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オンライン化する支援に欠かせないプラットフォーム

(ヘッダー画像は、人吉球磨ガイドホームページより引用)

『夏目友人帳』の舞台にも甚大な被害

令和2年7月豪雨で被災された皆様に謹んでお見舞い申し上げます。被害があまりにも甚大で広範囲に及んだためか、報道で取り上げられる機会がとても少ないのですが、コンテンツの領域でも『夏目友人帳』の物語上の舞台の1つである人吉市の天狗橋をはじめ、多くの文化資源が被害を受けました。

これまでなら全国からボランティアも現地入りして、復旧にあたるところです。その際には、作品のファンも恐らく大勢訪れることになり、復旧だけでなく状況が改善した際の宿泊や観光など経済面での貢献も生じたはずです。ところが新型コロナウィルス(COVID-19)感染問題があるなか、そういった実際に現地を訪れての支援が難しくなっています。当面は、寄付などの間接的な支援が中心にならざるをえない状況です。

都内では熊本県のアンテナショップで名産品を買い求める動きも出てきていますが、これも仮にまた外出自粛が求められる状況になれば勢いを削がれることになるでしょう。やはり、通販やクラウドファンディングなどオンラインでの支援に重点を移していく必要があります。

コンテンツへの「愛」を具体的な支援につなげるために

オンラインでの「支援」について、よく指摘されるのが単なる言及や「いいね!」だけでは結局のところ支援にはなかなかつながらないという点です。被災地の窮状を訴える投稿に、いくら「いいね!」がたくさんついても、タイムラインに登場する頻度は増えるかも知れませんが、現場には何も支援が届いていないということが起こりえます。

筆者は代表を務めるNPOでは昨年の京都アニメーション放火事件の被害者支援のために、クラウドファンディングを実施し、最後発であったにも関わらず500万円を超える支援金をお届けすることができました。各所で募金活動も行われたのですが、1つこだわったのが支援とともにメッセージと届けるということでした。自らが愛するコンテンツやその舞台が大きな被害に遭ったとき、お金と共に言葉を届けたいというファンの思いを強く感じたからです。

これからも日本では毎年のように大きな災害が起こると予想されています。治療薬やワクチンの開発・普及の時間を考えると新型コロナウィルス(COVID-19)の影響も少なくとも数年間は続いてしまうはずです。オンラインでいかに支援を募り、届けていくことができるかは、これからも重要な課題となっていくと考えています。

その際、平時に多くの人に愛されていたコンテンツ(これはアニメに限らずとも、様々な地域資源が当てはまります)が核となり、オンライン上で支援をしたい人々と支援を求める人々・地域を強く結び続けることになります。そこで重要になるのは、これまでは地域とファンを結びつけるコミュニケーションはリアルな場で行われていたところが、オンライン=バーチャルコミュニティにシフトさせる必要があるという点です。

筆者がアニメ評論家の藤津亮太氏と運営するYouTube対談番組「アニメの門DUO」でコンテンツツーリズムの第一人者である山村高淑教授(北海道大学)はこのバーチャルな場を、「プラットフォーム」とも表現されていました。

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この支援者(ファン)と地域の人々が集うプラットフォーム=バーチャルな場はオンラインにおける信頼関係の構築に欠かせません。しかしそこに地域の単なる情報ばかりが紹介され、当事者たる地域の人々が存在していなければ、ファンが求めるコミュニケーションが生まれないのです。クラウドファンディングの成功のためには、支援を募る人がそこで頻繁にメッセージを発信し、支援者からの問い合わせに答えていくかが鍵を握ります。それと同様に、これからの地域はいかにバーチャルな場で対話を生みだしていくかが問われていると言えます。

この信頼関係の構築の基盤の1つにコンテンツは大いに貢献します。作品を愛していることは、その地域やその地に暮らす人々への支援につながります。また作品という文脈を共有することは、都市部と地方/若者と高齢者といったコミュニケーションのギャップを埋めることにも役立ちます。コンテンツが持つ物語性に着目し、そこに当事者が存在し、コミュニケーションを行うような場=プラットフォームの構築が、これからの復興や地方創生の鍵を握るはずです。

※この記事は日経媒体で配信するニュースをキュレーションするCOMEMOキーオピニオンリーダー(KOL)契約のもと寄稿しており日経各誌の記事も紹介します。詳しくはこちらをご参照ください。





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