模問わず「人材育成/能力開発」が最大
└大企業:価格競争の激化>人手不足>人材育成/能力開発が進まない
└中小企業:人材育成/能力開発が進まない>人手不足>原材料費や経費の増大
・事業環境/市場環境の状況認識は厳しさを増している
└顧客ニーズへの対応>製品の品質をめぐる競争激化>原材料コストやエネルギーコストの増大
・ものつくり現場では旧来通りの熟練技能+デジタル技術を導入/活用していく能力の両輪が必要
■ものつくり企業のデジタル化状況
・ものつくり工程/活動でデジタル技術を活用している企業は半数
└先導者は経営トップ
└デジタル技術の活用を担う人材確保の方法は「自社人材のOJTでの育成」>「自社人材のOFF-JTでの育成」>「専門性人材の中途採用」>「専門性人材の新卒採用」
・デジタル技術を活用出来ている企業>そうでない企業となっている項目は下記(因果なり、相関なりある可能性高い)
└労働生産性の向上
└人材定着状況の向上
└作業の標準化による業務効率化の進捗
└OFF-JTや自己啓発支援など職場を離れた訓練も進めている
└当面の仕事に必要な能力だけでなく、その能力をもう一段向上させるような能力開発の実施
└改善提案の奨励・実力/能力重視の昇進/昇格が出来る仕組み
3. ものづくりの基盤を支える教育
・Society5.0では「多様性を内包した持続可能な社会」の在り方に対応し、AIを活用しつつ新しい社会をデザインし、新しい価値を生み出せる人材が求められる
└数理・データサイエンス・AIに関する知識と技能
└人文社会芸術系の教養
└問題発見・解決学習の体験を通じた創造性の涵養
→教育変革が必要
└従来の方法の改善
└新たな手法の導入・強化
└実社会の課題解決的な学習を教科横断的に実施
思ったこと雑記
・「効率性だけでなく、経済安保の観点からも柔軟性を備えたサプライチェーンの再構築が必要」になってきている市場環境下でキャディはダイレクトにお力になれます。キャディはサプライチェーンの集約と分散の両立を実現する少量多品種を主としたプラットフォームなので。
・現状-課題-施策は記載あるが、課題と施策の間にある「なぜそれが課題として残ってしまっているのか」というボトルネックに対して言及するようなコメントが少ない。。。白書という性質上書いてないのか、そうでないのか(概要版を読んで全体版はさらっとしか読んでないので書いてあったらごめんなさい)。この辺りは現場で個に迫らないと見えてこないもの。今後自分で追究していきたいところ。
・改めてキャディはめちゃくちゃど真ん中で製造業DXを推進できます!!!まだ公開してないものもあるのでここでの言及は避けますが、期待してください!!!聞きたい方はご連絡ください!!!お話します(笑)そしてできれば一緒にやりませんか?
・「実社会の課題解決的な学習を教科横断的に実施」。これは日本でも昨今問題解決型学習(PBL)として流行してますね。文科省も「アクティブラーニング」の教育方法として注目してます。
私は3年前フィンランドの幼稚園/小中校/専門学校の教育現場訪問しましたが、まさにPBLが実践されてました。例えば生徒が自由に問を設定して、調べてプレゼンする授業。一人で黙々とやってもいいし、チームでやってもいい。PCを使っても外に行っても模造紙を使ってもなんでもOK。目的に合った手段を選択しろとまさにPBLでした。
私が目にした生徒は「この森にこのフクロウがなぜ多いのか?」という問いを立てていて。その土地の歴史、地理、地学を元に考察していき、データも使いながら可視化、論理を積み上げていく様子が印象的でした。まあ教育現場を取り巻く環境が全然違うのでそのまま持ち込めるものではないと思いますし、日本の先生方が多忙を極める中奮闘されているのも知っているので今が悪いという気は毛頭ありませんが、非常に興味深く、学びも多かったです。教育に興味がある方は個人的にお話しましょう!!
Appendix:おすすめ本
■フロントローディングについてより知るなら
■生産工程の再構築をするなら
■ものつくり白書の目次
第1章 我が国ものづくり産業が直面する課題と展望(経済産業省)
<第1節> 我が国製造業の足下の状況
①新型コロナウイルス感染症の発生と業績動向
②我が国の経常収支
③設備投資動向
<第2節>不確実性の高まる世界の現状と競争力強化
2-1. 世界における不確実性の高まり
2-2. 企業変革力(ダイナミック・ケイパビリティ)の強化
<第3節>製造業の企業変革力を強化するデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進
3-1. 日本の製造業のデジタルトランスフォーメーションにおける課題
3-2. 設計力強化戦略
3-3. 製造現場における5G等の無線技術の活用
3-4. 製造業のデジタル・トランスフォーメーションに求められる人材
第2章 ものづくり人材の確保と育成(厚生労働省)
<第1節> デジタル技術の進展とものづくり人材育成の方向性
1-1. ものづくり労働者の雇用・労働の現状
1-2. ものづくり現場を取り巻く環境変化とものづくり人材の確保
1-3. ものづくり現場におけるデジタル技術の活用と人材育成
1-4. デジタル技術の進展に対応するものづくり企業の取組
1-5. デジタル技術を活用する企業における人材育成
<第2節>ものづくり産業における人材育成の取組について
2-1. より効果的なものづくり訓練に向けて
2-2. 中小企業等の労働生産性の向上に向けて
2-3. 企業内の人材育成などによる職業能力開発の推進
2-4. 若者のものづくり離れへの対応
2-5. 社会的に通用する能力評価制度の構築
2-6. キャリア形成支援
第3章 ものづくりの基盤を支える教育・研究開発(文部科学省)
<第1節>不確実性の高まる社会の変化に対応することのできる人材の育成
AI時代を担う人材育成基盤の構築
<第2節>ものづくり人材を育む教育・文化芸術基盤の充実
2-1. 各学校段階における特色ある取組
2-2. 人生100年時代の到来に向けた社会人の学び直し及びスポーツの推進
2-3. ものづくりにおける女性の活躍促進
2-4. 文化芸術資源から生み出される新たな価値と継承
<第3節>Society 5.0 を実現するための研究開発の推進
3-1. ものづくりに関する基盤技術の研究開発
3-2. 産学官連携を活用した研究開発の推進