見出し画像

皇治さんのバッティングを整理整頓しました。何故起こったのか。

皇治選手のバッティング(頭突き)でインターネットが荒れております。
皇治選手のキャラクター性もあってか炎上しておりまして、皇治さん=ダーティーファイター的な見方になりつつあります。皇治軍団とアンチ皇治の構造で薪をくべあっていても着火はしても鎮火はしません。話題になるのは素晴らしいことではあるのですが、皇治選手が誤解曲解されて解釈されていくのは格闘技業界を考えてよくないことだと思うのですよね。

二試合共にバッティングがあったので、熱くなるのもわからなくはないのですが、感情論で吊るしあげるのは見ていて辛いものがあります。ここは整理整頓していかないといけないと感じました。当事者も外野も入り混じって、泥やら糞やら火やらを投げ込む様は心躍るものがありますが、プロ選手であればもう少し考えてやった方がいいなとは思います。むつかしいところではありますが。梅野源治さんのツイートや白鳥大珠さんのマイクを見ると何とも言えない気持ちになります。

人々の感情でミスリードされていくのが世の中であって、インターネットだとは分かってはいますが、いてもたってもいられません。何をしたかではなく、誰がしたかなんだけどさあ。

この泥まみれなのか、糞まみれなのかわからん状況を誰か解説して整理整頓しろよ!と思っていたのですが、誰もせずに皇治選手が損する展開で何にもならんなと思ったので、ワシが拙い打撃知識で解説していきますね。ワシは皇治軍団でもないんですけどね。

何故バッティングが起こったのか。

皇治選手は近距離での打ち合いを得意とするファイタータイプです。
対する梅野選手は皇治さんと比べると中距離から遠距離を得意とする選手です。

2人の得意とする距離が異なるので、勝利を考えると自分の距離で試合を進めるのが重要。両選手ともに中距離、遠距離でも闘えても自分の距離で試合を進めるのが勝負の鉄則です。我をどれだけ押し付けるか、貫くかが格闘技の鉄則です。

ムエタイであれば近距離は梅野選手の距離。首相撲と肘膝。K-1ルールでは翼がもがれる。

ムエタイであれば近距離は首相撲があって肘膝もあります。首相撲があるので頭を下げて入って行くことはムエタイではほとんど見られません。捕まえられて膝か肘で終了です。よってムエタイでバッティングが起こることはボクシング、キックボクシング、MMAに比べて格段に少ないはずです。

梅野選手は首相撲と肘膝が得意な選手ですが、K-1ルールに代表される組無肘無の場合は武器を失った状態です。RIZINキックルールも組無肘無なので梅野選手の苦手な距離が明確に近距離となるのです。近距離の梅野選手は翼をもがれた状態と見ると分かりやすいのではないでしょうか。

勝負師皇治は近距離で勝負を賭ける。

梅野選手の活きる距離を徹底的に潰す為に前に出て勝負を賭ける。
これが勝負師皇治の考えた作戦だと感じました。彼は賢い選手です。
自分の強みと弱みをよくわかっています。自分でよくわかっているからこそ、最初から一気に攻勢を仕掛けました。その作戦は的中して梅野選手を下がらせて圧を掛けていました。

セオリーであれば梅野選手は皇治選手を捌いて、攻撃を与えていきたいところですが、最初の皇治選手に体力がある段階では捌いて下がらせるところまでは行けません。だからこそバッティングは残念だし、その先の勝負が見たかったのは正直あります。皇治選手の根性が見たかったです。

前に出て圧を掛けた皇治選手の頭が梅野選手に当たる。梅野選手が踏み込んできていたら皇治さんがケガをするので、故意ではないですよ。

バッティングは当たりどころ次第では逆転します。互いにケガをする場合もあります。グラップリングやMMAでは互いにタックルのタイミングが合ってしまうと事故に繋がります。バッティングはどちらもケガをするリスクがあるので。皇治選手が故意にやったとするのは無理があります。皇治選手は気持ちのいい人ですし、故意にやる人間ではない上にバッティングを故意にする理由が見つかりません。

皇治選手が思っていた以上に策が功を奏して、一気呵成に勝負を賭けたのでアクシデントが起こったのではないかなと僕は見ています。バッティングをしたのは悪いけれどもどこまで糾弾されるほどの話でもないと僕は思います。

