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8月31日《porous?》

大野一雄が国際デビューを果たしたのは72歳のとき。その後、103歳で亡くなるまで踊り続けたという。この事実は、韓国の現代舞踊家ホン・シンジャ著「自由へのスパイラルダンス」で知り、私を勇気づけた。

今年の8月半ば、池田扶美代さんの3日間のワークショップに参加した。前半はテクニッククラス、後半は最終日のショーイングに向けて作品を作っていく。3日間と発表を終えて、私の踊りに対する気持ちが変化した。

コンテンポラリーダンスを習い始めた時、はじめはただ、自分の身体を感じるのがたのしかった。意識を変えると身体の感覚が変わっていく。人と踊って感じる、何かの一部であるという感覚や、文脈を離れて人(の身体)と対峙することなど、書ききれない発見があり、それまでの断片的な考えがどんどん繋がっていった。この探究は、飽き性の私が一生かけても楽しめるものだという確信を持ち始めていた。

今回のワークショップで短いフリを考えたときに、その練習風景を見た扶美代さんがある曲が似合うと言って、その曲で発表のときに踊るように言ってくださった。私も練習中にかかっていたその曲が、自分の感じる質感に合っていると感じていた。

大人になってからこのような形で人に踊りを見せたことはなかったので、自分の踊りで伝わるものがあるのだろうかと自信がなかったのが、ちゃんと自分の身体を通して伝わるものがあるとわかり、とてもうれしかった。

そして、今まではダンススクールに行っていないこと、大人になって始めたこと、誰にも師事していないこと、そういったコンプレックスから、踊りを習う立場から抜け出せず、作品を作ったり、発表することに足踏みしていたが、あんまり関係ないかもしれない、というか、そういう道を歩いてこなかった私だからこそできる表現があると思えた。

この身体を通してこの世界と繋がれる予感がした。簡単なことではないけれど、できる。やろう。

このワークショップのあと、ふらふら立ち寄った古本屋で見つけたのが上述の本だった。

それから朝晩に自分の身体と向かい合い、その日、意識して過ごすことを決め、1時間は踊り、それを日記にすることにした。

焦らずに、いま自分の出来ることをただやっていく。

【今日のからだ】
好きに動く。前半30分は力を入れて伸ばしていたことに、後半になって気がつく。だんだんと力が抜けて軽い動きがでてくる。はじめ、胸を開いた時に痛みが走って、固まっていたことに気づく。だんだんと抜けてくる。身体の周りから、内側へと緩みが広がる。

昨日寝るときに考えた、とろろこんぶのイメージワークが身体を緩めるのに効果的だった。身体を空間を広げるのに、皮それ自体にも小さい穴のようなものがいっぱいあると考えると、もっと広くなる。porousというのかな。固まったゴムを無理やり伸ばすと切れるけれど、ゴムもまた無数の孔をもつ。あたためて、ゆっくりのばすような感じ。それをとろろ昆布を割く時の質感として身体に投影すると実際に呼吸が深くなった。

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