〔掌編小説〕グラヴィタス
新刊を買ったつもりがまた二冊目だった。小さく吐息を落とす。本棚には片付けずに、机の上に積んだ。同じ理由で積み重なっている本が、あと二冊。封も切られず、新入りと共に並ぶこととなった。古本屋に売りに行くか、まあ、明日は可燃ゴミの日だし、捨ててもいい。
我が家の書斎の壁一面には本、美しく整然と並んでいる本。それらを眺めているだけで幸せなのだ。なるべく小さな歩幅で、その前を歩く。多幸感をより感じられる。何一つとして内容を知らない本たちを肴に、今晩は少し上等なウイスキーを開けよう。
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