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そこのあなた。データアーティストって知ってますか?~CADDiの裏側を支えるコストアルゴリズムの仕事~

AI, IoT, DXが巷で話題になって早幾年か、データ分析を専門性とする人が益々重宝されてます。データサイエンティスト、データアナリストなる職種もでき、市民権を確立しつつあります。データ大好き人間の私としては嬉しい限りです。

データ分析の仕事は色々あるけれど

私はCADDiという金属加工部品の受発注プラットフォームを運営する会社でPSO; Platform Strategy Officeをリードしています。
このチームの最大の特徴はCADDiの競争力の源泉の1つであるコストアルゴリズムを担うチームであること。簡単に言うとCADDiの製品の売値と買値を算出するプロダクト(下記図だと「自動製造原価計算・見積提示」に該当)を作っています。さらに言うとコストアルゴリズム上確からしい売値・買値を実現するためにお客様・加工会社様に対してどのような価値提供すればよいのか考えていく事業企画的な役割も担っています。

コストアルゴリズムってなに?

CADDiはファブレスメーカーであり、自社でお客様から依頼された製品を製造している訳ではありません。そのため協力加工会社様に「○○という製品を○○円でお願いできますか?」と依頼し製造していただく必要があります。「○○という製品を○○円で」の妥当性を支える存在がコストアルゴリズムです。

コストアルゴリズムってどんな仕事するの?

「原価計算/コストアルゴリズム」と言われると決まったコストを積み上げて計算していく、ある程度型化された業務を想像されるかもしれません。
しかし実態は180°異なります。

CADDiのコストアルゴリズムは「加工部品の特徴量をインプットとし、加工工程に分解して原価を計算し、売値と買値をアウトプットする計算機」と定義することができます。しかしそのアルゴリズムの精度には様々な要素が影響を与え、その進化には多大なる不確実性が付きものです。

どういうことでしょう?前提としてCADDiが生きている少量多品種の加工部品の世界を説明します。この世界には「標準価格」「正しい加工方法」なるものは存在しません。同じ製品を製作する場合でも加工会社様毎にコストの考え方、見積の方法、加工の方法も違えば、結果として表出する品質も、価格も変わります。なんなら同じ加工会社様であっても依頼のタイミングや担当者レベルで変わります。なぜなら多くの会社で「実際に自身が加工するならこのくらいかかりそう」という感覚を頼りに原価計算されることも多いですし、そもそもCADDiにご回答いただく価格には営業的な観点も多分に混入するためです(もちろん会社によって見積の方法や粒度はまちまちではありますが)。

またお客様からいただく図面を元にCADDiで見積をしますが、図面に書いてあるものの実は不要な仕様があったり、同じことを指しているのに表現方法が違ったりと、それらを正確に考慮できるか否かで価格も変わります。
それだけ「ある金属加工部品の価格」というものは様々なパラメータで構成される不確定な存在なのです。

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そんなアウトプットとなる価格もコストドライバーとなるインプットも変動する中で、何をキャディとして正解のアウトプットとすべきか(加工会社様毎の得意領域の特定や選定のロジックの策定なども含まれます)、インプットとすべきか、計算方法はどのようにすべきか、モノづくりの実態を鑑みて策定していくのがPSOが担うコストアルゴリズムの仕事の1つです。

ここまででコストアルゴリズムを見積や加工実態に近づけて作成/精緻化していく仕事についてご説明しました。

一方でPSOの仕事はここに留まりません。コストアルゴリズムを正解とし、その価格を実現するためにどのような見積や加工方法を取ればよいのか、加工会社様と一緒に考えていくという仕事もPSOの大事な仕事です。

先述の通り加工会社様のお見積や加工方法は会社によってまちまちですし、再現性が必ずしも高い訳ではありません。その中でCADDiのこれまでの事業運営の中で培ったデータや知見を元に膝と膝を突き合わせて、加工会社様のお見積方法や加工方法はもちろんのこと経営方針、社内OPSの状況、システム活用状況等々伺いながら、一緒に作っていく製品の選定や価格の考え方に関して合意していきます。

課題解決のために必要な要素が仮にOPS改善や工場での生産改善であればそちらにも染み出しますし、加工会社様内でご使用になるツールを作成しお渡ししたこともあります。このように手段に囚われずに課題に向き合って一緒に解決していく中で、加工会社様と関係が深まり直接やり取りをさせていただける状態になれているのはコストアルゴリズムを司るある意味”中の人間”の立場からすると非常にうれしくやりがいを感じる瞬間です。

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この仕事を何と呼ぶ?

こうしたビジネおよびデータの状況下でPSOはデータ分析を通じてどのような価値を出せるでしょうか?

そもそもビジネスサイドのデータ分析は一般的にアカデミックな環境と異なり統制条件の設定は難しいものです。ただCADDiが扱うデータはその比じゃないほど統制が難しい。データ量こそ多いが、パラメータが非常に多く、かつ歯抜けな情報になりやすく、ノイズも多い。(ワンパンチ!)

またデータ分析のフィットが高いデータは所謂”縦に長いデータ”ですが、CADDiの保有するデータはどちらかと言うと"横に長いデータ"です。(ダブルパンチ!!)

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加えてPSOが扱う価格周りのデータ分析は先述の通り、OPSとテクノロジーによってデジタル世界で表現可能な多数のパラメータとデジタル世界に表出しにくい多数のパラメータが複雑に絡みあって成り立つ事象を読み解くために実施します。(トリプルパンチ!!!)

そのためサイエンティフィックな分析に傾倒しすぎると現実を見誤る可能性が大いにあります。「デジタル世界に表出しにくい多数のパラメータ」に対する想像力を巡らせ、仮説を構築し、時にアーティスティックに(ただし説明可能)示唆を生み出します。

PSOがどのようなデータ分析を行なうかは下記の記事に詳細書いているのでご参照ください。

このようなデータ分析を行っているPSOはデータサイエンティストでもなければデータアナリストでもなさそうだと感じておりました。

サイエンスとはカオスな個別の事象を統制された世界に投影して真理を見つけていく営みだと思います。ただCADDiのPSOにおけるデータ分析はちょっと違います。

仮説構築のために社内でもあらゆる部署と連携し、加工会社様にも足を運び真実は何か解像度を高める、そして分析を回しさらに仮説の精度を高める。仮説が正しいかは統計的に有意かどうか言える類のデータではないので、最後は意思決定に依る部分が存在します。”意思決定”にあたるコストアルゴリズムの実装およびその他施策実行をPSO自身が担っているということが特異性だと感じます。”アナリスト”で終わらずに実行者でもあるのです。

事業会社の醍醐味は自身の仮説を自身で覚悟決めて検証できることにあると思います。ロジカルな分析や提案に閉じず、不確実かつ混沌とした世界の中に真理を描くデータアーティストにあなたもなってみませんか?

お待ちしております。


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最後までお読みいただきありがとうございました!CADDiやデータ分析に関して少しでも興味を持っていただけたら幸いです!

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よりリアルなところはオンラインミートアップでお話しできればと思いますのでぜひご参加ください!

また、こんなnoteを書いておきながら、実はCADDiがこれまで受発注をお客様・加工会社様と一緒に行っていく中でようやくデータ分析を専門とする方々が暴れられるようなデータ基盤が整ってきました。

機械学習はじめデータサイエンスの専門性をお持ちの方もお待ちしております!!!!






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