🅂２ 自然体で生活する…

「A little dough」 第４章　支出して生活する　🅂２

　前回は社会人としての生活の始まりを、食事のバランスなどを意識した健康管理重視の自然体で臨んでみることをおすすめしました。C2C3で記載したことをいったん忘れてとまでは言いませんが、やってみなければわからないことも数多くあります。初めて一人で親元を離れて暮らす方は特にそうでしょう。入社して２年くらいはとにかく収支のバランスを保ち、ボーナスを上手く利用する、それでダメなら実践している「自然体」そのものにやや無理があるということになります。自分の収入の現実をしっかり受け入れて、支出を見直すほかありません。この時期は、欲しいものと収入のギャップが大きいので、いくつかのことは我慢することになります。ただそれは誰もが同じです。「他人と比べるな」とは言いませんが、一番よさそうな方と比べて「自分は足りない」と嘆いても始まりません。

➤ゆっくりと成長していることを実感する
　さて、私が記載しているようなパーソナル・ファイナンス系の文章には、一読後に「よしっ、さぁ始めよう！」的なノリのものもありますが、私自身はまったくそういう意図を持っていません。私がこのnoteに書こうとしていることは、きっとすべてを読み終えても（まだ途半ばですが）、一時的なモチベーションの上昇にはあまり効果がないと思っています。
　以前第３章の「やりがいと楽しさ」のところで記載しましたが、理解するということには、少なくとも二つの次元があると思います。「まずは頭で論理を理解する、そして実践し体感として理解する」というものです。二つ目でぜひ「腹落ち」したい、というわけです。実際は更に多くの経験を重ねることで、少しづつ本質に近づいていくのかもしれません。であれば、そうした本質へのやや長い旅のお伴をする、というあたりを私は目指しています。

　例えば第２章で記載したライフ・デザインは、学生時代に一度考えてみて、それから１・２年ごとに振り返り更新してみる、といったことをお勧めしました。またそうして定期的に考える時間を持ち、試行錯誤を繰り返すことで少しづつ形になっていくものではないかと思っています。それにライフデザインそのものは、何歳になっても価値観の変化に応じて変わり続けるものです。
　ファイナンシャル・プランについては一度全体像を理解したら、実際に作成するのは早くても社会人になって２・３年目というところでしょうか。まず社会人としての生活が、家計を含めてどんなものかわからないことにはどうにもならないと思います。２年間くらいのざっくりとした収支明細ができて、やっと未来を予測できるようになります。もちろん当初予測は外れますが、これも毎年実績を更新していくことで少しづつ精度が上がっていきます。これはメタ認知によるモニタリング活動そのものですから、自分自身の自制力がどう働いているか理解が深まるにつれて、精度も上がっていくように思います。
　社会人生活を２～３年過ごすとある程度実体験がすすみ、「なるほど考えていたこととは違うものだ」という部分がおぼろげに見えてきますが、そうした気づきが成長につながっていくわけです。そして私が目指しているのはそういう「腹落ち」的な理解をサポートすることです。

　「第4章まできて何を今更？」という感じもしますが、これから支出と生活について記載していく前に少し補足しておきたかった、というのが本音です。生活における支出は、私たちの楽しみでもあるわけですが、それだけに支出判断において頻発する認知エラーや自制心の欠如、更には私たちが知らない間にはまり込んでいる相対的欠如といった問題にどう対処していくべきかが問われることになります。こうした課題は、私たち自身がメタ認知力を高め、少しづつ成長することで解決していくほかありません。したがって、「ゆっくりと成長し人生を楽しむ」くらいののんきな緩さが必要です。支出をコントロールすることは「何とかここで頑張ったら習得できる」という類のものではなく、「気が付いたらある程度身についている」というものです。しかもどこまでいっても完璧ではなく、「ある程度」というレベルでしかありません。この辺りは肝に銘じておく必要があると思いいます。

➤成長実感の繰り返しを楽しむ
　さて実際に自然体で生活してみて「収入の範囲内で支出が収まり日々ささやかながら楽しくやっている」という状態であれば、それは経済的に自立した生活の第１歩としては上々の滑り出しといえるでしょう。また、自然体でやってるつもりだが、ぎりぎりで全く余裕がないといった状況が続いているのであれば、固定費や交際費などを見直し、改善を図る必要があるかもしれません。「必要性」のプライオリティーに立ち返り、多少緩くてもまずはトントンの状態にもっていくこと、そしてその生活を安定させ継続すること、これが最優先です。予想と違うからといって一気に生活を変えようとしないこと、今の生活を少しづつ改善させることが楽しみになるように、ゆっくり着実な成長を感じてほしいと思います。
　一方で、これから私たちを悩ませる支出の課題に備えるために、前述した認知エラーや自制心の問題、そして相対的欠如によって引き起こされる地位財の獲得競争といった課題について、次節以降で確認していきます。