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映画レビュー「ジョジョ・ラビット」 "殺伐とした世界にも愛がある"

みんな可愛い

先日映画「ジョジョ・ラビット」を鑑賞してきた。第二次世界大戦下のドイツを描いた映画だが戦争を題材にしたとは思えないくらいコメディタッチで表現されている。この映画で描かれるナチスは非道な悪というよりも、何処にでもいるような等身大の人たちが出てくる。皆何処か間抜けで憎めないのだ。

この映画の見どころは登場人物の可愛さだと思う。主人公のジョジョはナチスとヒトラーを敬愛する10歳の少年。戦争では非情さが不可欠だから目の前のウサギを殺せと上官に命令されるも、優しい彼は殺すことを拒否。そのせいで周りからバカにされるのだが、そんな彼の純粋さが愛おしくて仕方ない。

またユダヤ人の少女エルサも可愛い。エルサは大人と子供の中間といった感じ。10歳のジョジョの子供らしさに付き合う面倒見の良さもありながらも、どことなくあどけない少女の幼さが漂う。エルサを演じるトーマサイン・マッケンジーの19歳という年齢もあるだろう。

他にもクレンツェンドルフ大尉やジョジョの友達ヨーキー、そしてヒトラーまでもが何だか愛おしく演じられている。
そしてその中でも特に印象に残ったのがアベンジャーズでもお馴染みのスカーレット・ヨハンソンだ。

セクシーだけじゃないスカーレット・ヨハンソン 

スカーレット・ヨハンソンといえばアベンジャーズのブラックウィドウが代表するようにセクシーさが売りの女優だ。しかし今回はそのイメージとは正反対。母性に溢れた母親ロージー・ベッツラーを演じている。

ジョジョに対して優しくするだけではなく時には厳しくも接している彼女は理想の母親と言える。また自分の子供だけでなくユダヤ人であるが故に迫害されているエルサのことまで匿うのも「母性」の現れだ。彼女にとっての家族とは血の繋がりのことではないのだろう。

大衆に流されず自己犠牲の精神を持って弱者を助ける彼女。フランクルの「夜と霧」に「何故生きるかを知ってる者はどのように生きるかという問いに耐える」という一説があるが正にその言葉を思い出させる高潔さがある。そんな彼女を見てると思わず「結婚するならこういうが理想だな...」と心の中で唸ってしまったくらい。それくらい彼女の演技は素晴らしい。スカーレット・ヨハンソンの新たな一面が見られるのもこの映画の魅力だろう。

殺伐とした世界にある愛おしさ

この映画の見所はそういった愛おしさが散りばめられていることだ。普通戦時下のドイツを題材にすれば殺伐としたものとなる。しかしこの映画はそうではない。たとえ血で血を洗うそんな世の中でも消えることのない愛情が確かに存在することを思い出させてくれる。

今作を担当したタイカ・ワイティティ監督はそんな演出に長けていると感じている。彼の監督した作品を全部見たわけではないが、直近の「マイティ・ソー バトルロイヤル」はそんな作品だったと覚えている。
いまいち不人気だったマイティ・ソーシリーズにコメディ要素を取り入れ一心したのが同作の特徴。王様の血統で筋肉ムキムキというソーを何だか残念だけど憎めない男として「弄った」ことで等身大なヒーローに見せたのが共感を呼んだ。そうしたコミカルなギャップを上手く作るのがタイカ・ワイティティ監督の妙だ。

どんな冷たい世の中でもどこかに温かさがある。そんなギャップを感じられる一本。最近愛情を感じてない人にこそ見てもらいたい映画だ。

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