Butterを音楽的に分析してみたい
はじめに
どうもこんにちは、明石です。すごく大層なタイトルをつけてしまったけど、音楽に関して専門的な勉強はしたことのないただのしがない音楽好きです。
BTSがついにカムバしましたね。Film outをリリースしたりロッテコンに出ていたりしたので彼らの姿を見ることは多々あったのですが、やっぱりカムバとなると喜びもひとしおです。
それでリリースされたのがButterなのですが、これを聴いてあまりにも衝撃を受けたので、記憶が鮮やかなうちにその衝撃を言語化しておきたいと思って筆を執ったしたいです。
先述の通り私は音楽の専門家ではないので、素人Armyがなんかほざいてるな〜くらいの気持ちで読んでいただけると幸いです。
Butterの第一印象
Butterです。ジャケットが公開されたとき、ジャケットがポップな感じだから音楽自体もDynamiteみたいにポップ路線なのかな〜と考えていました。
ところがしかし、いざ聴いてみるとこれはマイケルジャクソンじゃないか。
もちろんマイケルジャクソンってポップスの名曲も本当にたくさん残しているのですが、私にとってマイケル=ブラックミュージックというイメージがとても強いのです。
何が言いたいかって、私はButterを聴いて「これはポップというよりブラックミュージックを意識してるな」と強く感じたのです。
ティーザーから
しかし実はフルバージョンを聴いてそう思ったわけではなくて、先日公開されたティーザーを観て既にこう思ったんですよね。
そのティーザーがこちらです。フルバージョンのインストの一部なんですけど、音数が少ないこと、ゴリゴリにビートを刻んでいること、ベースラインがうねっていることがすごく印象に残りました。
マイケルジャクソンで例えるならSmooth CriminalやBillie Jeanのイントロと通ずるものがあると思うし、それ以外だとQueenのAnother One Bites the Dustにも似ているなぁと思いました。
↑ Smooth Criminal
↑ Billie Jean
↑ Another One Bites the Dust
こんな感じです。Butterはこれらのブラックミュージックを絶対意識して作ったと思うし、ブラックミュージック=マイケルジャクソンという方程式は全世界にあると思うんですよね。マイケルジャクソンやジャクソン5は世界にブラックミュージックを広めるのに大きな貢献をしたので。
だから、BTSはブラックミュージック全開のButterを世に出すことによって、我々はマイケルジャクソンと肩を並べるほどのポップスターだということを世間に伝えたかったのではないでしょうか。
もちろん彼らはものすごく謙虚だし、どんな状況においても高みを目指しているので、こういう考え方をしているかどうかは分からないんですけど、ティーザーというごく短い動画でインストのこの部分を使っていることに、「マイケルジャクソンというポップスターを彷彿とさせるような新曲を出す」と決意表明をしているように思えたのです。
フルバージョンを聴いて
フルバージョン公開前、ティーザーを観て音楽を少し聴いてこんなことを考えた次第なのですが、いざフルバージョンを聴いたらまた違う発見もありました。
序破急をめちゃくちゃ意識してるな!というのがフルを聴いた後に脳内で発した言葉です。
序破急とは元々能とか日本舞踊で使われている概念なんですけど、今は物語や音楽の構成を考える際に使われることが多いです。
そんな序破急を私はどう認識しているかというと、「序」は物事の始まりや提示部、「破」は序を打ち破って展開をつける場面、「急」はクライマックスから締めの盛り上がりどころと考えています。
この認識に基づいて、Butterについて分析をします。
フルバージョン 「序」
「序」、つまり提示部にあたるのはもちろんAメロです。最初に挙げた音源だと、0:00〜0:21の部分です。
この部分の特徴は、とにかく音数が少ないこと、ビートが目立つということです。
イントロから歌い出し(0:00~0:12)までは、ドラムとボーカルしか無いんですよ。イントロに一瞬時計の針の音みたいな効果音はありますが、それ以外の音は入っていません。
ボーカルが変わると同時にベースのリフも入ってきます(0:13~0:21)。これによって音数が増えたとはいえ、Aメロの時点で曲を構成しているのはドラム、ボーカル、ベースのリフという3種類がメインです。
