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2020年映画まとめ

2020年は映画をあまりみなかった年なので旧作を合わせても100本ぐらいしか観ていないのではないだろうかという感がある。映画館に行く回数は激減し、通常の年の2割ぐらいだったような気がするし、今年ざっくり振り返ってもやはり良いと思った新作映画は上半期の方に集中していたような気もする中で、(そしてそれは既に発表済みなのでそちらを参照されたい。)でもまとめっぽいことはしたいし、後から振り返れる2020備忘録を作りたいというお気持ちに答えた順位とかは特にない緩い2020年映画まとめ。バズり気ゼロの怪文書形式でお届け。

上半期のベスト映画は以下の通り
『The Beach Bum』  
『1917』 
『ハーフ・オブ・イット: 面白いのはこれから』
『ジョジョ・ラビット』 
『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』 
『フォードvsフェラーリ』 

それでは下半期新作

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『テネット』
説明不要、これを観ずして2020の映画はまとめられない。テネットでノーランが表明した映画ラブは今まで作ってきたそれらとはアンパラレルな臨界点を叩いてしまったし、もうもとには戻らないんじゃないかという感ありな純粋でチャイルドライクな欲望の発揚でもあったと思う。本来であれば延期になったアレやコレやに混ざって公開されるはずだったものが、年間ほぼ唯一の大作という前例のない文脈を付与されるという事情がありどうしても色んなものを託したくなってしまうので所謂実験作に与えがちな『おーやっとるやっとる」みたいなことにはやっぱりならなくて、これこそが映画だ!!というような大仰な言い回しで讃えたくなってしまうような野心とその達成がそこにはあった。これは完全に個人の映画史観なのでアレなんですが、その洗練のなさでもって今年『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』と完全に対にきた。ショットが良すぎて・編集が良すぎて・撮り方が良すぎて悶絶みたいなことはまるでないのだけれど、演者を共犯にして自分の映画ではこういうことなのでの一点張りで、ただの逆歩きを逆行なる進行へと組み替え、こちらを物語世界へと引き込んで行く説得力みたいなものはやはり段違いで拍手拍手となるし、巷で言われるハッタリの作家だという評にはここで同意に一票です。

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『ワンダーウーマン1984』(ネタバレあり)
荒れるTLを横目に程々の期待感で挑んだ本作がまさかのどハマりだった。珍作・問題作、なんとでも言ってくれて構わないし、この映画に関して否定的なナード方面の批評はあまり読む気にならないと言った趣。この映画に関しておもんな側の言い分は全てわかるがそもそも観ているものが違うので読めば読むほどただ疲れるだけだ。後輩作家に映像よりもエモーションを優先せよとジェンキンス女史は説いてまわっているとのことですが、とても納得感があるのが本作。ガルガドットのヒーローとしての面構えが説得力の塊なので、飛翔に繋がる一連のシークエンス、あのショットにヒーロー映画に求めたいエモーションが詰まっており、描きたいものにコミットすれば自ずとついてくる観客にはついてくるのだなという何目線的な学びがある。反面プロットやらアクションの見せ方やらで多方面から反感を買うというのも肯ける作りにはなっており、だがそれは自分という観客にはあまり関係がない(二度目)。ヴィランを物理でねじ伏せるのではないな落とし所もなんだかしっくりきた。だが問答無用にこの映画が一番素晴らしかったのは飛行シーンだと思う。あの光景のなんとロマンチックなこと、ああいう景色を見せることに執念を尽くすというのも一つの職業倫理、市井の民への目配せやロマンス配合率と言ったクライテリアを順調にチェックした結果、自分の中ではアメスパ2以来の超絶大傑作アメコミ映画という箱へと吸い込まれていったのでした。

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『BLACKPINK: LIGHT Up the SKY』
2020韓国のエンタメが強い!!!パラサイトや梨泰院クラスきっかけに韓国映画やドラマに手を出しまくったという方も多いのではないだろうか、ちなみに自分はBLACKPINKが完全に来た、全部これのせい。ドキュメンタリー自体は無難も無難と言える作りになっておりとり立てて感動的ということもないのだが、曲はいくつか知っているし〜ぐらいのテンションで迂闊に観始めた結果、完全にゲートウェイなんちゃら、後は滑りやすいスロープだった。BTSのサンパウロ公演を流しながら書き上げている本稿、KPOPについてはいずれ書くような気がしないでもないのでここでは軽めにしておくが、おそらく当方元々一番尊敬している人間がトム・クルーズなのでアイドルとの親和性が高い。画面の奥の人間を無条件に崇めたい、ただしあちらはこちらの献身を求めないという条件が満たされた結果がドツボだったという分析結果があり、こちらからは以上です。

