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〔掌編小説〕駆け引き



 騙されていたのは私の方だった。他に女がいたなんて聞いてない。信じた私がバカだったのか、いや、どう考えても、騙した方が悪い。幸い、私が知ってしまったことに、相手はまだ気付いていないようだし、気付かれるまでは精一杯尽くそうと思う。毎朝とっておきのコーヒーを淹れて、朝食には相手が好きなパンを焼いて、帰宅したらお風呂を沸かして、寝る前にマッサージをしてあげるの。私が身の回りのことを隙なくこなせば、きっと相手も私を手放せないはず。その間に、私はあの女を振り向かせるの。女の好みは興信所で調べてあるし、私のことは彼女に知られてないみたい。どうやって仲良くなるか、その算段はついた。さっそく、甘くて溶けるような三角関係を始めましょう。

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