しかもこの3種類、どれも音が詰まってないんですよね。ドラムは拍子に合わせて四つ打ちをするだけに留まっているし、ボーカルはメロディーを構成するすべての音に歌詞を載せているわけではないし、ベースもドラムの拍子に合わせてリフを弾いているので、聴いた時に音数が少ないなと思うわけです。
そして、この3種類の中でリズムを刻んでいるのがドラム、ベースの2種類です。いわゆるポップスってシンセの音が入っていたり歌詞が詰まってたりすることが多いから、ドラムとかベースなどのリズム隊を注意深く聴くことってあんまりないと思うんですよね。でも曲の構成要素の3分の2をリズム隊が占めていて、ボーカルも控えめなButterのAメロにおいては、否が応でもリズム隊に耳が引き寄せられてしまう。それによってビートが目立つという印象が与えられると考えました。
「序」とは提示部ですが、ストリーミング全盛期の現代において、心血を注いで作った曲を飛ばさずに最後まで聴いてもらうには、この提示部でいかにリスナーの耳を掴むかが大事になっていきます。
そして、音数が少なくてビートが目立つ曲って、耳をグッと掴んでくるんですよね。
先ほど「ポップスはシンセの音が多くて歌詞が詰まっている」と述べましたが、それは言い換えると音数が多いということです。ポップミュージックという音数の多い音楽が大部分を占める現代では、音数が少ないことがリスナーに新鮮な驚きをもたらします。その驚きや耳なじみのない音数への好奇心が、「もっとこの曲を聴いてみよう」という心情につながるわけです。
そして、「四つ打ち」のビートが目立つということもリスナーの耳を掴むのに一役買っています。
四つ打ちって元々ダンスミュージックやクラブミュージックのリズムなんですって。そのリズムが耳に飛び込んできたら、踊りたくなるじゃないですか。踊りたくなるまではいかずとも、思わず手とか足でリズムを取ってしまうと思います。そのリズムを取ることの気持ちよさも「もっとこの曲を聴いていたい」という感覚に結びつくと考えました。
つまり、ButterのAメロはリスナーの耳を掴むことをすごく意識していて、もっとこの曲を聴きたいと思わせるための仕掛けをたくさん組み込んでいるというわけですね。これ以上ないほどの「序」なのではないでしょうか。
次のパートはそんな「序」を打ち破って新たな展開をつけるという使命を担わされているわけですが、どのように展開されていくのでしょうか。
フルバージョン 「破」
「破」はBメロですね。音源の0:22~0:30を聴き直してみましょう。
一気に音、高くなってませんか?
ドラムとベースという低音リズム隊&低いトーンのメロディで構成されていたのがAメロでしたが、Bメロはかなり違った構成になっています。
具体的には、メロディの音が高くなっていて、伴奏に高音のシンセや高くて柔らかい音を出すウッドブロック的なものが追加されています。
メロディの音が高くなるに伴って、Aメロでは使われていなかった裏声が登場します。これも耳に新鮮味を与えています。
また、ハモリがなかったAメロと対照的に、Bメロは1つのパートに二つ声が乗っています。メインの歌声が真ん中の方から聞こえていて、それとは別に左斜め後ろからも声が聞こえてきますよね。
このように、伴奏の楽器が増えること、全体的にハイトーンになること、ボーカルのハモリが増えることなどによって、Aメロの流れはいい意味で裏切られ、新たな展開が訪れるわけです。
Bメロは時間にしてわずか7秒という本当に短いパートなのですが、伴奏にもボーカルにも新たな変化をつけることで、7秒をそれ以上だと錯覚するほどの聴き応えを提供していると感じました。
そんなBメロの最後には、音程を駆け上がるように歌われる"woo〜”とビルドアップ(シュ〜〜っていうアレ)が入っています。これがサビという「急」への助走のように機能し、サビの盛り上がりを引き立ててくれます。
そんなサビはどういう構成になっているのでしょうか。
フルバージョン 「急」
来ました、サビです。0:31~0:48の部分ですね。
耳馴染みが良い!!耳馴染みがsmooth like butter🧈
いかんせん専門家ではないので、サビの耳馴染みの良さを音楽的に解説できないことがめちゃくちゃもどかしいのですが、AメロやBメロより耳に残るメロディですよね。多分耳馴染みのいいコード進行とかメロディ進行みたいなものがあるんでしょう。
サビのメロディの中にも上昇型の音形があって、到達点でもっと高いメロディが待っているの、すごくワクワクしますね。
そして、伴奏もすごくメロディアス!
