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翻訳としてのデータ分析#43 BigQueryは、いちDWHではない

最近感じていること

BigQueryを、クラウド型のデータウェアハウスの1つと見なす人もいると思うけど、僕にとっては違う。

BigQueryは、Googleの「世界中の情報を整理し、世界中の人がアクセスできて使えるようにすること」というミッションを、データ活用文脈で実現する上での、最重要拠点に位置づけられていると思う。

そしてBigQueryを採用することは即ち、単にデータウェアハウスを採択するというよりも、Googleが構想する世界への(反強制的)移住権を得ることになると感じている。

Google目線での BigQuery + Looker の戦略的価値を妄想する

5年くらい前、初めてBigQueryに触れたとき、計算速度と安さが抜群だった。それだけですごかった。感動した。

でも最近、違った様相を呈してきている。
ああ、これがGoogleが描いていた世界観なのかな、と思う場面が増えている。

そう思うポイントが3つある。

1つ目は、BigQuery上で使える機能が増え続けていること。
ユーザー定義関数やスケジューラー、BigQuery ML。できることが延々と増えている。ミッションの【使えるようにする】にあたるだろう。

2つ目は、BigQueryに連携できる手段を増やしていること。
既存Googleプロダクトとの連携はもちろん、マーケットプレイス、BigQuery Omni。どんなデータも取り込みやすくなってきた。ミッションの【アクセスできるようにする】にあたるだろう。

そして3つ目は、ミッションの【整理する】にあたる部分。ここはまだそんなに注目されていない気がするけど、僕にとって一番驚異的だ。

まず、DataPortalとGoogle Sheets(+GAS)が、めちゃくちゃ使いやすくなってきた。この2つをBigQueryと連動させるだけで、既存BIツールには十分対抗できる。BI業界のプレイヤーは涙目だと思う。

そしてGoogleが買収したLooker。Lookerはデータモデリングに秀でたBIツールとして知られている。だが、今月のLookerの発表会を聞いて思ったが、それは基礎要素に過ぎない。

Googleは、Lookerのデータモデリング技術を基に、分析テンプレやチャートを共有しあえる環境を整え始めた(Lookerのマーケットプレイス)。そして、ダッシュボードを他ページへ組み込む機能と、ダッシュボードからアクションできる機能の強化を、急速に進めている。

つまり、取得するログ形式がバラバラでも、Looker内で該当するデータ項目さえ指定 or 作成できれば、どこかの天才が用意した分析フレームワークやダッシュボードを転用して、ばら撒くことができる。そんな世界の実現へ向けてGoogleが歩み始めたと、僕は解釈している。

開発者が先人のノウハウを引継ぎ共有しあって、すべての人がイケてるチャートを目にしてアクションできる世界。そんな世界をGoogleは実現しようとしているのではないだろうか。

同時に、そのチャートの裏ではBigQueryのデータがスキャンされて、チャート閲覧者が無意識にGoogleにアクセスしている世界。そんな世界づくりに向けて、Googleは開発リソースを割いているように思える。

Googleは既に、データの利用(BigQueryのスキャン量)に対価が発生するという法を制定している。BigQueryという油田への流通を増やす動きを、データ活用面で加速させているように感じる。

Looker買収は、単にスマートなBIツールをGoogleプロダクト群に加えるための一手ではなかった。

データ活用文脈において、Googleがミッションを実現するためには、データの共通化が欠かせない。ただ、取得データを共通化するのはハードルが高すぎる。だから、データモデリングで何とかするしかない。

その技術を有し、提供していたのがLookerだった。だからLookerを取り込んだのではないだろうか。

もちろん、全ては僕の妄想に過ぎない。実際Googleが考えていることに1ミリも掠ってないかもしれないし、もっと壮大な構想があるかもしれない。

だが、そういう世界の広がりを、僕はLookerを通じてBigQueryに感じた。だから僕にとってBigQueryは、いちデータウェアハウスではないし、今のところBigQuery + Lookerに競合はいないと思っている。

今後、この前線にどんなプレイヤーが参入するのか、あるいは前線としてどこまで成立するのか、いち分析屋として注意深く動向を追っていきたい。

サポートされた者たちから受け継いだものはさらに『先』に進めなくてはならない!!