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映画評:『のぼる小寺さん』

原作で珈琲さんが表現していたもの、その本質を、ちゃんと掬いとり、そのうえで、気持ちの良い、後味のよい青春映画に仕上げていた。元モーニング娘の工藤遥さん、プライベートで残念な出来事があった伊藤健太郎さん。主演の2人の演技も良かった。競技シーンのほぼ全部を自分で演じた工藤遥さんはボルダリング初心者とは思えない特訓の成果を披露している。伊藤健太郎さんの卓球シーンも誤魔化しはほぼなかった。控えめなサウンドトラックで淡々と静かに展開していく本編は、日常と言っても差し支えないほどさりげなく、この世界、この夏、この青春時代に、永遠に浸っていたいと思わせられる。そしてひたすらのぼる小寺さんに触発され、映画のメインキャストたちと同じように、自分も頑張って行こうという気持ちになっていく。
珈琲さんの原作は、競技スポーツの社会的意義、その本質の全てを表現し尽くした名作だと私は思っている。いわゆる原作厨としてこの映画を観たけれど、大変満足している。四条くんは原作ではもっとかっこいい男です。あと、彼が小寺さんに告白するシーンは、映画ではカットされていたけれど、原作の中でも最高のエピソードなので、映画しか知らない人は、そのシーンを読む為にだけでも、原作読む価値あります。

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