【PERFORMANCE】テリー・ライリー/Everything and Beyond

2023年3月4日、その日は自身の出演する朗読会があり、私はこの公演に行けないと思っていた。朗読会が終わり、ふらふらと会場の周りを散歩していると、なんだか人気があってイベントをやっているらしい隣の建物を見つけた。

扉に貼られたイベントのポスターを見るとテリー・ライリーの文字。行きたかったイベントだ!(事前に場所は知らなかった)と、すぐ横でやっていたことと、当日券が出ることを知り、運良く観ることができた。

ライリーのライブは初めてだった。ライブで聴いて感じたのは、ミニマルな展開のなかに螺旋上の動きがあることだった。

横ノリ、縦ノリ、という言葉があるけれど、私にとってライリーの音楽は丸ノリだった。丸を描いていく感じで、しかもそれが運動しているから、正円の連続ではなく、ゆらゆらしながら上昇している感覚。

ステージセット 遠景



---基本的には、同じものが反復することが宇宙の在り方だと思います。同じものが反復しても違うものになるし、同じものが二つになってもちがうものになる。

またしても哲学者の河野哲也さんのインタビュー(「談 vol.126 液体のリズム、新しい始まりの絶えざる反復としての」)からの引用。ミニマルミュージックそのものではないか。

そして、ライリーの歌声を聴いたとき、声の中に空間がたっぷりとあるように感じた。身体の使い方と呼応しているのだろうか。一緒に歌われていた宮本沙羅さんの声は厚みのある板が波打っているように聞こえた。

ライリーの声は円柱、宮本さんは波打つ板のようだった

また、ピアノの音の中には少し前に踏み込む、ぬめりのある動きを感じた。ちょうどピアノのペダルを踏むような感じ。

楽器の性質だろうか。音に生き物の体温のような温度を感じた。猫を触った時のような温もりと同時に人が座ったあとの椅子に座るような少々生々しさもあった。

表現をするときに身体を管にするみたいな話を聞いたことがあるけど、精神的な話としてだけではなく、肉体的に、物理的に空洞ができている感じがした。たぶん、ぺちゃんこで空気の少ない身体からあの音は鳴らないから、たっぷりの空気を身体に通しているのではないだろうか。でもこれは想像の域を過ぎないので、いつか鎌倉で開催されているラーガのレッスンを受けて体感してみたい。

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