「オッペンハイマー」上山明博
唯一の被爆国である日本での公開が危ぶまれた『オッペンハイマー』の上映が、今年ようやく実現した。
クリストファー・ノーラン監督作品『オッペンハイマー』は、カイ・バードとマーティン・シャーウィンが著した同名の伝記を原作にして、主人公ロバート・オッペンハイマーの記憶の中に入り込み、「原爆の父」と呼ばれた男の栄光と挫折、苦悩と孤独の心象風景を丹念に描いた伝記映画だ。
映画の幕が開くと同時に、映像と音楽の断片が畳みかけるように観客の心を激しく襲い、ナチス・ドイツより早く原爆を開発