研修概要「友だちづきあいに悩む子どもたちー社会学から学ぶ」早稲田大学 石田 光規 2024.6.16

「友だち」ってなんだろう

よくイメージされる「友だち」の定義

・気を使わなくていい関係
・中身を隠さなくてよい関係
・合理的ではない関係
→現代において、本当にそんな関係の相手が存在するのか!?

「友だち」の再定義

・互いが「友だち」と認識することで成り立つ関係
 →「友だちだ」という気持ちで成り立つ関係

「友だち」の特徴

1.序列を意識させられる
 →その他の関係(仕事など)より、「友だち」のほうがより良いイメージ
  (本音を出せる・いざというとき助けてくれる)
2.本質的にあいまい
 →その他の関係性(上司・部下、近所)は感覚で変わることがないが、
  「友だち」は感覚に左右される 「私たちは友だちのか?」という苦悩

「現代の友だち」と「昔の友だち」

人間関係の大きな変化

昔)移動が少なく、同じ人と付き合う
 →今)移動が多く、付き合う人も流動的
昔)集団的で一人になりにくい
 →今)個人中心で一人になりやすい
昔)友だちがいなくても孤立しない
 →今)友達がいないと孤立しがち

「友だち」の変わらないところ

1.「よい」関係
2.「あいまい」なもの
3.「不安定」なもの

友だちの在り方の変化

かつて(昔)の友だち
結果としての友だち
・同じ場で何年も過ごした人が
・対立・共同・葛藤を経て
・徐々に友だちになっていく
→本音をぶつけ合いながら強くなっていくつながり(少年漫画的友情)

今の友だち
形から入る友だち
・その場で出会った人が
・「友だち」っぽいコミュニケーションを続けることで
維持されていくつながり
→「友だちっぽさ」がなくなると壊れてしまう弱いつながり

形から入る友だち

互いに「友だち」として「選びあう」関係

・一人は寂しいから「友だち」として選んでもらいたい
・でも、選ばれようとすればするほど本音が出せない
・「友だち」が本当の自分でいられる場所にはならない

助けてと言えない・弱みを見せられない

・「選びあう関係」+「努力主義社会の基本」
 →「助けて」と言えなくなる
・助けようとする人も「個人の尊重」により、自ら声掛けしづらい
 (「あまり入り込むのも悪いな」「それぞれ事情もあるし……」)

序列化・格差化する関係性

「選びあう関係」により「選んでもらう要素」をたくさん持つほどよい
→魅力的な人ほど人を集める(スクールカースト的順番が発生)
魅力のない人は孤立する+「助けて」といいづらい状況

友人関係の悪い流れが生まれる

友人とは接したい

でも、友だちの前では気を使うし、本音は出せない
人気ものになりたいから無理をする

結果として一人になると落ち着く

でも一人だと寂しくなる

友人とは接したい(以下ループ)

スマホが変えたコミュニケーション

弱くなった場の力

オンラインの急速な浸透により
「場」へ出向いて人とつながる→「会いたい人」を検索してつながる
に変化した

これにより
1.わざわざ「場」に出向かなくてもよくなった
2.つながりがより選別的になった
3.誰かと会うために理由づけが必要になった(コロナで加速)
4.そもそも人と結びつかなくてもよい社会になった

→魅力のない人が選んでもらうことが難しい状態

スマホによって友だちとそうでない人の境界線が見える化

1.常時接続の時代
友だちといつでもどこでもつながれる、つながってしまう

2.不透明だったコミュニケーションが見えるように
・記録
 いつ、だれが連絡したか・連絡を返してくれたか
・「受け入れ」の度合い
 誰が「いいね」「フォロー」してくれたか
・グループとあそび
 誰がグループに入っているか、誰と誰がでかけたか

→自分がどのくらい人気があるのか、受け入れられているのか
 自分を大事にしてくれているのは誰なのかが分かる
グレーゾーンが撤廃され、友達とそうでない人の境界が見えるように

スマホによる見える化の弊害

1.スマホが手放せない
 「誰が連絡くれたのか」「自分に返信してくれたのか」
 「相手に返信、"いいね"しなきゃ」
2.ストレスの拡大
 「仲間外れになっていないか」「この表現は大丈夫か(炎上の恐怖)」

疲れる(から一人が楽だ)けど(さみしいのは嫌だから)やめられない

これからの関係性

社会ができること

・ゆるやかな居場所をつくる
 →何者にならなくてもいられる場所
・子どもが「放っておかれる」場所をつくる
 →「管理」から解き放たれる場の必要性
・電子機器との距離感を再考する
 →物理的、身体を使った存在は大切

居場所、つながりをシステム化、意図的に準備しなければならない

「居場所」を「つくる」ということ

1.「居場所」と「つくる」の矛盾
 「居場所」とは個々人が事後的に判断するもの
 つまり、あらかじめ設定することは難しい
 →無目的な場所を目的をもって作らないといけない

2.営利と福祉、持続性の問題
 その場に行こうと思ったときに近くにあり、空いている必要がある
 持続するための資金をどう確保する
 →学童保育が居場所としてのテンプレートとなる可能性もあるかも

居場所を運営する

居場所づくりのポイント
◯r物理的アクセス
・近くにある
・日常の行動と関連させる(食事・散髪など)
◯心理的アクセス
・気を使わずにいられる(受容と共感の場)
◯複数の財源を準備する

友だちについて改めて考えること

1.友だちというものに囚われすぎない
 →意外といなくてもなんとかなる
 →かつては友だちがいないのは特別なことでも寂しいことではなかった
2.「ここならいられる」というをもつ
 →学校、クラス以外でも大丈夫
3.自らのマイナスを気にしすぎない
 →マイナスの面を見せても大丈夫
 →先生も親も同じように悩んでいる
 →マイナスな自分も相手も受け入れる

ゆるやかなつながりのススメ

強いつながりが良いわけではない
・強いつながりが苦手ない人もいる
・強いつながりだからこそ、失いたくない→弱みを見せれない、頼れない

ゆるやかなつながりをつくる
・なにかがあったときに「オン」になるようなつながりの種をまいておく
・茶飲み友だちのようなつながりを目指す

学童保育では・・・・・・

 ここからは研修をうけた私の感想です
 「近年では場の保つ力が弱まった」とお話されていましたが、学童保育こそ人が集まる場、いわば「無目的に人が集まる場」になりうるのではないでしょうか。この特性を活かせば子どもたちのみならず、保護者や地域の方を巻き込んでの居場所を学童保育でマネジメントすることができるかもしれない
 そのために、お話の中でもあった、居場所づくりのポイントの中の「気を使わずにいられる」という点と学童保育の強みである「あそびを通した。心地の良い関係性、遊び心の交換(戯れ)」を意識して、使っていけたらよいのかなと思いました
 また、「強いつながりを求めない人もいる」という部分で、最近良く話題になる「Z世代」の話を連想しました。自分たちの価値観の押し付けにならず、お互いが心地よい関係でいられるよう、常に自戒しないといけないですね


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