見出し画像

理想の田んぼを探して

私の理想の田んぼは、生き物が群雄割拠するような田んぼだ。

大人になった今でも、そんな理想の田んぼを探し続けている。

田んぼは、春になると突然現れる。荒れ果てた土地に突然水が張られて、新たな命が芽生える。人が夏に現を抜かしている間に水は抜かれ、一生を終える生物も多くいる。

人為的に生み出されたサイクルの中で紡がれる命のバトン。この儚い生態系は、自然と共生してきた日本人の歴史そのものだ。

都会に住んでいると、絵に描いたような田園風景を拝むことは難しい。例え田んぼがあっても、かつてのような生き物が群雄割拠していた田んぼは見る影もない。

田んぼ①

今でもそんな理想の田んぼを探す理由は2つある。

1つは、生き物が好きだから。これは単純な理由。

そして2つ目、

それはかつての自分に出会うため。

私は、物心ついたときから、永遠に生き物図鑑と睨めっこをしていた。図鑑を見ながら、メダカ、ホウネンエビ、カブトエビ、タナゴなんかが泳いていて、蛙が永遠に鳴いているような田んぼを想像していた。頭の中で田園風景を描いて走り回るだけで幸せだった。

そんな想像の世界が現実にあるなら、そこに理想の全てが詰まっているはずだ。

理想としていた生活・理想の自分・汚れた社会からの脱出……。

かつての私が輝いて見えてしまうのは、やっぱり私も大人になったということなんだろうな。今もないものねだりを続けるのは、現実逃避したいだけなのかもしれない。

「生き物が好きだから、生き物がたくさんいる田んぼで遊びたい」

そんな純粋な理由で探せたら良かった。

最近は自分で田んぼをつくることも考えてはいるものの、1次産業って簡単に始められないですから。許可だの土地だの……色んなものに囚われているのは、田んぼも大人も一緒なのだと思う今日この頃なのでした。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?