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英語のフォニックス導入実践 〜読める、わかる、考えるとは〜

随分前にどんぐり倶楽部の糸山泰造さんの講習で「リンゴとリンコ」のお話を聞く機会があり、大変な衝撃を受けました。それ以来、この「リンゴとリンコ」のお話を自分なりにアレンジをして、中学1年生フォニックスの授業開きでやってます。

アルファベットの言葉を「読める」「わかる」「考える」について、体感するのが目的です。

読めて、わかる

ここに一つの言葉があります。読めますか?
では一緒に、声に出して読んでみましょう、さんはい!

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あれ?バラバラですね。なぜ読めないのでしょうか?
(生徒から自由に意見を聞く。どんな意見も否定しない。)
なるほど、この文字を知らない、発音がわからないからですか。

読むためにはどうしたらいいでしょう
(生徒から自由に意見を聞く。どんな意見も否定しない。)
なるほど、この文字の音を知れば、読めるようになります。では、この皆さんがおそらくよく知っている文字にしたら読めますか?

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では、声に出して読んでみましょう。さんはい、「バナナ」!
そうです。バナナです。今度は音にして言えました。文字を音にする、これが「読める」ということです。

ではバナナってなんですか?何色をしていますか?大きさは?形は?バナナって走りますか?皆さんはバナナは好きですか?

質問には全部答えられたと思います。頭の中には黄色くて、細長くて、皮を剥くと白い身が出て来る食べ物が浮かんできた。そうです、これがバナナです。

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今、皆さんがしたことは、文字を読んで音にしたら頭の中にイメージが浮かぶ。頭の中に浮かんだイメージは、もしかしたら房の状態かもしれませんし、皮がむかれた状態かもしれません。でも概念が同じなので、思い浮かべたイメージは違っても、誰かと話をしていて困ることはありません。

これが「読めて」「わかる」ということです。

読めるけど、わからない

では次に、「読める」けど「わからない」体験です。
この言葉は読めますか?

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では、声に出して読んでみましょう。さんはい、「パナナ」!
そうです。パナナです。

ではパナナってなんですか?何色をしていますか?大きさは?形は?パナナって走りますか?皆さんはパナナが好きですか?

今度はどうでしょうか。質問には答えられましたか?皆さんの頭の中にはどんなイメージが浮かんだでしょうか。

先程のバナナとは違い、人によってイメージするものが違う。これだ!というイメージがはっきり思い浮かばない。

隣の人と話をしてみましょう。お互いのイメージが違うから、話が通じなくて困ってしまいます。この状態で次の質問に答えてください。

「pananaはbananaをどのように食べますか?」

答えられますか?言葉を読めるし発音できる。でもどうして答えられないのでしょうか
(生徒から自由に意見を聞く。どんな意見も否定しない。)
それはpananaのイメージが浮かばないからです。

これが「読める」けど「わからない」ということです。その言葉を読めるからわかっている、とは限らない。この状態で「では、この問題を考えてみましょう」と言われても、考えようがない。

読めて、わかって、そして考える

さて、どうしたらいいですか?
(生徒から自由に意見を聞く。どんな意見も否定しない。)

なるほど、意味を調べればいい。その通りですね。このpananaの概念を理解すればいいということです。では説明します(pananaって本当にいるんです!)。

pananaとは、インドネシアに住む体長40センチくらいのトカゲです。茶色い体に縞模様があり、舌が青いので別名「アオジタトカゲ」と言われています。雑食で昆虫や貝、小型の爬虫類や哺乳類、花や果実を食べます。頭の形が三角で、オスは成長とともにこの頭が肥大化していきます。
実は、この生き物が、日本ではあの幻の生物とされている…「ツチノコ」ではないか、と言われています。

次に、イメージをお見せします。これがpananaです。

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これでもうpananaはわかりました。次から皆さんはpananaという言葉を見たら、イメージが浮かぶと思います。これが「読めて」「わかる」状態です("kadal panana"で検索すると青い舌も見られます)。

では再び、先程の質問を見てみましょう。

「pananaはbananaをどのように食べますか?」

今度は先程と違って頭の中でpananaのイメージがはっきりし、pananaが口を開けたり、バナナを刻んでみたり、色々なイメージの変形が起こっていませんか。これが「読めて」「わかって」「考えられるようになった」状態です。

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皆さんは、英語にしろ、日本語にしろ、この「読めて」「わかって」「考えられるようになった」状態を目指して学習していくわけです。

英語の文字の音(フォニックス)

ところで、先程 bananaを「ビー・エイ・ビー・エイ・エヌ・エイ」とは読みませんでした。なぜですか?
(生徒から自由に意見を聞く。どんな意見も否定しない。)

それは、bという文字には「ビー」という名前の他に、音があることを皆さんはなんとなく知っているからです。名前とは別の音、これを「フォニックス」と言います。

漢字とは違って、英語の言葉は音になって初めて意味を持ちます。b の文字そのものに意味はありません。b は音を導くための記号(コード)です。フォニックスを知っていると、文字の音がわかり、英語の言葉を読めるようになります。

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フォニックスの授業で行うのは、英語の文字から音に、また音から文字にするための練習です。フォニックスを知らないと、最初のスライドのように文字が読めないので、誰かにその単語を読んで音にしてもらわないとイメージを引き出すことができません。

また、英語を聞いても音からメモできませんから、カタカナで書くしかありません。綴りを丸暗記する機会が多くなります。自分のタイミングで英語の学習を進めることが難しくなってしまいます。

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p, a, n の文字の音を知っていれば、pananaという言葉を知らなくても自分の力で読むことができますし、nap, pan, napana, apnaのように文字がどのように入れ替わっても読んで書くことができます。また、誰かが話している英語の中で、その音に気がつけるようになります。

初めて見る英単語の発音を予測できれば、イメージが浮かびやすくなり、単語を覚えやすくなります。聞いた英単語を音の通りにメモできれば、後から辞書を使って意味を調べることができるようになります。そのために英語の文字と音のつながり(ルール)を知る。これがフォニックスの授業です。

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