見出し画像

エンタメマッチングサービス「pato」をリブランディングしました

こんにちわ!デザイナーの田島美鈴 @abcmisuzuです。この記事では、エンタメ特化型のマッチングプラットフォーム「pato」のリブランディングをしたので、その遍歴をご紹介します。

1. patoって?

patoは、いつでもどこでもキャバクラやラウンジのような体験ができるマッチングサービスです。「今日は盛り上がりたいな」と思った時に、その場にすぐ、patoのキャストを呼ぶことができます。2017年6月にローンチし、20万人以上の方にご利用していただいています。

patoでは、社交接待のシステムをインターネットにリプレイスすることで、新しいエンタメ文化と働き方の創出を目指しています。対象となる業界・市場は、1兆円強。その中には、キャバクラやラウンジなどいわゆる富裕層の社交場と言われるリアルサービスも含みます。

このような業界も含むというと、グレーなイメージもあるかも知れません。私もありました。けれど、そんなイメージも含めた様々な世の中の常識を変えるため、運営メンバー一人一人が頑固たる大きなビジョンを描いて本気で挑戦しています。

そんな特殊な業界だからこそ、ユーザーさんの心理が、めちゃくちゃ面白い。主にエグゼクティブ・ハイクラス層の方々によって、一晩で何十万何百万のお金が動いていきます。

ここまで人を動かす欲求ってどこから来るんだろう?って。patoが提供できる価値はどんなことなんだろう?その先で、どんな世界を実現できるだろうか?そんな抽象的なところから、機能開発はもちろん、ロゴやグラフィックのトンマナ、フォントサイズ、余白のルールなどの審美性まで。

あらゆるユーザーとの接点で「patoが好き!」と思ってもらえるような体験を目指してデザインをしています。

2. なんで取り組むことになったの?

そのためには、まずは「patoらしさ」ブランドビジョンの再構築が必須でした。

その理由は、創業から2年近くが立ち、会社のフェーズが変わったり人材の入れ替わりがあったことで、pato自体においてのアインデンティティが社内でバラバラで曖昧になっていたからです。

各デザイナーも都度「patoらしさは何か?」を0ベースから考えて設計をしていくのでスピードもアウトプットにもばらつきが出ます。組織が大きくなり色々な部署でデザインが必要になるにつれ、明文化されていない状態に限界を感じていました。

そこで、ブランドアイデンティティの再考を機に、

・インナーブランディングとして、ブランドビジョンを社内のマインドや意識決定の軸にする
・アウターブランディングとして、ブランドビジョンとクリエイティブを一貫させる

大きくこの2つを目標にし、リブランディングとしてpatoのこれからを表現するロゴやクリエイティブルール、それに伴う思考的なアップデート・浸透が必要だと判断しました。

3. 早速取り掛かったけれど、、

では、まず何をしたらいいのでしょうか?

事業の戦略としてブランドを構築する際に、フレームワークとして「ブランドアイデンティティ」がよく用いられます。

そもそもアイデンティティは、精神学や心理学における「個人」についての概念で、ブランドアイデンティティはそれをプロダクトやサービスに当てはめたものです。

プロダクトやサービスを「個人」に見立て、その共同体の一部である私たちがその人になりきって理念や特性を踏まえた行動や意思決定を行うことで、サービスのイメージを確立しやすくなります。

ということで、核となるミッションやビジョン、コアバリューなどの大切にしたいこと(=MI|マインドアイデンティティ)をしっかり固めてから、それを表現するトンマナやガイドラインなど(=VI|ビジュアルアイデンティティ)を具体的に考えていくことに。

そして、それらが意思決定やクリエイティブの軸となる状態を目指すために大切なのは、勝手に「作る」だけで終わらせないことです。

できるだけたくさん関わるメンバーを巻き込んで、自分ごととして語れるようにしたい。そんな想いから、いつでも振り返れるようにブランド手引書のような社内用のドキュメントを作りました。今回は、その一部をご紹介します。

MI  | マインドアイデンティティ

MIの章では、ブランドとしてpatoが届けたいメッセージを、 全社員が見て理解できるようにまとめました。このような構成です。

・MISSION|ミッション
・VISION|ビジョン
・VALUE |バリュー
・PERSONARITY|パーソナリティ
・TARGET|ターゲット

MIを固めるフェーズでは、私がオーナーとして、CEOやCMO、運営メンバーにヒアリングし、これまでの水商売業界や競合と比較した時のポジショニング、どんな価値をデマンド・サプライに提供できるのか、していきたいのかを可視化し、今後の目指すMMVを再度言語化することに。

