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🅂5 金利のない時代

「A little dough」 第5章 貯蓄と投資 🅂5 金利のない時代

 前回は怠惰な方にこそお勧めな、継続的な貯蓄を可能にする「SMarTプログラム」について記載しました。現在のところ昇給タイミングに応じて積立額を増加できるような積立貯蓄の仕組みは見当たりませんが、多少手間ながら私のように年に一度、財形貯蓄の積立額を変更することでおおよそ実践できますので、興味のある方はぜひトライし頂きたいと思います。怠惰な方なら、きっと止められなくなります^^;。

「人類最大の発明」とは…
 
ある意味そのくらいの緩い意識の中でも、私たちの認知バイアスを逆手に取れば定期的・継続的な「貯蓄習慣」という強力なファイナンシャル・プランのサポート・ツールを手に入れることができます。逆にいうと、そのくらい私たちの認知バイアスは強いということにもなりますが…。
 ところでこの貯蓄習慣を仮に自動車のエンジンに例えるなら、これを最大限活かすターボ・チャージャーのような存在が「複利」です。金融について学び始めると必ずこの「複利」という言葉に遭遇しますが、これはアインシュタインをして「人類最大の発明」と呼ばせるほどの強力な増幅効果を持っています。
 「単利」は一定期間の利息は次の期間の元本に参入せず、継続期間中の元金は同額となりますが、一方「複利」はこの一定期間の利息を次の期間の元本に参入していきます。結果的に過去の利息に新たな利息が積算されるため、大きな差が出てきます。例えば1%の金利で元金を2倍にするのに「単利」では100年かかりますが、複利であれば72年と28年ほど短縮できます。金利が5%であれば20年が14.4年ほどになり、同じように3割弱ほど目標までの期間が短縮されることになります。
 また元本100万円を年利4%で40年間運用した場合(税金考慮せず)のグラフが下表となります。当初の10年は地味な動きですが、20年目くらいから乖離幅が拡大し、40年経ったときの金額は、単利の2.5倍に対し複利では4.5倍まで増加します。

年利4%複利・単利の比較

しかしこの複利を味方にするためには、「貯蓄習慣」よって得た元本の他に一定水準の「金利」と充分な「時間」が必要となります。
 「金利」はとても重要ですが、昨今は「金利のない時代」といわれており、さすがにこの20年間はターボ・チャージャーに例えた「複利」もあまり機能していません。とはいえ、私たちがコントロールできるものでもないため、「運は天にあり」と泰然自若で臨むほかありません。もっとも低金利はインフレを起こすための政策とも考えられるので、このデフレの20年間、貨幣価値は目減りしていないことになります。金利パワーだけを考えると上記のような効果がありますが、本来は「物価上昇率を考慮した実質金利パワーを考えるべき」という視点に立てば、さほど悲観しなくても良いのです。
 一方「時間」については、私たちのコントロールで可能な限り長くする必要があります。「SMarTプログラム」の例で示したように「惰性や無意識」によって捻出される長期的な「時間」がベストですが、何事もそう上手くいくとは限りませんので、「3つの財布」の発想で考えることになります。教育資金なら15年~20年、車の購入資金なら10年、老後の資金なら30年~50年といった具合です。
 一定の金利水準が見込める環境では、こうした時間を上手くコントロールすることで、複利によって強力な増幅効果をとることも可能になってきます。もちろん「時間」コントロールがそうそう容易いものではないことは先に記載した通りですし、金利も現段階では低い環境が続いていますが、何れにせよ「貯蓄習慣」は動かし続ける必要があります。それはタブン、私たちの近い将来に、遅かれ早かれまとまったお金を必要とする時がくるからです。

もう一つの方法として…
 
現在の日本で私たちができることは、貯蓄習慣と複利を上手く使うことを前提に、やがて正常化するであろう金利の上昇を待つというのが基本スタンスになります。とはいえ、さすがに超低金利時代ではあります。こうした経済的な環境を上手くカバーする手立てとして、あるいはもう少し広角に捉え資金の一部を積極的に社会に還元していくという視点から、「投資」という選択肢を検討することも自然な流れだと思います。


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