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第5章 貯蓄と投資

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「A Little Dough」はこれから社会人になる人、あるいはこれからのライフデザインを考えている人達の参考になるような「パーソナル・ファイナンスの考え方」について記載してい…
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🅂1 貯蓄と投資について

「A little dough」 第5章(Chapter5)貯蓄と投資について <🅂1(Section1)貯蓄と投資について>  これまで、私たちが行う意思決定には「認知バイアス」などが原因となる非合理的判断が多発していることを確認してきました。またこうした判断が、結果的に「後悔してしまう」支出と深く関係していることも事実のようです。第5章では私たちのファイナンシャル・プランに組み込まれた「貯蓄と投資」という経済行為を扱いますが、これらもまた人間が行う意思決定とはあまり相性

🅂14 リターンを決めるリスク許容度

「A little dough」 第5章 貯蓄と投資 🅂14ポートフォリオ理論(2)  前節では、マーコウィッツのポートフォリオ理論のうち、リスクが分散投資によって軽減される仕組みについて記載しました。「相関係数」が「+1」から「-1」に近づくほどリスクが軽減されていく様子が、下のグラフから読み取れると思います。 ➤ポートフォリオABのパフォーマンスは  前節で例示したA・B2銘柄の構成比を単純に50%にしたポートフォリオの結果は下表の通りです。「期待リターン12.5%、

🅂13 リスクを下げる相性💛とは…

「A little dough」 第5章 貯蓄と投資 🅂13 ポートフォリオ理論(1)  さて、ポートフォリオ理論(MPT:Modern Portfolio Theory)に進む前に、本章🅂7で記載したリスクとリターンの関係について、もう一度確認をしておきたいと思います。 ➤「トレードオフ」を正しく理解する  株式市場におけるリスクには様々なものがありますが、リスクの潜在的な変化や顕在化は多くの場合「価格変動」に繋がります。言い換えると株式には「価格変動リスク」があり、そ

🅂12 アノマリーと一万円札

「A little dough」 第5章 貯蓄と投資 🅂12 アノマリーと一万円札  現実の株式市場を、効率的市場仮説(EMH)とアノマリーだけで説明するのは難しいかもしれませんが、アバウトな私の脳の中ではほぼそうした構成になっています。大きく捉えればマーケットは概ね効率的に動いているように見え、また一方で生まれては直ぐに消えてしまうアノマリーやバブルのように破壊的な威力を持つアノマリーの存在も現実に実感できるからです。 ➤効率的市場に棲むアノマリーの価値  EMHは、株

🅂11 アノマリーが生まれる訳(2)

「A little dough」 第5章 貯蓄と投資 🅂11 アノマリーが生まれる訳(2)  前節では下図のようなランダムウォークをみた時の私たちの反応について記載しました。単なるランダムウォークの曲線に「価格と年月という背景」を加えたことで、私たちはストーリーを作り未来を予測しようと想像力を働かせます。 ➤日常的に起きている錯視  さてここで第1章に戻るようですが、日常的な錯視についてもう一度振り返ります。下図Aをご覧ください。これは紙に書かれたバイオリンを弾く人の絵で

🅂10 アノマリーが生まれる訳(1)

「A little dough」 第5章 貯蓄と投資 🅂10 アノマリーが生まれる訳(1)  前節で記載したバフェットの話は、田淵直哉氏によるものですが、氏の著作は金融の難しい話を分かり易く書かれていて、とても助かっています。そのためか、あるいは「それでも」と書くのが正しいのかわかりませんが、私は何度も読み返しています。私の場合いいと感じた本は何度も繰り返し読んでしまう習癖があるようです(笑)。因みに一番回数を読んだ本はサンテグジュペリの「星の王子様」で、次はたぶんハインラ

🅂9 グレアム=ドット村のサル

「A little dough」 第5章 貯蓄と投資 🅂9 グレアム=ドット村のサル  「パリの孤独な天才」ルイ・バシュリエの「ランダム・ウォークの発見」は、やがてユージン・ファーマの「効率的市場仮説(EMH)」に繋がり、現在多くの人が認める株式市場の理論的な基礎となっています。一方で、現実のマーケットの動きの中に身を投じると、仮説では説明しきれないことが度々起こっていることに気が付きます。 ➤「グレアム=ドット村のサル」  「効率的市場仮説」には一定の妥当性があると思い