近距離で圧する。皇治選手の作戦を遂行するには度胸と体力が必要。皇治選手はそれを作り上げてきた。

皇治選手の近距離で圧しきる作戦は度胸と体力が必須です。
まずは度胸です。相手の懐に飛び込むのですから、当然被弾するリスクを抱えて飛び込みます。梅野選手の膝や蹴りを被弾することを覚悟して勝負を賭けています。

自分事として考えてみてほしいのです。相手の攻撃を貰う覚悟で相手の中に踏み込むことを。
選手をしている僕はよくわかります。グラップラーとして相手に組みつきに行く際の恐怖と覚悟を決めて飛び込むとき。肝が冷える感覚を感じます。

打撃競技で組みに逃げられない状況で飛び込んでいるのだからどれだけの覚悟か。

自分から飛び込んでファイトするのは体力のロスが物凄く大きい。
僕にムエタイを教えてくれたナムサックノーイ(伝説的なムエタイ選手)がファイトすると体力のロスが大きいから、テクニックでいなして闘えとよく言っていました。皇治選手のファイトスタイルは体力のロスが大きいはずです。パンチを振って、空振りも厭わずに前に出ていくのだから、3Rやり切るのは相当な体力と覚悟が必要です。

とてもじゃないけれど、やろうと思わないです。
MMAですがテクニックで試合を組み立てる僕からすると想像を絶するところです。

皇治選手は今回作り上げてきていたのですよね。
試合1週間前にお話伺ったときに『過去一練習した』と仰っていた意味が繋がりました。このタフな試合を2試合やり抜く為に彼はとてつもない努力をしてきたのだろう。

頭が当たってしまうのはファイターではよくあること。

バッティングは珍しい話でもなくよくあることです。
ファイターならば尚更のことだし、頭をつけて打ち合う泥臭いスタイルならば余計に増えます。皆が一度落ち着けばちゃんちゃんって話なのですけどね。

まあ落ち着けであります。選手も関係者もファンも色々言いたいのはわかるけど、前に進む為に言ったほうがいいですよねって思いました。

皇治さんの生き方が凝縮していたと思うのです。

彼の試合に向けた取り組みと試合での度胸。
結果的には彼が納得するものにはならなかったですが、彼の生き方が僕には伝わりました。
彼が支持される理由は『必死さ』だと思うし、飛び抜けた身体的素質があるわけでもない彼が那須川天心と向かい合って、武尊と向かい合って、自分の可能性を使い切っていく姿に人は胸を打たれるのでしょう。

今回も風呂敷広げて、皇治ありきに大会を作り上げて、下馬評で厳しい中でも必死で勝ちをもぎ取ろうと最大限の取り組みをする姿勢に僕は学びを得ました。自分の取り組みを練り上げていかねばだし、自分の可能性を使いきって死にたいと強く思いました。

傷だらけになっても 泥だらけになっても
おまえは俺たちのスーパースター 

那須川天心や武尊のようなスターではない。
でも皇治はスターだと思った。彼にしかできない。
彼にはまだやることがある。

格闘技を見て自分の人生に繋げられるか。

格闘技を見て自分の人生に繋げられるのか。
格闘技を見てワーワーと言って、それで終わったらそれはそこでおしまい。
ワシが格闘技を社会の役に立つものだと信じているのは、選手の取り組みが自分の人生に学びをくれるから。皇治さんの試合を見てワーワー騒いでいるだけだったらそれでおしまい。

生きてると失敗のほうが多いじゃないですか。上手くいかないことが大半。
怖くて一歩が出ないことが多いじゃないですか。チャンスを掴みにいけないのが大半。

先が見えなくても出来る精一杯の取り組みで、勇気を持って前に出ていく。
怖いけれども被弾覚悟で前に出て勝負していきましょうか。手がダメだったら頭を使えばいい。それでも開かなくとも全力でぶち当れば何かが残る。皇治さんの試合を見てそんな当たり前のことを思いました。

必死で真摯に取り組む。皇治さんの必死さがただただ心に残りました。
格闘技っていいもんです。いつも学びをくれるから。


ここから先は

11字

¥ 500

サポートありがとうございます。選手活動、表現活動の活動費用に当てさせていただきます。更なる良いもの、面白いものを創作する原資に大事に大事に感謝を込めて使わせて頂きます。