見出し画像

クリエイターがぶつかる「具体と抽象」の5つの壁

前回の記事で、「具体と抽象の概念を意識することが増えてきた」と書きましたが、今回はそれをテーマに記事を書くことにします。

細谷功さんの「具体と抽象」で紹介されている内容を私自身の体験に沿って解説しています。
詳しく理解したい方はぜひ書籍を読んでみてください。

仕事をする上で、多くの人はこの「具体と抽象」の構造を掴むことができず、苦労した経験があるのでは無いでしょうか。
私自身の体験を振り返っても、とくに社会人経験が浅いときは、上司からフィードバックを受けても「フィードバックの内容の意図」が掴めず、霧の中にいるような気持ちになりました。
コミュニケーションを図っても、話がどうも噛み合わない。そんな経験があるひとのヒントになればと思います。

ぶつかる壁を「具体と抽象」の観点から解説

私の経験から、クリエイターがぶつかる壁を5つピックアップしてみました。
記事を読む方にとっても、経験があることが多いのでは無いかと思います。

problem 1. ユーザーテストのフィードバックをそのまま反映してしまう問題
problem 2. ファシリテーターなのに話をまとめることができない問題
problem 3. 上司のフィードバックの意味が理解できない問題
problem 4. 経営者の方針がコロコロ変わる問題
problem 5. ビジネス書を読んでも参考にできない問題

problem 1. ユーザーテストのフィードバックをそのまま反映してしまう問題

サービスの改善を行う時、「ユーザーの声」は欠かせません。
実際にプロダクトを触ってもらい、5人に対してテストすると80%の問題が拾えると言われています。

さて、ユーザーテストを「具体と抽象」の観点から考えてみます。
プロダクトを触ったユーザーからは、次のように「具体的(表層的)なレイヤーの課題」が出てきます。

- 押して欲しいボタンに気づいてもらえなかった。
- 文章の意味が伝わっていなかった。

このような課題が出たからといって、馬鹿正直に「ボタンを大きくする」「その箇所の文言を差し替える」改善案は、最適解では無い場合が多いでしょう。
ユーザーがプロダクトを触ることで出てきた課題は、「具体レベル」の課題であり、その上位には「本質的な課題」が隠れている場合があるためです。
具体的な課題に一つ一つ対応していては、「このページも、、この要素も、、、」と場当たり的な改善になってしまうため、のちのち整合性が取れなくなってしまいます。

デザイナーは、「具体レベルの課題から、抽象レベルの本質的な課題を抽出し、解決するためのアイデア」を出すことが役割であることを意識することが必要です。

デザインには、この抽象と具体を表現する概念図があります。

画像1

課題を解決するにはレイヤー別のアプローチがあります。
「ボタンに気づいてもらえなかった課題」は、個別具体で対応すべき「表層デザイン」の課題なのか、それとも「サイト構造」で解決すべきか、レイヤーを意識して最適解を導く必要があります。

problem 2. ファシリテーターなのに話をまとめることができない問題 

プロジェクトメンバーが集まって議論すると、「この人が進行してくれると良い議論ができる」と感じることがあると思います。
逆に、まとめ役がいないと議論が着地しないまま、議論が擦り合わないまま終わったりします。

テーマが具体的であれば話しやすいですが、抽象的なテーマの場では、受け取る人によって好きなように解釈できるため、このような状態になります。

- 話している粒度がバラバラ
- 議論のレイヤーが違ってまとまらない


上手なファシリーテーターは、参加者が見ているレイヤーを掴むのが上手く、自分自身がレイヤーを合わせることができるし、意見を拾って参加者の目線を合わせることができます。

- 意見の対立ではなく、話しているレイヤーが違うだけ
- AさんもBさんも言っていることは同じで、視座が違うだけ


参加者の状態を瞬時に掴み、レイヤーを合わせるために誘導してくれるため、建設的な議論に発展していきます。

problem 3. 上司のフィードバックの意味が理解できない問題

書籍では、上司と部下の会話が噛み合わないシーンが紹介されています。

上司「「開発仕様書をレビューする」って、これは目的かな?」
部下「そのつもりなんですが・・・」
上司「それはあくまでも手段じゃないの?」
部下「だって、開発部長がそろう今度の会議では、それが目的じゃなかったんですが?」

内容は違えど、このようなやりとりは私自身何度も経験があります。皆さんもきっと経験ありますよね。

このようなシーンに出会ったとき、相手を「話が噛み合わない頭の硬い人」と片付けてしまうのは乱暴です。

ここでは、「レビューすること」自身が目的だと考える部下に対して、たとえば「投資の意思決定をするため」とさらに上位目的で考える上司はそれが単なる手段の一つにすぎないととらえます。

仕事の中での役割が変わると、自ずと普段見ているレイヤーが変わってきます。また、具体と抽象は相対的な関係のため、常に上位のレイヤーが存在することを知っているだけで、何を求められているのかが掴みやすくなります。

problem 4. 経営者の方針がコロコロ変わる問題

「社長の言うことがコロコロ変わるので振り回される」と言うのもあるあるだと思います。
社員からすれば、「先週と言ってることが違う・・」と感じるシーンがあります。

これは社長の話がコロコロ変わっているのではなくて、話を聞いている側に問題がある場合が多いのです。

具体レベルでしか相手の言うことを捉えていないと、少しでも言うことが変わっただけで「心変わり」と捉えてしまいます。
(略)
しかし実際は「心変わり」ではなく、その上司の方針が一貫していることによって起こっている可能性があります。

経営には、いわゆる「ビジョン、ミッション、バリュー」などの抽象的な方針が定められており、それを達成することこそが経営層の役割になります。
抽象レイヤーの目標を達成するために、具体施策が状況によって変わるのは不自然なことではありません。社員は具体的な施策の執行者になるため、「振り回される」と感じることがあるかもしれませんが、むしろ抽象的なレイヤーで理解していれば、自ら施策アイデアを出すことも容易になるでしょう。

problem 5. ビジネス書を読んでも参考にできない問題

仕事に行き詰まった時、解決のヒントになればと思い書籍や記事を探します。
当たり前ですが、自分の個別具体的な状況にぴったりと会う解決方法が記載されていることはほとんどありません。
書籍に書かれている内容から、エッセンスを抜き出し、自分の状況に置き換えて読み替えることで道筋が見つかったりします。

私自身、もっと具体的な答えが欲しい!と思うことが多々ありましたが、レイヤーを意識することが増えてからは、書籍を読んだときの捉え方が変化してきたと感じます。

抽象的なテーマに応えられるクリエイターになりたい

書籍には「抽象概念は、受け取る人によって好きなように解釈できる」とありました。
個人の創造力がモノを言う領域なだけに、抽象レイヤーで考えられる人でないと、本質的な課題を解決に導くようなアイデアが出てきません。

「おおよその仕事とは、”抽象から具体”への変換作業であり、その上流・下流によって抽象レベルが異なる」

画像2

新人のうちは、もちろん具体レイヤーの役割を任せられることが多いと思います。
経験を経て、徐々に抽象的なレイヤーから物事を捉えられるようになると、次はさらに上位の概念があることに気がつきます。

クリエイターはサービスやプロダクトを創ることが仕事なので、具体的なレイヤーをないがしろにしては元も子もありません。具体を大切にしながら、出発することができる抽象レイヤーとの距離を広げるほど、面白い仕事に出会うことができるのかなと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?