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初めての書籍

来月9/3に私の初めての書籍『悪役令嬢はシングルマザーになりました~ 双子を引き取りましたが公爵様からの溺愛は想定外です』がアイリスNEO様より発売になります。

昨年、一迅社様の『第2回アイリス異世界ファンタジー大賞』で銀賞を受賞させていただいたことで書籍化という夢のような機会につながりました。

私がなぜ物語を書くようになったかといいますと…

数年前に軽い脳梗塞を経験しまして、それまでの激務から退くことになりました。

仕事、家事、子どもたちの世話など、とにかく忙しい毎日から「何もやることない…」と思うくらいにまで急激に生活が変わったのです。

もちろん、リハビリとか病院通いとか、とても大変でした。特に歩くことが難しかったのと認知機能に若干の影響がありました。それでドクターから指を使う作業や日記のように何か書くことを勧められたのです。

有り余るほど時間ができたので、私は『小説家になろう』というウェブサイトで面白い物語を探しては貪るように読むようになりました。それこそ一日中読んでいることもざらでした。

最初は読み専だったのですが、次第に自分でも好きな物語を書いてみたいという欲求が生まれ、リハビリも兼ねて妄想のおもむくままに好きな物語を書き始めたのです。

仕事が忙しくて毎週のように出張があった頃も、移動中に少女漫画やラノベをよく読んでいました。特に胸がきゅんきゅんするような恋愛物語を読むと、疲れて脳の回路が焼き切れそうな時も不思議と癒されるような感覚がありましたっけ。

なので溺愛とか砂糖をドバドバ吐くような甘い物語を好んで書いています。読者様からも「砂糖増量で!」と声援(?)をいただくと大喜びで甘い場面を増やしたりしていました。

『小説家になろう』では頻繁にコラボ企画があり、クリック一つで賞に応募することができます。私も「せっかくだから…」という感覚で賞に応募していました。当然ですが、まさか受賞するなんて思いもせずに…です。

そんな訳で『なろう』運営を通して一迅社様より連絡をいただいた時、物凄くびっくりしました。家族も含めて「え…? 騙されてるんじゃない?」という反応でした。はい、すみません (;^_^A

その後、どうやら騙されてはいないらしいと理解し、担当編集者さまと打ち合わせを重ねながらの改稿作業が始まりました。

私は通訳翻訳の仕事では20年以上のキャリアがあります。文章を書くことにも慣れていると思っていましたが、小説の書き方は翻訳とはまったく異なっていました。

翻訳といっても私の専門は技術翻訳(特に法律、医療、歯科)で文芸翻訳とはまったく違う分野です。

昔、文芸翻訳者の方にお会いした時に「あー、1文字いくらでちゃんとお金がもらえる世界の人だ~」と言われたことがあります。

まったく異なる世界なんですよね。

担当編集さまはとても優秀な方で私の欠点、弱点を次々に指摘してくださいました。

そりゃもう沢山あったんですが(汗)、その中で一番印象深かったのは私が『書き過ぎている』という指摘でした。

技術翻訳の世界では、例えば特許明細書のように権利を守るために絶対に誤解を生まない書き方をしないといけません。

誰が、どういう目的で、誰に対して、何をしているのか、読み手が誤解しないように明確に書かないといけない。

しかし、小説というのは読者に想像してもらう余白、何も書かない空間が必要なのだ、と指摘された時は目から鱗がボロボロ落ちました。

読み手に想像してもらう、という発想はなかったので、本当に衝撃だったことを覚えています。というか技術翻訳で想像の余地を残すのは許されないことなので。誰が読んでも100%同じ解釈になる文が良い文なのですから。

その後の減らす作業はかなり大変でした。
もちろん、読み手が理解できることは前提でどのくらい残せばいいのか? 試行錯誤を繰り返しました。

一年かけて担当編集さんと打ち合わせと改稿を重ねました。内容についてもストーリーの流れを良くするために削ったり順番を変えたり。あるいは新しい筋書きを加えたり。書き下ろしも多いです。

最初は乙女ゲームの世界観を作ることに専念しました。どんなゲームでどんなシナリオでどんなキャラがどんな動きをするのか? さらにこの世界ではどんな魔法が使われ、人々は何を食べどんな生活をしているのか?

ただ、問題はこの物語のヒロイン、エステルはこの世界が乙女ゲームの中で自分が悪役令嬢だという自覚がない。ヒロインがゲームの世界観を伝えることができない状況で、いかに読者様に世界観を伝えるのか、担当様とうーんうーんと悩んでいたことも今となっては懐かしい思い出です。

この一年、素晴らしい勉強をさせていただきました。
担当様には何と御礼を言ったらいいか分からないほどです。
毎回の打ち合わせが凄く楽しくて…時間が経つのがあっという間でした。
校正担当者様、正しく美しい日本語の使い方を教えていただきました。
本の装丁もとても素敵でデザイナーの方にも感謝しています。

何より……
双葉はづき先生は刀剣乱舞などでも有名な大人気のイラストレーターさんです。その画力、魅力的なキャラクターに画像が届くたびに「はわわっ」と溜息が出て、しばらく見惚れてしまいました。
表紙、ピンナップ、挿絵、どれをとっても最高です。
エステルと双子のココとミアはめっちゃ可愛くて。
超イケメン攻略キャラも沢山描いていただきました。

本が刊行されるまでに多くの方に力を尽くしていただきました。
プロとして素晴らしい仕事をされている皆さまへ心からの敬意と感謝の気持ちを捧げます。本当にありがとうございました。

私はこの本を『拙著』などとは呼べません。
もちろん日本人の謙譲の美は理解しています(←これについては別に書くかもしれません)
でも、私の名前が表紙に書いてあっても、この本は多くの方たちが関わってくださった結果だから。

助けてくださる方々のおかげで、自信を持ってお勧めできる作品になりました。私一人では何もできませんでした。

皆さまに楽しんで読んでいただけたら嬉しいです。

https://www.ichijinsha.co.jp/iris/title/akuyakureijyou-ha-singlemother/
















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