見出し画像

本当に無人島 前編

それはとある企業の広報誌で連載の撮影をしていた時の事だ。 

なんでも今回は自然に関する特集記事で、インドネシアに行くから一緒に来てくれと言う。ちょうどいつもの海外ロケの隙間だったし、アジアは普段のロケでは行かないから興味もあったので同行するよと返事をさして色々と話を聞いてみたところ、撮影地は首都ジャカルタと、自然遺産ウジュンクロンのプチャン島だという。

ウジュンクロン?プチャン島?僕はアジアに疎いとはいえ、全く聞いたことがない。。それが逆に若干気持ちを上げている事に気づく。

インドネシアはジャカルタや都市部以外のほとんどの地域でマラリアの感染リスクがある。まあここも間違いなくそういう地域だろう、乾期で蚊は少ないとはいえ予防薬を飲んで行くことになる。
調べてみるとやはりそうで、ウジュンクロンは美しい海に浮かぶだけあってなかなかワイルドな場所にある。ここにたどり着くためには小さい船で何時間もかけて行くらしいし、滞在施設はミニマムのようだ。

今回の取材チーム、実は普段国内でタレントのインタビュー記事などを一緒にやっているチームで、海外撮影の経験者がいない。いつもの僕のチームのロケだと散々鍛え上げた飛車角がついているのだが、、
まあ、これもまた一興。楽しんで行く事にしよう。初心者チームにありがちな先走りと頑張りすぎをしないように、みんなの安全が第一なのだ。帰国後すぐに、いつもの仕事で地球をぐるっと回るロケも待っているし。

まあ、悠々と、である。

そしてさらに何度かの打ち合わせを行い、一応の準備は整え飛行機は新鮮な気持ちを乗せて成田を飛び立った。

アジアというと近いイメージがあるが、実は地域としては最も広かったりする。近い、は日本人の感覚でしかないのだ。

さて、そこそこ長い8時間弱のフライトを経て、一向はジャカルタに到着。メンバーは若いディレクターの男の子、彼は僕のメインパートナーだ。それとライターの女性、と僕。現地でロケコーディネーターの日本人女性と日本語ペラペラのインドネシア人女性のアシスタントに合流した。

むわっとする空気と匂いに迎えられ、また海外に来たなあと思う、毎回思うのはこの印象はその国をよく表しているという事だ。

ジャカルタの街に入ってとても印象的だったのは、舗装もされていない泥道に雑然と密集したバナナ市場と、ゴミで埋め尽くされた悪臭をはなつ川、その背景にそびえ立つ高層ビル郡。
貧富の差をそのまま絵に描いたような、なんとも言えない辛さを感じるコントラストのついた風景だった。

画像4

画像3

どんなにきらびやかに発展した部分があっても、一方でまだゴミをちゃんと捨てることすら出来ない部分もある。
政治が悪いと聞かされたが、、水ではなくゴミで埋め尽くされた川を見て人類はこれを当たり前に出来てしまうほど成熟されていないのか、と愕然としてしまった。

ともあれ、そんな感慨に耽りながら仕事も淡々と進めていくのだ。ジャカルタでの撮影は街のスナップ、屋台の食べ物と宮廷料理だ、
屋台は見慣れた物だったが、宮廷料理の方はまた変わっていて、20人ほどの民族衣装を来た女性が一人一品お皿に料理を乗せてぞろぞろと長い列を作って持ってくるというものだ、なんとも酔狂な絵面である。「なんか、素直に喜べないなあ」
これを誌面で紹介してなんて書くんだろうとちょっと心配になった。前時代的にしか見えない。

画像3

画像4

また屋台はビジュアル的に普通だが、そこで売っている物を食べるのはなかなか勇気がいる。氷は絶対食べるなと言われているし、アメーバ赤痢だのコレラだの心配事には事欠かないらしい。うーむ。
まあ、そんな事ばかり言っていてもしょうがないし、実際そこで大勢の人が食べている。大都会ジャカルタなら大丈夫だろう、味がわからなくては撮影もへったくれもない、と変な理由をつけて食べてみた。もちろん氷は遠慮させてもらったが、

やはり、日本で食べる外国料理はとても良く日本人の口に合わせてあるなあ、、

さて、街中での取材も順調にこなし本命の世界遺産ウジュンクロン、プチャン島に出発のはこびとなった。ジャカルタ郊外の船着場から出航だと言うのでガタゴトと3時間ほど車で移動し、揺すられてボーッとなった脳みそと共に現場に到着、

到着?

着いた場所は桟橋もないヘドロが溜まったゴミだらけの海、、臭い、汚い。どこに船が来るのこれ?
よく見ると少し沖のほうに傾きそうなポンポン船が浮いているのが見える。

「まさかねえ、」

そのまさかである。今からこの汚いドブのような海をじゃぶじゃぶと歩いて進み、あの宇宙船希望号に乗り込むと言うのだ。寒気で一気に目が覚めた。

船には現地ガイドと思しきスタッフが3人ほど乗り込んでいて、その中の一人がザブザブと海をこちらに歩いてきたと思ったらウチの女性ライターをおんぶして希望号まで連れて行った。。。

「本当にあれで、行くわけね、、」

ちなみに希望号というのはこの絶望的な状況で、少しでも先に明るい未来があることを希望して僕が勝手に頭の中でつけた名前だ。

グダグタいっていてもしょうがないので、みなザブザブとドブのような海を希望に向かってあるいていった。

さて、船も行く場所も目的もあるw  なんせ出港だ!

船に乗ること4時間、の予定がもっとかかったと思う、その間体が吹っ飛ばされそうなほど船は波頭との格闘を続ける、まさに修業のような航海。しかも何故かエンジンルームに溜まった水をバケツでかき出しながら船を無理やり進めていく。

「それ、いつもやってるの?」

荷物のように体を丸めじっと耐える、耐え難きを耐える、かくしてみんな無事に綺麗な海に浮かぶ島の前にたどり着いた。船はもともとあんまり好きじゃないのだが今回も辛かったなあ、しかし毎回乗るのは船でしか出会えない風景があるからだ。

エメラルドグリーンの海の色が心を洗う。

そして今回は同時にあのドブみたいになっていた海だって元はこんな色をしていたんだろうなあと胸が痛む。

島は浅瀬に囲まれているのでまたしても大きな桟橋はない、どうやって上陸するんだろうと思っていたが、程なくして島の方から鉛筆を縦に二つに割いて中を削ったようなカヌーがやってきた。横に体重をかけたら2.3回まわってってしまいそうな、、ほっそい、漫画みたいな乗り物である。

画像5

「まさかねぇ」

そのまさかなのである。船だと島につけられないからこれに乗れと言う、、
「スーツケースとかもあんだけど、、カメラもあるんすけど、、」

その日本語は空に漂い消えていった。

しかもそのままこのカヌーでマングローブ茂るジャングルの川の中に探検に出かける事になった。乗ったり降りたりを繰り返す方が大変なのだ。

画像7

画像6

僕は最新鋭のカメラを首からぶら下げ、その鉛筆号の先端に乗り込み、当たり前のように起きている出来事を、瞬時に当たり前の様に感じる事ができる自分の順応性に誇りを感じた(笑)
カメラをぶら下げてれば、だいたい何とかなるのである。
いやしかし、本当にいつひっくり返ってもおかしくないぞこれ。。

不安ながらもなんとかその鉛筆にのって撮影をこなし無事島へ上陸、島での滞在がはじまったのである。


後編に続く。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?