🅂8 一万円札は落ちていない

「A little dough」 第5章 貯蓄と投資 🅂8 一万円札は落ちていない  前節では株式市場における価格変動を受け入れることでリスクプレミアムを獲得できる可能性について記載しました。散々マーケットを「海」に例えたにもかかわらず節操がないのですが、今回は「路上に一万円札は落ちていない」という例えからです。これには明白な理由があり、一万円札には多くの人が認める価値があるため、仮に誰かが落としても直ぐに別の誰かが拾ってしまうためです。これを「路上の効率性」と呼ぶかどうか

🅂7 価格変動を受け入れる

「A little dough」 第5章 貯蓄と投資 🅂7 価格変動を受け入れる  前節では、私たちが安全資産と呼ぶものであっても、多かれ少なかれリスクテイクしているということを記載しました。そもそもこの世界、未来が不確定であることを前提にすればリスクだらけなのです。そのリスクをどう捉えるかで、お金に限らずお米・トイレットペーパー・ガソリンなど凡そ全ての「ものの価格」が変動しています。そうした中で金融機関が一定期間の確定利回りを約束するのは、こうしたリスクの殆どを引き受ける

🅂6 安全資産のリスクとは

「A little dough」 第5章 貯蓄と投資 🅂6 安全資産のリスクとは  一般に貯蓄と様々な投資の大きな違いは「リスク」の度合いにあるといわれています。しかし安全資産といわれる貯蓄(銀行預金)といっても私たちはその殆どを「円」という通貨で行いますから、私たちの意識がどうあれ通貨自体が持つ様々なリスクはついて回ることになります。  ロシアのウクライナ侵攻後、米国ではインフレ→金利高→ドル高が基調となり、結果「円」は大幅に下落し私たちの貯蓄はドル換算では驚くほど目減り

🅂5 金利のない時代

「A little dough」 第5章 貯蓄と投資 🅂5 金利のない時代  前回は怠惰な方にこそお勧めな、継続的な貯蓄を可能にする「SMarTプログラム」について記載しました。現在のところ昇給タイミングに応じて積立額を増加できるような積立貯蓄の仕組みは見当たりませんが、多少手間ながら私のように年に一度、財形貯蓄の積立額を変更することでおおよそ実践できますので、興味のある方はぜひトライし頂きたいと思います。怠惰な方なら、きっと止められなくなります^^;。 ➤「人類最大の発

🅂4 怠惰こそ継続への道

「A little dough」 第5章 貯蓄と投資 🅂3 怠惰こそ継続への道  前回は人間の認知特性を逆手に取る「ナッジ」について記載しましたが、その提唱者であるリチャード・セイラーは401K プランの推進を目的として、下記の「SMarTプログラム」を開発しました。 ➤「SMarTプログラム」(Save More Tomorrow)  ナッジを活用した「SMarTプログラム」は、リチャード・セイラーとその同僚だったシュロモ・ベナルチによって開発されました。このネーミング

🅂3 逆手に取る

「A little dough」 第5章 貯蓄と投資 🅂3 逆手に取る  貯蓄にしても投資にしても、それは「現在の消費を後に回す」ということに繋がります。これは現在を優先する報酬系回路のしくみに従順な「楽しいことは今、嫌なことは後回し」という私たちのビヘイビアと真っ向から対立します。前節では、ファイナンシャル・プランの視点から貯蓄や投資には中長期的な視点が必要であることを記載しました。一方で実践的な貯蓄や投資を考える上でも、複利効果や株式市場の成長といった大きなメリットをし

🅂2 貯蓄が増加するとき…

「A little dough」 第5章 貯蓄と投資 🅂2 貯蓄が増加するとき  仕事に就き毎月の給与からの積立貯蓄などを始めることができれば、当面は経済的自立に向けて一歩づつ進んでいくことになります。しかし、20歳代の日々はやりたいことに出費が嵩むだけでなく、友人の結婚式といった予定外のイベントも重なり、思うように貯蓄が進まないことも予想されます。  バブル華やかなりし頃、友人の結婚式が2回3回と続くことから、メンクラを捲りながら「J.PRESS」の黒に蝶タイ・カマ―・ス