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結果よりも行動よりも大切なものを考えたくなるスパゲティー小説『ゴールドフィンチ』

スパゲティー小説というのがある。スパゲティーをゆでながらもつい手にとってしまう小説、と村上春樹が言っていた。そしてオススメしていたのが、この『ゴールドフィンチ』である。

読んだ。
結果、僕にとってもこの本はスパゲティ小説であった。

ただし物語の世界に没頭できるまで、100ページくらいかかった。作者の文体に慣れるまでの時間と言ってもいいかもしれない。

僕にとって、ハマったポイントは2つあった。

1つは、主人公目線での「目の前の出来事と、世界をこんな風に見てますよ」描写が丹念なこと。心理なり考察なりを密に描きこんでいる。その質と量が圧倒的だった。

それはハリー・ポッターを彷彿とさせる。思うにハリー・ポッターは、現代っ子視点で魔法世界を語るからこそのドライブ感があった。それをファンタジー抜きで実現しているところに作者の凄味がある。

もう1つは、意志と行動と結果の関連が、予測できないこと。

多分、本書は普通に日本で教育を受けた人からすると、ラッキーに見える局面が多い。悪いことも結構起きるが、総じて言うと、ひたすら普通の男子がモテる漫画ばりに事態が好転したりする。

善良な意志の割に、破滅的な行動が取られがちである。
破滅的な行動の割に、結果オーライである。

でも現実世界も、そんなものかもしれない。
今の世の中、とかく行動が求められがちだ。
行動というよりリアクションかもしれない。

でもリアクションしなかったからと言って、あるいは規格外なリアクションをとったからと言って、どんな結果になるか誰にわかるだろう?

それよりも重要なのは、意志なんじゃないか。
意志と向き合えよ、衝動を磨けよ、という気にさせられる。
結果よりも行動よりも大切なものは何だろう、と考えたくなるスパゲティー小説だった。

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