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あばれる君、少年野球の審判になる。

あばれる君が、少年野球の審判デビューをはたしました!

少年野球の試合は、選手の親が審判を務めることが多いのです。あばれる君のお子さんは少年野球チームに所属していて、平日は朝5時から練習するくらいのめりこんでいます。

あばれる君も、お子さんと一緒に朝5時起きで練習に参加。用具の準備をしたり、バッティングピッチャーをしたりしています。そして試合の手伝いもするため、審判の講習会にも参加していたのです。

あばれる君Instagramより
あばれる君Instagramより
あばれる君Instagramより
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あばれる君の初エッセイ『自分は、家族なしでは生きていけません。』より、少年野球にまつわるエッセイを2本公開いたします。


息子が野球にのめりこんでいます

7歳になる息子の野球の練習を手伝いに行きます。そこには、たくさんの子どもがいて、小さな体で一丁前に大人の仕草を真似しながらプレーしています。そんな姿が愛おしいです。バッターボックスに入る前に首をぐるりと回したり、ファールを打った後、なんとなく首を傾げてみたり。思わずふふっと笑いが込み上げてきます。

息子は最初、サッカーをやっていました。でも試合になるとボールの奪い合いに近づきません。外からその集団のまわりをぐるぐる回っているのです。人工衛星みたいです。僕は息子が、とりあえず参加しているフリをしようとしていることを見抜きました。毎試合、雰囲気で乗り切っているのです。

なぜ見抜けたのか? 僕も似たようなことをやったことがあるからです。
どうやら足捌きに自信がないらしく股抜きされたりするのが恥ずかしいようです。しかし、サッカー経験のない僕はうまくアドバイスできません。
「一緒にセルジオ越後のYouTubeを見よう!」と言うのが限界でした。

ためしに公園でキャッチボールをしてみました。がんばってボールを捕って投げ返してきます。僕は子どもとキャッチボールをするのが夢だったのでとても楽しい。息子もキャッキャと笑っています。キャッチボールをしながら、僕も中学は野球部に入っていたので息子に正しい投げ方を教えたり、松井秀喜の3打席連続ホームランの話をしたりしました。昔、巨人の助っ人外国人投手のガルベスが怒って審判にボールを投げた話もしました。ついでにガルベスの投げ方も教えました。

サッカーも野球もどちらも偉大なスポーツだから、あとは息子に選んでもらうことにしました。

結局息子には、野球があっていたようです。選手名鑑を見たり、テレビで試合を見たり、朝練に行ったり。今は、野球にのめりこんでいます。

僕も親御さんたちと挨拶を交わして、子どもたちのために道具の準備や片付けをしていると、チームに溶け込めた感じがして心地がいい。そんなときに「ああ。俺も大人になったんだな」と思います。学校の窓ガラスに映る自分の頭頂部を見たときも思います。せっかくドリンクバーを頼んだのに、1、2杯しか飲まないときも思います。

誰かの打った打球が飛んできました。
「パパ‼ ボーッとしないで‼」
息子に𠮟られます。僕は、笑顔で打球を追いかけます。
来週は審判講習会に行ってきます。


息子への愛情はほどほどに

息子の野球の審判講習会にこれから行きます。おそらくですが、セーフやアウトの言い方とかを教わるに違いありません。

「こんなセーフの言い方は、鼻につくのでやめましょう。」
「今のアウトの言い方は激しすぎて選手が傷つくのではないか?」
「セーフとアウトの中間の言い方はないのか?」

などと時代の最先端の議論が白熱するのです。息子の練習を手伝っているだけで、立派な大人になったように感じている僕が、まさか野球の審判までやるようになるとは。

僕は中学で野球部に所属していました。ポジションはキャッチャー。チームは弱小で、コールド負けばかり。そもそも、ピッチャーがストライクを投げられないから試合にならなかったのです。

しかし、とある日の練習試合。僕たちのチームはその日、変貌を遂げました。うちのピッチャーがバシバシ見逃し三振を取っていくのです。

その日の審判はピッチャーのお父さんでした。

練習試合ではお手伝いで保護者が審判をやるのです。監督が試合前に、「保護者の中で主審をやってくださる方はいますか?」と声をかけると、先発ピッチャーのお父さんが、間髪をいれずに真っ直ぐ手を上げていました。今日の主審の座は譲らないという覚悟とすごみを感じました。

試合開始とともに親子による共同奪三振ショーが始まりました。息子を思うがゆえでしょう。高かろうが低かろうが、かなり広い範囲でストライク。僕が「えっ? いいの⁉」と思うぐらいのストライク。

相手バッターは、本日の主審とベンチを交互に見返します。相手チームの監督もなにかを言いたそうな顔をしています。しかし、ピッチャーのお父さんはそれをねじ伏せるような声量で、三振の山を次々と築くのでした。

そのお父さんに共鳴するように、

(相手になんか言われるまではこのまま見守ろう。)

そんな雰囲気がチーム、そして保護者全体に漂っていました。

試合が進むにつれそのピッチャーのお父さんの目は少し宙を見はじめました。気まずいのでチェンジのときは逃げるようにベンチに駆け込みました。
そのお父さんは自分でもわけがわからなくなったのでしょう。ど真ん中のストライクを「ボール‼」と思わず判定しているときがありました。とにかく、うちのピッチャーは大投手に変貌を遂げたのです。

息子を思う気持ちが強くなるとおそろしいことになります。僕も気をつけなくてはならないと教訓になりました。


『自分は、家族なしでは生きていけません。』ぜひ読んでください!
家族をメインテーマとしながら、審判エピソードのみならず、気象予報士試験挑戦、芸人としての手応えと苦悩などを本気でつづった「あばれる君」感が満載の1冊です。胸にぐっとくるエッセイもたくさん。ぜひ読んでいただきたいです!

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