忽湧 7/5 「いろは唄」
集団下校ってあったじゃないですか。先生や保護者の誰かが一緒になって子供たちと帰るあれです。
私の息子も、今年小学生にあがって。
半ば強制でPTAに入りました。
ええっと。それで。
最近暑くなってきたじゃないですか。
それで低学年の子は熱中症が怖いから、行きと帰りにPTAで集団下校を見守ろうって。
それで私、帰りの14時あたりに集団下校のグループの監督を任されたんです。
じりじりと照りつける太陽の下、体に対して大きいランドセルと水筒を提げた子供の先頭に立って、通学路を歩いて。
そのグループに、息子と同じクラスのいろはちゃんって子がいたんですけどね。
「なんか聞こえるー」
って、言うんですよ。
なんだろー、セミかな?とか、いろはちゃんと話してたんですけど。
「ちがうよーパパの声だもん。」
お父さんの声が聞こえるって言うんです。
熱中症とかで意識が朦朧としているのかと思ったんですけど。特に見た目も変じゃないし。汗もしっかりかいてます。
とりあえずいろはちゃんに水を飲ませてあげました。
でも。
「やっぱりパパの声がする 私のこと呼んでる。」
そう言ってて。
でも特に何も聞こえないんですよね。
別に周りに大人の男性はいませんし、とくに物音はしません。
で、いろはちゃんは特に体調を崩すこともなく、そのまま集団下校は終わりました。
で。集団下校の後に、保護者名簿を見てて。
いろはちゃんのお父さんが去年亡くなったのを思い出したんです。
もしかしたら、お父さんがいたのかな、なんて思って。
その後、夕食を済ませて、息子が寝たのを確認してから、私も寝ようと思ったんですけど。
おそらく、窓の外から、
「いぃいいろぉおぉはぁあああ」
男の声がするんです。
「ほぉぉおへぇえええええとぉおおおぉ」
私はいろはちゃんのお父さんと会ったことはないので、分からないんですけど。
あれってお父さんじゃないと思うんですよね。
(終)
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