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『キスから始まるものがたり2』
自称一番好きな映画のジャンルがラブコメなあたしはこの映画を楽しみにしていると上半期のベストにも書いたのだが、真面目に映画を観ている人々からは完全に無視されているのにティーンの間ではセンセーションというギャップあって海外のポップカルチャーウォッチャーとしても見逃せない案件。ジャンルでは異例の134分という長尺に、使い古されたラブコメ的ラブコメ展開だけを地で行くストロングスタイルは時流にあってなさすぎて逆に新しい。本作から登場噛ませ要員なはずのセクシー天使のマルコが明らかに本命を食っており、まさかの続編3作目も絶対に見逃せない、3作目も同様に跳ねる可能性が高いので今のうちにこのマルコ電車に乗っておくのも悪くないと思う。Time誌の混乱した批評が印象的。

Other questions to ponder: Is The Kissing Booth 2 a good movie? Yes and no. Is the acting adequate, if not necessarily good? Yes and no. Is it a wholly accurate depiction of young love in any era, past or present? Yes and no. The Kissing Booth 2 — directed, as was the first installment, by Vince Marcello — is kind of terrible and kind of wonderful.


今年は実は旧作の方を観た気がするのでここでいくつかリストアップされたい。それ観てなかったのかよ的な名作が多い不勉強な自分を許して

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『トリコロール/赤の愛(1994)』
そんなくくりかたをしていいものかという葛藤はありつつも「ありえない友情・共犯関係」はツボトループの一つなので、盗聴する老いた男と咎める若い女という立ち上げ方が面白かった。生きている人間というのは基本的に面白いのでそういう生活をこちら側へと干渉させずに観察していられる特権的な立場を、失うものがないこの老人はその非倫理も折り込んだ上で享受している。世を捨てて一人で隠居する立場が少しだけ羨ましく思われたりもするし、そういう生気のない有り様を観てどことなく救われる若い魂があり、だがそれでも抗いたい若い女のナイーブな、それでも守る価値のある善性にふれて癒える老いた魂あり。
多分去年一番聴いた映画音楽がこれ。
Three Colors: Red - Fashion Show 1

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『花様年華(2000)』
情念が強いラブ、互いのパートナーが画面外に退けられてしまうほどにラブ。みたいなべっとりのやつを20世紀ノスタルジー・チャイニーズエスティックで転がしてくれるので目にとってとても快楽だった。画面についての映画という感じあり、上海の閉所恐怖症的な画面の作りからカンボジアの空へと飛躍する移ろいがまた憎たらしいほど良い。狭隘なその廊下やら部屋の作りでもってフレームのそのさらにフレームの中へと二人が押し並べれられることによる物理的な接近で見せるラブ。もう戻れないあの頃、確かに存在していたあの時間あの感情あのラブ。触ることができなくて、ぼんやりと見えるラブ。アンコールワットで独り身柱に囁くラブ。人生が狂うようなあなた以外何もいらなかった型のラブは良いものです。

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『ナイト・オン・ザ・プラネット』
観終わってすぐにPinterestに保存したくなるようなウィノナ・ライダーのアイコン性は魅力も魅力なのだが、上にも述べた様に生きている人間は基本的に面白いのでタクシー内のしょうもない会話には十分過ぎるほどに面白い市井の人間の営みが転がっていたりする。系のやつはリンクレイターやジャームッシュに贈られるありがちな賛辞ではあるのだがそれはやっぱり掛け値なしに素晴らしくて、何がそんなに素晴らしいのかというとそれはそんなふうに生きている人たちが世の中にはいっぱいいて、観ている自分が一人じゃないと思えるからで、それが明日への活力を開いてくれるからである。そんな夜でもいずれは明けてタクシー運転手は明日も乗客を乗せて生きていくし、そういう積み重ねの果てにたどり着いた我々の生きる2021年にはやはり価値がある、というマインドセットで頑張りたい今年もよろしくお願いします。

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