メタバースと新しい働き方・学び方
(画像はMeta社のBlogより引用)
皆さんは、会社で席の後ろに人が立って、じっと様子を見守られながら仕事をしたいでしょうか? わたしは嫌です。しかし、オンラインになった途端に、それに似た状況を求める動きが出てきます。他人の目がないとサボったり不正を行うのではないか、というわけです。
この記事にあるように、対話がより重要になってくるというのはその通りですが、リモートワークやオンライン講義などオンラインツールを活用した働き方・学び方が急速に導入され、「働くとはこういうことだ」「学ぶとはこうあるべきだ」という価値観のぶつかりあいもあるなか、様々な混乱も生じています。
たとえばoViceのような俯瞰型のヴァーチャル空間サービスを、オフィスとして使おうという取り組みもありますが、以下の記事のように集中できるパーソナルスペースとパブリックスペースをうまく分けないと監視されている感は出てくるでしょう。
SlackとZoomだけでは、コミュニケーションの「サイロ化」が起こるという声もあります。特定の相手を指定して対話しながら作業を進めることで、仕事は効率的に行えるものの、例えば新人・新入生がそのワークフローの中になかなか馴染めなかったり、偶発的なコミュニケーションによるアイディアの創出の機会が減ってしまっているのではないかというわけです。サイロ化を防ぎ、創発をどうリモートで生み出すかが目下の課題と言えるでしょう。
VR空間でのコミュニケーションは実用段階に入りつつある
新人・新入生へのオリエンテーション・トレーニングや、偶発的な対話を生むために、たしかに俯瞰型のヴァーチャル空間は一定の役割を果たせそうではあります。わたしの勤める大学でも、まだスマートフォンしか持っていないような学生でも参加出来るように、ブラウザで動作するoViceを用いて交流会がもたれました。
ただしこちらの記事にあるように、全員が参加することは叶わなかったようです。対応デバイスのハードルは低いものの、そもそもこういったヴァーチャル空間でコミュニケーションを行う経験がなければ、積極的に参加する動機は持ちにくいはずです。
実はわたしも所属学会の大会後の懇親会で、こういったツールを用いたことがありますが、対面での集まりのような「ワイガヤ」は生まれないなというのが実感でした(オーガナイザーが巡回して交流を促しても、どうしてもリアル空間で仲が良い/知った顔同士で集まりがち)。操作して会話に加わる、しかもいざ会話となるとZoomのようなテレビ会議的なものになるというのがどうにも偶発性・創造性にはつながりにくいわけです。少なくとも私はこれを用いて仕事をしようとは思いません。
やはり現状ベストな形は、Metaが実用化を進めている Horizon Workrooms のようなVR空間でのコミュニケーションなのだと思います。
VRゴーグルさえあれば、目線やしぐさ、立体音響、ホワイトボードなど、リアル空間と同じようなコミュニケーションを取ることが既にできるようになっています。(アバターによりそれらが最適化されることによって、リアル空間以上の効果があるかも知れません)Metaが用意するゴーグルは一般的な低価格スマートフォンと同じくらいの価格(128GBモデルで37,180円)でパソコンも不要ですから、実のところ導入コストも高くありません。N高など一部教育機関でも導入が始まっており、これから投資を行うのであれば積極的に検討すべき選択肢ではないかと考えています。
働き方・学び方を根本から見直す時期に
リモートでの新しい働き方、学び方を模索する動きが続く中、これまで当たり前だった、しかし必ずしも生産性が高いとは言えなかったやり方を変えられる契機が訪れています。アニメ、ゲーム、VTuberなどヴァーチャルな世界観、キャラクターの創造に長け、利用への心理的ハードルも低い日本ではこれを有効に活用できるのではないでしょうか?
もちろん、Horizon Workroomsのようなヴァーチャル空間が全てを解決するものではありません。あらゆるシーンで実用のレベルに達するにはもう少し時間が掛かると思われますし、従来のSlackやZoomのようなツールとの組み合わせで、働く・学ぶ環境のコミュニケーションを構築・設計していく必要はあります。
そして、冒頭で挙げた「監視」がなければ評価が出来ないような働き方・学び方も改めていくべきでしょう。教室や職場であくせく手を動かしたり、大きな声で話し合ったりしていることが成果ではなく、あくまでもアウトプット、アウトカムで評価すべきで、そうであれば監視やそのコストは本来必要ないものだからです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?