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ADCC世界大会2022 岩本健汰さん前回覇者JTトーレスに肉薄も惜敗 自分のモノサシを大事にするかっこいい生き方

ADCC世界大会2022がアメリカでは大々的に、日本では格闘技ニュースになることもなく、ひっそりと開催されていました。PV数を取れないので、取材や記事が手薄になるのもわかるし、十分理解するので取り上げてくれよって話ではありません。練習相手をして頂いていた岩本健汰さんが77kg以下級に日本人唯一の出場。何の力にもなれませんが見物してきました。少しでも話題になって知られれればと何もできない無力感からくる罪悪感で記事を書かせていただきます。

日本におけるグラップリングの立ち位置が柔術にも増してニッチなところに加えて、日本人選手1人の海外開催で放送は有料放送「フローグラップリング」なので、プロモーションもされずに見たい人が見るものになっております。

今回の岩本さんはADCCに向けて、アメリカのBーTEAM(現在トップの強豪達が集まるチーム)で2ヶ月間のトレーニングキャンプを張って、ADCC本戦を迎えていました。日本国内で彼の練習環境もなければ練習相手も揃っていない状況は、20年以上格闘技業界にいる者として申し訳なく思います。僕が練習相手として機能していないのではないかと思って申し訳なく感じてました。彼の素質や才能を引っ張り、引き出していくには競争が必要と彼自身が判断しての渡米。ここまでの取り組みを日本人のグラップリング選手でしたのは僕が見てきた限り岩本さんだけです。

ケガやビザ問題などの直前での欠場選手があったものの、77kg以下級の出場選手は過去最高との声も高く、一回戦突破しただけでも快挙と言っていいトーナメントになっていました。トーナメントなので組み合わせ次第ではあるのですが、出来れば今後のキャリアを考えて大物喰いを果たすためにもできる限り相性の良い相手と当たれるトーナメント表だといいなと期待していたのですが、アジア予選を勝ち抜いての出場選手は強豪選手と当たるのが通例と言っていいほどになっているところがある上、出場選手全員が猛者な状況なので、どう転んでも強豪で一回戦突破=大物喰いだと思っていました。

トーナメント表が発表されると一回戦はJTトーレス。前回前々回の優勝者で今大会も優勝候補の一角の選手です。実力も名前も申し分ないどころか、トップの中のトップ選手です。善戦しただけでも凄いことな上、もしも勝つようなことがあったらグラップリング界の勢力図の変わる試合です。

岩本さんの更新の少ないSNSでは現地の練習での充実ぶりが窺えたし、計量時の身体の写真は別人になっていて、不利な戦ではあるけれど、もしかするともしかするかもしれないと期待感を持つには十分でした。取り組みと試合前の仕上がりで緊張感を持たせてくれる意味と価値についてはグラップリングに限らず、プロ選手全ての学びとして大事だと思います。

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ポイントが計上されない前半戦(独特のルール)でトーレスがテイクダウンの攻防を拘らなかったのをあるにせよ、最初のテイクダウンを奪ったのは岩本さんです。その後も優位には立たれるもののポイントは許さず、延長戦でも両者ノーポイントでレフリー判定での敗戦でした。試合をした本人は納得していないだろうけど、大健闘と言っていい内容だと思います。驚いた海外のファン関係者は多いと思います。

そしてトーレスの強さも伝わる試合でもありました。
競るまでは行っても決して優位な場面は譲らない試合展開は僅差ではあるけれども、この僅差は途轍もない差があるのだと感じてしまいました。この差をひっくり返すにはそれこそ想像を絶する取り組みと努めが必要になってくるのだろうし、岩本さんの取り組んでいるものの凄さを感じて、改めて敬意を感じました。バッククリンチの攻防で優位に立つトーレス、ポイントに繋がる完全なバックを許さない岩本さんの攻防は見応えのあるものでした。試合結果を知った上で見れるグラップリングの試合はなかなかありません。

グラップリングとプロレスでは競技として違うのも理解した上で格闘技側(格闘技側)からは、一緒にするなと拒否反応があったりするのも理解した上で誤解を恐れずに言うと僕が先週、鈴木みのるさんと試合をした上で感じた差と似たようなものなような気がしました。外からは良い勝負に見えてもペースを握られて常に一歩先にいかれてるような感覚を僕は思い出しました。

岩本さんの取り組みが伝わる取り組みと試合でした。良い試合だった。
2ヶ月を超える海外でのトレーニングキャンプ試合とおつかれ様でした。今は少し休んでまたやりたくなったらやればいいし、日本で練習をしてもらえるときがあれば組んで教えてもらえたら嬉しく思います。おつかれさまでした。

岩本健汰を見ていて、かっこいいと感じます。

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