New Body Journal

New Body Journalというタイトルで、あたらしく文章を書いてみようと思う。これまでは私的な感覚について書くことにとどまっていたものを、こちらではもう少し外側の世界との関係に敷衍してみることにした。

New Body(あたらしい身体)というのは、ここ数年来感じていることで、人は常にあたらしい身体を獲得しつづけているという実感、そして、そのことばのもつ開かれていくイメージから決めた。

以前は、何か身体には完全な状態があり、(健康といわれるようなもの)けがをしたり、体調を崩すと、その完全な状態に戻るために何かする(休んだり、病院にいったり)という考えがあった。

しかし、自身の体調を大きく崩したとき、それは不自然な観念だと体感することになる。元に戻るというのは不可能だった。

---ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。

かの有名な方丈記の冒頭は人や世の中について言っているが、〝身体〟という物理的側面から見てもおなじことである。

目に見えなくても細胞レベルで日々生まれ変わっていて、昔できたことができなくなっても、あたらしい別のことができるようになっていたりする。

そのときに必要なこと(環境やその他の諸要因)に合わせて、変化し続けている。それは一見ネガティブな変化に見えても、視点を変えればその人に必要だから起こっていることだともいえる。

野口晴哉氏の「風邪の効用」はこの事実を風邪という身近なモチーフから説いている。風邪を引くことは悪いことでも身体が弱いということでもなく、バランスを取るために必要なことであるということ。そして、ちゃんと風邪をひければあたらしい身体を得るようにすっきりとするという。バランスを崩すというのは、劇的にあたらしいバランスを得るきっかけでもあるのだ。

常にあたらしいバランスを求めて変化しているのが人間なのだとわかったとき、体調を崩して治そうともがいていたところから、ひとつ抜け出た感覚があった。元に戻ることはできないし、しなくていい。その代わりに、未だ感じたことのないあたらしい身体のバランスというものがあるのだ、と急に視界が開けたようだった。

おかげさまで、いまは20歳のときよりも自分の身体の感覚に繊細になり、心とちぐはぐしていた感じがなくなった。これがいまの自分のあたらしいバランスなのだ。(このとき、馴染みのあったニューバランスというブランド名の秀逸さを感じた)

そこから身体感覚をもっと広げたいと思い、様々なことをしてきた。あたらしいものに触れるとあたらしい身体に変わっていくと感じている。

〝New Body〟というテーマで、感じていることや触れたもの、様々な切り口から書いてみたいと思う。自分の拙い言葉では、たくさんのものがこぼれ落ちてしまいそうだけれど、言葉もまた日々代謝していくもの。その過程も愛でながら、自分の立っている場所を知るための目印として文章にしてみたいと思う。

2024年2月16日

鴨長明「方丈記」
野口晴哉「風邪の効用」
福岡伸一「生物と無生物のあいだ」
スーザン・ソンタグ「私は生まれ直している」

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