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「これ、誰のセリフ?」会話シーンの書き方

今日はセリフそのものではなくて、セリフが混じる会話シーンを、どう書くかについて記事にします。
特に三人以上が登場するシーンを想定しました。

いつものように、これが正解ということではなく、私が小説を書きながら
考えていること、私はこんな風に書いていますということです。

○私の書き方

「○○は言った」「○○が言う」と書かずに、セリフを言った人物の動作を
書くことで、直前、直後のセリフが、その人物のセリフであることを示すようにしてきました。

具体的には

武志は言った。
「知らないな」

ではなく、

武志は顔をゆがめた。
「知らないな」

という書き方です。
○○は言った。○○は答えた。
と書くのが芸がないというか、幼い感じがするので、できるだけ「言った」という直接的な言葉を使わないようにしてきました。

ところが、これを徹底すると、今度はセリフを言っている人物を特定するための動作や表情などの描写に悩むことになります。

首を捻る、頷く、手を上げる、眉を寄せる・・・
ともすると、いつも「頷いている」ことになってしまいます。
(同意するという意味の日本語が少ないという問題もありますが)

こういう動作や表情のバリエーションを考えるのに時間がかかる。
同じ表現が頻出するので、それが目障りで、かえって下手に見えてしまう。
そんな悩みを持ったことはないでしょうか?

私は思うのですが、
考えるべきはそこではなく、あくまでもセリフの内容ではないかと。

むしろ、さらっと「言った」と書いておいた方が、読者がそこに引っかからないですむのでは?

もちろん、人物の動作や表情に意味がある場合は別です。
(その動作が人物の特徴や性格を示していたり、それが大事な伏線になっている場合など)

思い立って、名作やベストセラーを調べてみたのですが、意外に
「言った」「言う」あるいは「聞いた」「答えた」が出てきます。

先輩作家さんたちに
「そこは問題じゃないんだよ」
「そんなこと気にするなら、もっと内容を気にしなさい」
と言われた気がしました。

ではどう書くか?

とは言え、常に「○○は言った」と書くとうるさいです。
私が今、書いている小説で、全体のセリフシーンの2割程度で使ってみました。
(「○○は言った」を使っていいのかと思うと、とても気が楽になりましたし、実際の文章がすっきりして驚きました)

そして、それ以外に、誰が言ったのかわかるように工夫をします。

・発言者の動作や表情で示す  武志は顔をゆがめた。
・発言者のセリフの口調で示す  「そんなの嫌よ」
・発言者のセリフにある人称で示す  「俺は知らないな」
・主語をつけて示す  武志は言った。
・地の文に混ぜて示す  武志は「知らないな」と首を振った。

これらをバランス良く織り交ぜることだと思います。
(もっとあるかもしれません)

今日、言いたいのは
「○○は言った」はNG、という呪縛を捨てよう
ということです(ちょっと大げさですが)

誰のセリフかを描写で表すときは、セリフの前か後か

次はこの問題です。

 武志は顔をゆがめた。
「知らないな」

「知らないな」
 武志は顔をゆがめた。

どちらの順番で書いていますか。
後者を多用している人が多いのではないでしょうか?

作者にしてみると「知らないな」は武志の発言だとわかっているのですが、
読者にしてみたら後者の

「セリフ」
描写

だと、「知らないな」を読んでいる時に、「これは誰?」となるのです。
長いセリフだったりすると、語尾まで読んでようやく「武志だったのか」と気づいたり、下手をすると間違えたまま読み進めることもあります。
(私も読者として、そういうことがあります)

なので、セリフの前に人物を表す描写があった方が良さそうだと、あらためて気づきました。

私は原稿を読み直したら、後者(セリフの後)にする場合が結構ありました。あるいは「○○が言った」ということを書かずに、セリフだけで続けて行く場合もあります。
それが、上手いような気がするからです。

しかし、純文学なら別ですが、読者をもてなすエンタテインメントを書くのならば、読者を迷わせない、読みやすい文章を目指すべきだと思いました。
(今ごろなんですが、エンタテインメントについて書いてます)

読者が迷わない、親切な順番


 武志は顔をゆがめた。
「知らないな」


「知らないな」
 武志は顔をゆがめた。


「俺は知らないな」


「知らないな」

③、④を使うと駄目ではなく(私も使います)、読者のつもりで読んでみて「このセリフ、誰のものかわかりにくいな」と思ったら、格好つけずに
①にしようと思ったのです。

見出しの写真は、正にその部分を修正したところです。

ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
それではまた。



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