見出し画像

只の日本人、寒天を食べる

――いただきます。

草薙の目の前には、水菓子があった。

――寒天。

(綺麗だな)

草薙は思う。

水を固めたような菓子、寒天。

透き通る宝石のような菓子である。

草薙は透き通った水のようなこの見た目が好きだった。

少し濁りがある透明さ。

だが

(――それもまた良し)

寒天は日本の昔からあるものだ。

寒天の元は、海でとれるものだ。

天草である。海の天草がこのような綺麗な食べ物なるというのは一つの神秘であると思う時がある。

(やはり……良いな)

うまそうだ。

それに、草薙には今回思う所があった。

(この寒天は……)

知っている寒天だ。

草薙が知っている、よく知る所が作った寒天である。

ある神社が日本人のために作った寒天。その一つが草薙の手元にあった。

歴史あるもの。

ところてんに近いだろう。

といっても特殊な製法を使っているわけではない。

作り方はしごく単純なものだ。

(それもまた良し)

食す前に改めて、寒天を見る草薙。

綺麗な寒天だ。

食べる前に、宝石のような寒天を改めて見る。

草薙はゼリーが好きだ。

草薙は水餅が好きだ

透明な食べ物が好きなのである

そして、日本伝統の寒天も好きだ。

基本的に、寒天はゼリーや水餅ほど透明度は高くない。

だが寒天好きだ。

(日本の水菓子……)

寒天を……食べる!!

(……うまい)

口に広がる甘味。

今回は少し甘味が強い。

草薙はどちらかというと微かな透き通る甘味が好き。少し甘味が強いが――

(それもまた良し)

うまい。

酷使した体と頭に、甘味が心地よい。

水を飲む。清い冷水が体を清めていくような感覚。甘味強めの寒天に、水がよく合う。

(良いな)

実に良い。

(食べるのがもったいない)

そんな事を考えてしまう。

それほど、寒天は綺麗でおいしかったのだ。

このまま寒天を見ていたいと思う。

惜しむ気持ちを抑えつつ、草薙は透明な水菓子を口に運ぶ。

(……良い)

一口ずつ、少しずつ心身が癒されいく

ようだった。

寒天の甘味がいい。

少し固めの歯ごたえも食べやすくていい。

少し濁った透明さもいい。

肯定的にとらえる草薙。

味、食感、見た目。

それらを良しと思う

寒天という日本伝統の水菓子。

それを丁寧に作っている。

それは草薙にとって心地良かった

透明な日本の水菓子――寒天を食べる草薙悠弥。

そして

(ごちそうさまでした)

完食する草薙。

寒天はおいしかった。

(良かった)

そう思う。

改めて、寒天を作った人間の想いをくみとる草薙。

作った人間の想いが伝わるかのようだった。

日本人に幸せになってほしい。

日本人に元気になってほしい。

そんな想いが込められたかのような爽やかな水菓子だった。


///////

関連リンク

寒天を作る日本美女軍団

https://note.com/a_wind/n/n60e082cf1c43


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?