作成したブランドエクイティ・カスタマージャーニー

議論の末、「noteのミッション『誰もが創作をはじめ、続けられるようにする』みたいに、どんな人に、どんなことをして、どんな状態にしたいのかを表現したいよね」というCEOのコメントを元に、"もっと楽しみたい人に笑顔を届け、世の中を元気にする" というミッションを策定しました。

その他に、「パーソナリティ」も合わせて考えました。patoらしさを構成するものが、どのような形容詞だったり写真で表現できるかを大きく4つにまとめ、より具体的に一人一人が解釈しやすくなるようにしています。

VI  | ビジュアルアイデンティティ

VIの章は、ブランドメッセージを伝えるためのビジュアル作成ルールをまとめており、主に デザイナー向けに作成しました。patoのビジュアルに関わるフォント・カラーの定義はもちろん、言葉使いなどもまとめています。

VI概要
・GUIDELINE|ガイドライン
・LOGO|ロゴ
・COLOR |カラー
・TYPOGRAPHY|タイポグラフィ
・PHOTOGRAPHY|フォトグラフィ

作成にあたり苦労した点は、パーソナリティの多面性です。patoは、もっと楽しいことを追求し、自由で大胆、エネルギッシュに素の自分を解き放つことができる一面もありつつ、洗練されたハイグレードで一流の体験ができ、大人の品格や見栄を大切にする一面もあります。

一見相反しているこの二つのパーソナリティを、どう折り合いをつけて表現すればいいのか。方向性を模索するために、少しでもpatoらしさを感じたものを徹底的にピックアップし、表現方法を言語化してロゴやグラフィックに仮で当てはめて比較したりしていました。

しかし、一つに絞ろうとすると、極端に尖りすぎてしまうか、無難で特徴のないものになってしまいます、、難しい。

そんな時に、偶然読んだインテリアの本で面白いテクニックを知りました。インテリアをデザインするときには、グラフィックと同様、たくさんの家具や雑貨を組み合わせてテイストを定めますが、相反する要素をあえて組み合わせることで、尖りすぎず、無難すぎず、自分に合ったテイストを表現する手法があるというのです。(和の要素とモダンな要素を組み合わせて、『和モダン』のスタイルに合体させるイメージ)

よくよく考えれば当たり前ですが、今まで悩まされてきたこのジレンマを、むしろチャンスと捉えて融合させてみよう。そう考えると、かなり選択肢を広げることができました。

ガイドラインではそれを応用し、ベースは控えめで洗練された雰囲気でありつつ、ワンポイントでエネルギッシュさや刺激的な部分を組み合わせて表現できるよう、線の太さ、余白や色、光の多さ、差異のつけ方などをまとめました。また、ワンポイントの記憶に残る要素としてレッドカーペットやリボンなどのモチーフを採用。

MI・VIを含め全20Pに渡って制作し、クリエイティブに落とし込んでいきました。

4.リブランディングで改善した成果物

ランディングページ

https://pato.today/guest/

ニュース配信などで用いるサムネイルテンプレート

ポスター、ビジネスカード、卓上POP

サービスロゴ

サービス写真

まとめ

半年以上の長期にあたる大規模なプロジェクトで、初めてオーナーとして取り組ませていただきましたが、スタミナを持って粘り強くアクションする達成力、ビジョンにフォーカスして集中する目標思考、社内で合意を集め段取りする合意形成力など、経験する中で本当に沢山のことをアンコンフォートながらも学ばさせていただきました。

しかし、当初の目的であった下記の2つの達成にはまだ道半ばです。

・インナーブランディングとして、ブランドビジョンを社内のマインドや意識決定の軸にする
・アウターブランディングとして、ブランドビジョンとクリエイティブを一貫させる

インナー向けには、MMVを印刷してオフィスに張り出したり、入社時のマインド研修への入れ込み。アウター向けには、マーケとの連携の強固や、接客マニュアルなどの作成など、ユーザーとの全ての接点で「patoらしさ」を一貫して届けることができるように、今後も取り組んでいきます。

読んでいただきありがとうございました。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?