〔掌編小説〕プレゼント
寄ってらっしゃい観てらっしゃい。不思議なパレードの時間だよ。まるでここは夢の中。おもちゃ、珍品、金銀財宝、君が望めば手に入る。東西南北上下左右、どこもかしこも思い通りに、行きたい場所までひとっ飛び。今夜ばかりは無礼講。君の名前を持ってきて、そこに叫んでごらんなさい。それだけで全て手に入る。何もかもが君のもの。キラキラ輝く星屑も、大きな大きな満月も、全部まとめて手の中さ。
「おやおや、ひとりでどうしたんだい。みんなと一緒に遊ぼうよ。楽しいおもちゃ、あまーいお菓子、ここにはなんでもあるんだよ」
「パパとママがいない。友だちも、ひとりも」
「ふむ、そうかそうか。寂しかったね。でもね、僕が来たからにはもう大丈夫だ。君の名前は、なんていうの」
「……つちやたかし」
「おお、素敵な素敵なたかしくん、君はもう僕の友達さ」
「ほんとう?」
「もちろん本当さ!たかしくんの欲しいものは何かな」
「もっと友だちが欲しい」
「なるほどなるほど、たかしくんは友だちが欲しいんだね。僕以外にもたくさんいたら、きっとすっごく楽しいからね」
「うん」
「それでは、この穴の中に向かって大きな声で、君の名前を叫んでみよう。欲しいって想いを込めて叫ぶんだ。小さな声ではダメだよ。みんなに聞いてもらわなくちゃね。そうしたらきっと、君の友だちがすぐに現れるよ」
「わかった」
良い子だね。これで君は夢の中。ずっとずっと夢の中。今夜も明日も無礼講。終わることのない幸せを。終わることのないパレードを。
ねえ!パパ!たかしが目を覚まさないの!
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