推し短歌④「グリーンダカラ」
1年前に追突事故に遭い、ずっと続けてきた事務の仕事を断念せざるを得なくなった私。就職活動34社目にして拾われたのは、最低賃金の清掃員。
初仕事は、煤だらけの便所の床にキツい洗剤を撒き、デッキブラシでひたすら磨くことだった。
時は9月半ば。気温は秋どころかバリバリ真夏日の我が県。嘘みたいに次から次へと溢れ出る汗で、作業着の重みと臭いがどんどん増して行く。
仕事で汗などかいたことがなかった。
今までは、クーラーの効いた静かなオフィスで、一人黙々とデータ入力をするだけ。飲み物はいつもサーバーのアイスコーヒー。スポーツドリンクなんて飲んだのは高校生の時以来だった。
数あるスポーツ飲料の中で私がグリーンダカラを選んだのは、クセがないから。他社製品に比べ添加物が少なく味もすっきり。価格も手頃で一本600ml。とてもクリーンな飲み物なのである。
空調のない便所で汗をかき、汚物を拭き取り、素手でやれば皮膚が溶ける洗剤を使う清掃の仕事は、正に3K。
「きつい、汚い、危険」。
だけど、以前のようなリスケジュールや煩わしい人間関係に悩まされることはない。
相手の不利益に繋がる業務に心を痛めたり、どう見ても黒なのに「白と言え」と言われることもない。
この仕事は、磨いていなければ黒は黒のままだし、きちんと毎日磨いていれば白は白のままなのである。色にはっきりと成果が現れる。
人間関係も基本は個人作業だが、作業員のおじさん達が優しく声をかけてくれる。
良くも悪くも、クリーンで透明でシンプルなのが清掃の仕事だと実感している。
クリーンな仕事には、クリーンな飲み物がよく似合う。