見出し画像

初めましての人間関係が難しい <小説の書き方>

先日は、一刻も早く主人公を苦境に突き落とそう、と言う趣旨の記事を書きました。

それと同時に、主人公を取り巻く主要なキャラクターを紹介し、どういう人間関係なのかを上手に説明することがとても大事だと思っています。

ところが、これが難しくて、人物紹介をするとストーリーが停滞しがちです。紹介のためのエピソードが退屈だったり、長すぎたりすると、これはなんの小説なのだろう、と思われてしまいます。

私が今、連載している『紫に還る』では、主人公カンターと数名の重要キャラの関係が大事で、これをどう書くかいろいろと工夫をしているのですが、難しいなあ、と思うことが多いのです。

これは『紫に還る』の冒頭です。いきなり事件が起こっています。主人公のカンターですら、紹介は後回しになってます。

『紫に還る 第一章 第一節』

私はストーリー展開を大事にしているので、事件を起こしながら人物の関係性は後回しで書いていくのですが、本当はもっと序盤で、キャラ同士のエピソードや、やり取りを厚くした方が良いのだろうな、と思ったりします。

実は第二節には、カンターと友人シークが、マースという不思議な力を持つ少女に会うシーンがあります。

『紫に還る 第一章 第二節』

こちらを最初に持ってくれば、カンターの日常や置かれた環境、友人たちとの関係性の説明がされるので、読者には親切かもしれません。

ただ私は【いきなり事件】が好きなので、現在の冒頭にしました。
さてどちらが良いのでしょう。

「人間関係の描き方」が上手い、と思った作品を紹介します。

note創作大賞の応募作を読んでいて、参考になるなあと思いました。

『出口はどこですか?』葉月Lエンデさん 

第一話と二話を読んだのですが、その時、次のようにコメントさせてもらいました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・【第一話】こんにちは。面白い導入でした。人物の関係性がよくわかります。何が待っているのか期待させられました。それとジントニックが美味しそうです。

【第二話】沙樹と滉大の関係性の描き方がとても良いですね。平板なありふれた表現の代わりにしている描写にセンスを感じます。「親友」ってカテゴリーに分類される程度の仲とか、不貞腐れているスマホとか、小説を随分書いていらっしゃいますね。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

小説の冒頭シーンは読者をつかむために、もっとも重要です。そこで主要なキャラクターの人間関係を的確に、スタイリッシュに書いています。しかもこの小説のテーマである【出口】も、第一話で読者の興味を惹きつけるように登場させています。

この第一話のテーマと人物紹介のバランスが良いのです。
(私は第一話に惹かれて、思わず続けて第二話を読みました。こういう気持ちにさせることが大事だと思います)

冒頭の人間関係の描き方で、同じような悩みをお持ちの方には、第一話、読んでいただきたいです。

今回も勉強になりました。私も、もっと工夫したり、試していこうと思います。


この記事が参加している募集

#創作大賞感想

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?