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本と映画のこと

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記事一覧

循環構造と多自然主義

上妻さん、能作さん(兄)、川島さんによる対談。

http://10plus1.jp/monthly/2019/10/issue-01.php(前編)
http://10plus1.jp/monthly/2019/10/issue-02.php(後編)

上妻さんの、人間中心主義に立った人間ー自然の二項対立の発想や、同じ人間の中でも先進国ー途上国という構図で一方的な他方への介入を正義とする認識の危

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ショートカット、あるいはシンプリファイ

the incidents ー複雑なタイトルをここにー, Virgil Abloh

 ファッションブランド "off-white" を手がけ、nikeやイケアなどの世界的な企業ともコラボレーションを行う著者のハーヴァード大学での講義をまとめた書籍

 本のタイトルや装幀、スライドからプレゼンの仕方まで一貫してシンプルで飾らず気負わず、大胆にストレートな表現がなされている。それは冒頭で述ヴァージル

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手続きに則った言葉

数学の言葉で世界を見たらー父から娘に送る数学, 大栗博司

 カリフォルニア工科大学で物理学教授を務める作者が奥深い数学の世界について、これから中学校へ進む娘に向けて手紙を書くように綴られた本
冒頭でカジノで勝ち続けることはできるのかという身近な話題(多くの人が一度は考えたことがあるはずだ)について確率の計算を基に論理的に解説して読者の興味を惹き、その後も事例や逸話を交えながら数学が私たちの生活に

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気だるい生、緩慢な死

気だるい生、緩慢な死

 この世界の片隅に 戦争中の広島と呉で一人の少女・すずが成長していくなかでの心の変化やそこに投影される時代の空気が表現された映画。すずがいつもぼんやりしているからか、狼のような毛深い男に攫われてしまったり、米軍の爆撃が画用紙に滲む絵の具のように表現されたりと、現実と自分の中だけの世界とが入り混じって描かれている。どこかこれは夢物語で、すずや水原さんはこの世界に実在してなかったんじゃないかと思ったり

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村上春樹の作品を読むという行為について

村上春樹の作品を読むという行為について

 僕は村上春樹の書く本がとても好きなのだけれど、彼の書く小説やエッセイや散文について深読みしたり、社会性を持った解釈を与えるようないわゆる解説本は全然読まない。読みたいとも思わない。だから彼の思想や作品の社会における位置づけやその重さについてはあまり良く知らない。人並みの理解しかない。けど、なんで学者とか芸術家とかの知識人が村上春樹について語るものに興味が持てないのか。ちょっと考えてみたのだけど、

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