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『古くて素敵なクラシック・レコードたち』 私的Youtubeリンク 81-100

81) シューマン チェロ協奏曲 イ短調 作品129

・カッサードは情熱を楽器に委ねることを寸分も躊躇しない
・始めはそのロマンティシズムに戸惑うが、次第にその芸風を愉しめる
・今のチェリストで、ここまで確信的に自分の個性を貫ける人はいまい
・そういう意味で得がたい記録

82) ブラームス ピアノ三重奏曲第1番 ロ長調 作品8

・カントロフは僕の好みのヴァイオリニスト
・モーツァルトのソナタと協奏曲はどれも素晴らしい
・このブラームスでも先頭で、美しく大胆に音楽に切り込む
・思い切りの良い演奏が、青春期の熱い息吹を蘇らせる

83) シベリウス 交響詩「ポヒョラの娘」作品49

・バルビローリは、どこまでも美しい中庸に徹している
・炉端で語られる話に耳を傾けているみたいに、自然に音楽が流れる
・さすが長年のシベリウスのスペシャリスト

84上) マーラー 「亡き子を偲ぶ歌」

・僕はベイカーのさらりとした歌唱のたたずまいの方を好んでいる
・感情を抑えに抑え、それでもこみ上げるものを滲み出せる
・そこに説得力が生まれる
・バーンスタインが指揮も微妙な陰影に富んでいて聞き応えある
・ベイカーはその7年前にバルビローリと組んで録音している
・歌唱は劣らないが、バーンスタインの情熱的かつ精緻な伴奏を評価したい

※バーンスタイン盤は見つからず

84下) マーラー 「亡き子を偲ぶ歌」

・キャスリン・フェリアはブルーノ・ワルターと名盤を残している
・彼女は別格のマーラー歌手。他の歌手と比較する気が失せる素晴らしさ
・ウィーン・フィルの音色も絶妙、静かなドラマが心に染みる

85) ドリーブ 舞踏組曲「コッペリア」

・アンセルメはバレエ団で指揮した経験を持つ
・ニュートラルにさっぱりしており六十数年を経た今も古っぽさは感じない
・通俗に堕すことなく上品。スイスロマンド管の音色も高品質で華麗

86) J.S.バッハ 「音楽の捧げ物」 BWV1079

・メニューイン盤とマルケヴィッチ盤は、まったく違う曲のように聞こえる
・一般のバッハ・リスナーには素直なメニューイン盤がお勧め
・コアなリスナーにはこってりクセがある魔性のマルケヴィッチ盤がお勧め

87) チャイコフスキー 幻想序曲 「ロミオとジュリエット」

・小澤征爾の演奏は若者の覇気が溢れていながら細部まで綿密に練り上げ
・勢いよく破綻がない出来栄えに、ただただ感心
・サンフランシスコ時代の小澤の傑作のひとつ
・もう片面のプロコフィエフの「ロミオとジュリエット」も名演

88) プロコフィエフ 「スキタイ組曲」 作品20

・反逆児プロコフィエフのこの音楽は大きなスピーカーでガンガン鳴らそう
・アバド/シカゴ響の演奏は、音の響きの深さに驚かされる
・奥底から湧き上がってくるような不気味さ
・アナログ録音時代末期の素晴らしい達成

89) モーツァルト 弦楽四重奏曲第15番 二短調 K.421

・ジュリアードSQの15番に夢中になって、ずいぶん繰り返し聴いた
・研ぎ澄まされた筋肉質の演奏で、当時の好みにフィットしていた
・今でもジュリアードSQ以外は、多少の違和感を感じてしまう
・スパッと切り込んでいくような弦の音じゃないと15番にあらず的な
・この62年録音のレコードは今も胸を熱く震わせる

90) ベルク 弦楽四重奏のための「抒情組曲」

・アルバン・ベルクQの演奏も一貫性を持ったもの
・ジュリアードSQに比べると丸みが感じられる。より温かい
・一九九一年に再録しているが、旧盤で十分満足

91) バルトーク ヴィオラ協奏曲(遺作)

