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トラベルテディ・プロジェクト 〜ぬいぐるみが留学生になって世界へ飛ぶ〜

子どもたちが「なぜ外国語を学ぶのか」実感するためには、外国と繋がることが一番です。「では何をどうすればいいのか」、今回は国際交流活動の一例として、「トラベルテディ・プロジェクト」を詳しくご紹介していこうと思います。

最初の「海外とのプロジェクト」

2008年、最初の海外との協働活動にチャレンジしました。子どもにとっても私にとっても初めてのプロジェクトです。とにかく「私がやってみたかった」というのが本音です。

ちなみに。プロジェクトと言っていますが、当時の私はプロジェクトが何なのかいまいちよくわかっていませんでした。国際交流活動と呼ぶよりも「プロジェクト」と読んだ方がかっこいいじゃない?という程度でした。後にきちんと「プロジェクト学習」について学んでやっと何か知るわけですが、それはまたの機会に。

それまで文通などの交流はありましたが、紙媒体よりも本物の相手の方が実感度が高いと感じていました。海外から実際に子どもたちがきたら、素敵だなぁ。実際に自分たちが海外に行けたら、面白いだろうなぁ。

でも、小学生は一人で留学ってまずハードル高いし、お金もかかるし、相手が来るとしても子どもはお世話が大変だし、全く現実的ではないなぁ。さてどうするかなぁ…

余談ですが…今ならZoomとかありますが、当時は「ビデオ会議」は設備的に大変にハードルが高いものでした。そう考えると技術の進歩はすごいですね。
一方で、このコロナ禍で自由に国外へ出ることが難しくなった今だからこそ、実物交換にこだわりたいのです。「せめてぬいぐるみだけでも世界に飛ばそう!」と、昨年度も今年度も絶賛実施中です(航空会社も頑張ってくれています)。

そう思って何か方法はないか調べていた時に、British Councilを通して英国の先生からコンタクトがありました。何か一緒にやろう!と話し合っているうちに、「ぬいぐるみを交換しない?」とアイデアをいただきました。

自分の小学校の子どもたちと相手(英国)の子どもたちがそれぞれぬいぐるみを用意して「留学生」として送りあい、留学生(ぬいぐるみ)の目を通して外国の留学生活を楽しむこれは面白そうだ!とすぐにプロジェクトの計画に入りました。この時の英国の先生と相談して、私たちの活動は「トラベルテディ・プロジェクト」と呼ぶことにしました。

2008年以来、私の学校では毎年相手を変えて3年生で実施していて、これを「国外との協働活動」のスタートとして1年間かけて取り組んでいます。

プロジェクトの概要

この時の英国の先生がどこからアイデアを見つけてきたのかはわからないのですが、後にこのプロジェクトをサポートしている団体があることを知りました。

*英語サイトですが、DeepLなどの機械翻訳を使えば内容を読めます。

Travel Buddy(ぬいぐるみ留学生)を海外の学校と交換し、自分たちの学校や日常生活を海外へ伝え、相手校の子どもたちの学校や日常生活を知り、世界の様々な国や地域の生活、習慣、文化の多様性を肌で感じます。また外国語(英語)の必要性を実感できるプロジェクトです。

目的: 世界の学校とぬいぐるみ留学生の交換留学を通じて、自分たちの学校、地域、生活、習慣、文化を互いに伝えあい、学ぶ
対象学年: 小学校低学年〜中学生
交流国: 基本的に1プロジェクトは1校と交流
活動期間: 3ヶ月〜6ヶ月(相手校と相談、調整する)
最低限必要なコマ数: 期間中に5コマ〜
英語レベル: 初級から上級者まで
費用: 海外EMS郵便費 (地域/内容による)+購入する場合:ぬいぐるみ、ノート、お土産代

相手の見つけ方

これは国外に直接つながりがある方を頼りに交渉でもよし。国外にある学校へ直接問い合わせてみるもよし。私のようにBritish Councilなど国外の教育系組織に登録しているとそこからコンタクトが来る場合もあります。相手探しは色々なパターンがあると思いますが、最初は国際的な団体を通した方が安心かもしれません。

上のリンクでもご紹介しましたが、このプロジェクトを世界的にサポートしているのがiEARN(アイアーン)という団体です。日本にJEARN(ジェイアーン)という支部があります

。iEARNは学習者のグローバルコミュニティで、1988年に設立された非営利組織(NGO)です。発足時、米国と当時のソ連は冷戦下でした。政治的な対立があったとしてもそれは大人の事情、学生同士での繋がりを模索する動きがあり、iEARNが生まれました。

今では140以上の国や地域が参加し、30000を超える学校や若者組織と提携しています。iEARNのフォーラムは基本的には英語でのやりとりになりますが、JEARNスタッフの方はもちろん日本語が通じますので、様々な相談にものっていただけると思います(ご注意:JEARNへの参加は登録と年間で3000円の会費が必要になります)。

iEARNでは、「テディベア・プロジェクト」で参加したい人が集まるフォーラムが設置されています。フォーラムでやりとりをして、一緒にプロジェクトを行ってくれる先生を見つけます。困った場合はコーディネーターに相談できます。

外国語の目標を達成するための両輪の一つ

なぜこのようなプロジェクトに取り組むのか、その理由を書きます。

私が考える外国語教育の目標は「自立した学習者」を目指すことです。早い段階での「語学の達人」を目指すのではなく、将来にわたって末長く、自ら外国語に接していく人、自分の力で外国語の学習を進めていくことができる人を目指しています。

この目標を実現するためには、「実際に使う経験」と、その「活動を支えるための学習」の2つが必要だと考えています。

英語科の目標

プロジェクト学習や国際交流活動など実際に外国語を使う活動をすると、うまくいかないというモヤモヤした部分が出てきます。子どもが自ら「知りたい」「必要だ」と思った時に、活動を支えるためのスキルの学習は初めて成立します。

スキルは英語の4技能だけではなく、上のような様々な学習スキルも必要です。また、小学生はお互いに助け合えるグループでの協働、発表も経験が必要です。

実際に使う体験を通して子どもたちが「通じた!」「わかった!」という喜びを感じ、面白さと楽しさと大変さを知る。活動中に感じた「わからない」「伝えたい」という気持ち、言語の必要性を実感して学ぶ。再び活動して、再び学ぶ。これが交互に折り重なって進んでいく語学の学びが、私の理想です。

外国語の目標2

次回から、自分の実践を具体的に紹介しながら、なぜ3年生で実施しているのか、今までにどんな国や地域と取り組んだのか、実際の活動の流れなどをまとめていきたいと思います。

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