【香水】
幼い頃、香水というものが苦手だった。
こどもは香りに敏感だったりとか、当時の流行りの香りも関係があったのだと思うが、口の中が砂糖でじゃりじゃりしそうなくらい甘いバニラの香りや、鼻を突き刺すようなムスクの香り、お香を浴びてるみたいな白檀の香りなんかがすれ違う人からすると、とにかくそこから逃げ出したかった。
けれど、香水瓶は好きだった。
実用性よりも心をくすぐるデザイン性に特化した、香水の綺麗な色の液体が透ける、あの宝石みたいな瓶がとても欲しかった。
大きくなり、香水を自分で買うようになって、香りというものは膨大な種類があるのだということを知ったときは驚いた。
トップ・ミドル・ノートと、時間の経過によって香りがどんどん変化していく、その時間を彩る豊かさにうっとりとする。
自分が心地よい、と思える香りがあることに気がつくと、今度はそれを纏ってみたくなった。
見た目と違って香りというのは、ワンプッシュで自分の理想が叶うので、スタイリッシュでいいと思う。
なりたい香りをまとう、これもまた、魔法みたいだなと思う。
2021.03
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