見出し画像

ちひろさん

少し前に、『ちひろさん』という映画を見た。
原作の漫画を一年前くらいに読んでいて、その漫画が好きだったので映画も見てみようと思った。内容を知っていても、綺麗な町の風景や、有村架純が演じる原作とはまた別の魅力のあるちひろさんが出てきて、映画も新鮮な気持ちで楽しめた。

『ちひろさん』は、元風俗嬢のちひろさんが海辺の街のお弁当屋さんで働く様子を描いた作品だ。素性に関係なくどんな人にもあっけらかんと接する彼女によって、周りの人が自分の悩みに向き合い変化していく。人間社会における様々なしがらみから離れたようなちひろさんは、家族や仕事に縛られた人の心を強く揺り動かし変化させる。そして、周りの変化によって、彼女自身も変わっていく。
そのような人の心情が、ちひろさんが各季節の出来事を行う様子とともに穏やかに描かれているので心が和んだ。また、それぞれの季節の出来事を楽しんでいるのを見ると、自分もしてみたいなと思い胸が躍った。

ちひろさんは誰とでも愛想よく関わるが、家族のような深い付き合いをしない。実の家族ともほぼ交流がなく、海辺の街で心を通わせられる人ができるとひっそりとその街から消える。孤独を手放さないでいられる人と言われていたが、その通りだと思う。彼女は、他人と完全に心を通わせられることは無理なので心を通わせる事を望むほど息苦しさを感じると気づき、それを諦めたのかなと思った。
自分は、中学生以来、家族以外の人と私的な用事で会うのを億劫に感じ避けたくなるようになったので、人との深い付き合いを拒むちひろさんの気持ちになんとなく共感できるなと思った。人といても一人になることを望む気持ちって結構我慢できないものだよな、と思った。

自分にとって、『ちひろさん』は印象深い作品になった。



この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?