・最初に聞くべきはプリムローズ盤
・補作にあたったバルトークの親しい同郷人シェルイが指揮
・制作会社は録音技師のバルトークの息子が主宰するレコード会社
・演奏は心のこもった温かいもの

92) ブラームス ピアノ五重奏曲 へ短調 作品34

・カーゾンとブダペストSQの共演は完璧に必要十分
・まるで「何も足さない。何も引かない」
・カーゾンの室内音楽に外れはひとつもない
・七十年前の録音だが、演奏の美質を何ひとつ損なっていない

93) シューベルト 「さすらい人幻想曲」 ハ長調 作品15 D760

・カールス二十四歳のときの演奏だが、テクニックも音楽性も見事
・気張ったところもなく、若者らしい風通しの良いのびのびした音楽
・この曲に関してはリヒテルのコントロールされた演奏より高く評価したい

94) ビゼー 歌劇「真珠採り」

・ビョルリンクとメリルがデュエットで歌う「神殿の奥深く」は名唱
・うっとり聞き惚れてしまう。流麗極まりない。愛好している

95) モーツァルト ホルン協奏曲 第3番 変ホ長調 K.447

・ブレインの演奏は歴史的定番
・ホルンという楽器で、語りかけるようにパーソナルに楽器を演奏する
・そんなことができる人は多くないはず。カラヤンの伴奏も柔らかい

96上) ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第32番 ハ短調 作品111

・ソロモンは強靭にして繊細。内面を見つめる深さを感じる
・バックハウス盤は高田馬場で五十円で買ったのが申し訳ない高級な演奏

96下) ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第32番 ハ短調 作品111

・ゼーデルグレンは知名度は高くないが、冒頭からはっと驚かせる新鮮さ
・タッチは繊細で表情も鮮やか。最後の一音まで隙なく充実した演奏
・でも評判はとくに耳にしない。どうしてだろう?

97) トマス・ビーチャムの素敵な世界

・ビーチャムは英国人に愛され、英国人に愛好される音楽を演奏した
・日本での人気はそれほど高くないが、音楽的に外れがほとんどない
・「感動的な名演奏」はとくに思い浮かばないが、楽しい演奏がたくさん
・アンコール向きの軽い曲を集めた「ロリポップ」というアルバムがある
・ビーチャムおじさんは、それらを慈しむように大切に演奏する
・このアルバムを聴いていると、心が自然にほのぼのしてくる

98) ジョン・オグドンの個性的な生涯

・オグドンの名前の入ったレコードを見かけると反射的に買ってしまう
・なぜか妙に気になる
・華麗なテクニックを誇ったが、後年は精神の安定を欠き奇矯な演奏が多い
・古典音楽には興味を示さず、同時代の作曲家や技巧的な作品を愛好した
・リストやラフマニノフの曲集で水を得た魚の如く生き生きした音楽を作る
・技巧的な屈託を愛しながら、決して溺れない知的強靭さが見受けられる

※上は本書では取り上げらていないライブ演奏

99) マルケヴィッチの穴

・マルケヴィッチもついレコードを買い込んでしまう
・この人の指揮する音楽を聴いてがっかりした覚えはない
・平均点が高くも、出来の良いものはめっぽう面白い
・一九五〇年代は問題児の風格があり、ハマると抜け出せなくなる
・フィルハーモニアと組んでの二度目の「春の祭典」は切れっ切れ
・息つく暇もなく終始楽団を押しまくる

※上は本書では取り上げらていない演奏

100) 若き日の小澤征爾

・小澤征爾はフォトジェニック。レコードのジャケットによく顔を出す
・存在のカリスマ性を表しているのだろう
・征爾さんにはやりたいことが見えていて、それを立ち上げることができる
・ボストン響の音楽監督になる前の若い征爾さんは気楽な境遇だった
・その時代の彼の演奏には、チャンスの波に乗る自由さと喜びが満ちている

※両方とも本書では取り上げらていない演奏

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