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【試し読み 第1弾!】あばれる君、初エッセイ『自分は、家族なしでは生きていけません。』

あばれる君、初エッセイを出版します!

5月22日に、あばれる君はじめての書き下ろしエッセイ
『自分は、家族なしでは生きていけません。』
をポプラ社より出版します。

一人暮らしのときは家族の大切さなど考えたこともありませんでした。そんな僕に人間的な思いやりを教えてくれたのは、妻と、息子たちでした――

「おわりに」より

愛妻・ゆかちゃんへの感謝、2人の息子「ちびれる君」たちとのあたたかな触れ合い、芸人としての苦悩と手ごたえ、合格率5%の難関・気象予報士挑戦……。あばれる君の誠実でまっすぐな人柄があふれる1冊です。

発売前に、本の中からエッセイを2本、公開いたします!

お楽しみいただけますと幸いです。

※校了前のエッセイを公開いたします。書籍化した際には若干の修正が入る場合がございます。ご了承くださいませ。


【試し読みエッセイ①】
自分は、やさしいゆかちゃんの気持ちをないがしろにしていました。

このレベルなら緊張しないで話せるというのがきっかけでしたが、結果的に付き合うこととなり、僕は人生を切り拓き助けてもらう最強のパートナーを、17歳にしてもう手に入れてしまったのです。

なぜ僕と付き合ってくれたのかをゆかちゃんにきくと決まって、「お笑い芸人になるって言ってたからだよ」と言います。ゆかちゃんは長女で昔ながらの農家出身。厳しく育てられたらしく、高校の文系か理系かへの進路選択の際も、つぶしが効くはずだと理系に進むようにお父さんに決められたようです。そして、お母さんの職業を追うように看護師の学校に通うことが決定事項となっていました。

おそらくですが、ゆかちゃんはしっかりと決められたルートを歩むのが少し嫌だったのです。そこにお笑い芸人という夢を持つ僕が現れて、もしかしたら第二の夢を僕に託したのかもしれません。

かといって僕の家が厳しくなかったわけではありません。当時の両親は僕のお笑い芸人になるという言葉を真に受けてなかったし、オーソドックスな世間体を核としたゆるがない価値観の中で育てられました。

そんな完璧主義の家庭環境の反動からか、とにかく僕はゆかちゃんに夢を語りました。ゆかちゃんは僕のほぼ妄想である夢のまた夢の話を、うんうんと自分のことのように喜んで聴いてくれるのでした。

ゆかちゃんが一年先に学校を卒業して、地元の看護学校に進みました。僕も高校三年生。そこから一年は、ゆかちゃんの軽自動車という移動手段も手に入って、本当に楽しく過ごしました。しかし、僕がこれから大学のために東京へ行き、新たな環境で新たな友達を作るために目を輝かせているのを見て少し寂しそうにしていました。看護学生がギリギリのスケジュールで勉強しながら、大都会へ出ていく彼氏を見守るなんて不安が押し寄せてくるに決まっています。

大学へ進学すると同時に遠距離恋愛が始まりました。と言っても僕が福島県に会いに帰るようなことはなく、ゆかちゃんが来たければ来なよという横柄なスタンスでした。僕も東京で同級生や先輩にカッコつけるのに必死だったのです。勉強の合間を縫って働いて、アルバイト代を貯めてやっとの思いで訪ねてくるゆかちゃんをないがしろにしていました。

でもさすがに誕生日を無視するわけにはいきません。ゆかちゃんの誕生日当日。大学の友達とラップをやっていた僕は、看護学校の昼休みを狙い、サプライズで自作のラップをMDに録音して届けました。なぜかゆかちゃんのクラスメイトにバレていて、みんなに囲まれながらMDを渡し聴いてもらいました。

恥ずかしそうにゆかちゃんは笑っていました。なんでお笑い芸人なのにラップなの? という顔がほんの少し垣間見えました。


【試し読みエッセイ②】
「芸人」になった日

疑問を持ちはじめると、日に日にその気持ちは大きくなっていって、僕の目は劇場の外の世界に向いていきました。水槽で飼われている魚が、広い海の話を聞いて憧れを抱いたようなイメージです。

そのとき耳に入ったのが、今の事務所が主催している大学生のためのお笑い大会でした。出場するほとんどの大学生芸人は大学のお笑いサークルに所属していました。ハナコの岡部など、数々のコント芸人を輩出した早稲田大学のお笑いサークルや、法政大学のお笑いサークルなどがひしめき合う中、野良でお笑いをやっているのは僕ぐらいでした。

まわりを見回すと、みんな和気藹々と楽しそうにお笑いをやっています。お笑いの世界は孤独で、苦しんで乗り越えるものだと思っていた僕は、こんなに楽しくやっていいんだ、というとてつもないカルチャーショックを受けたのを覚えています。高速道路から一般道路に降りたような、熱いサウナ室から外へ出たような、妙な安心感がありました。

僕のネタは、先生のモノマネとあるある。会場ではなかなかのウケ。厳しい場所でのお笑い修行はなんだかんだ無駄ではなかったのです。存分に力を発揮できました。結果的には、審査員特別賞。審査員だったBOOMERさんに「君は僕と同じ匂いがする」とコメントしていただきました。はじめてプロと呼べる芸人さんに褒めてもらい、忘れられない1日になりました。
養成所には特待生という形で入ることができ、劇団から僕は飛び立ちました。

その日の帰り道、ライブを観にきていたゆかちゃんは満足げでした。その顔を見て僕も満足でした。


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