Bメロから仲間入りしたシンセが大活躍していて、伴奏の中で主役級の働きをしています。綺麗に裏メロを奏でていますね。
このシンセの音がちょっとシャリッとしているから、Bメロよりもっと軽快になっています。
裏メロの主旋律?の上でもう少し高音を弾いているシンセもちょこちょこ登場しています。この高音域が追加されることで、サビの爆発感が増幅されている気がします。
また、ベースの旋律もAメロやBメロとは違うものになっています。ものすごく音が詰まっているし、Aメロとかに比べて旋律のうねりが増している感じがします。たまに裏メロをアレンジした旋律なんかも弾いていて、それが伴奏全体のいいアクセントになっていますね。
こんな愉快な伴奏とともに耳馴染みのいいサビが歌われ、その極めつけが”Get it,let it roll”というフレーズ!
ここ、ほんっとうに耳に残りますよね。ティーザーの最後で聴いてからず〜〜っと頭から離れなくて、ずっと口ずさんでいます。
上昇する音形だからとかtで押韻しているからっていうのももちろんあると思うんですけど、ここの何が耳に残るかって、今までの四つ打ちが崩れている点だと思うんですよね。
Aメロ、Bメロ、サビで旋律や楽器が目まぐるしく変わっている中で、唯一変わっていなかったのがドラムの四つ打ちです。そこがリズムの肝ですから。
でも、サビの最後の最後になってその肝が崩れているのです!こうやって崩れることが耳にとっての驚きとなり、その驚きがあまりにも鮮やかなのでこのフレーズが耳にこびりついたのかなぁと思いました。ティーザーでも四つ打ちをビシビシ鳴らしていて、それの締めとしてこのフレーズが出てきていましたからね。
すごい「急」だと思います。Bメロという「破」の盛り上がりを受けてなだれこむようにサビが展開して、最後の最後には新しいリズムが出てきて我々リスナーをあっと驚かせる。これは何回も聴いちゃいますよね。
「序」´
激烈な勢いとリズムのどんでん返しで終わったサビの余韻に浸る間もなく、2番のAメロが始まります。(0:48~1:05)
1番のサビという「急」から一気に音数が減り、2番の「序」を担当するのがこの部分です。
でも1番のAメロと比較するとその差は歴然としています。なので便宜上ここは「序」´(序ダッシュ)としておきましょう。
この部分が1番と違うのは、音数とボーカルの多さとメロディ運びです。
サビより音数が減ったとはいえ、1番のAメロと比べると音はとても多いし、1番Aメロでは途中参加だったベースが最初から出てきています。これによって音楽全体に芯が通り、提示部とはいえはっきりとした強固なサウンドに仕上がっています。
また、Aメロの後半ではタンバリンや音階を奏でる打楽器みたいなものも登場しています。タンバリンもシャラシャラした音なので、1番と比べるとものすごく軽やかですよね。
Aメロの後半ではそれ以外の装飾音もものすごくたくさん出てきています。いつも鳴っているわけではないけど、たまに鳴ってアクセントになっている音が列挙しきれないほどたくさんあるなぁと思いました。インストを聴くとこういった音の面白さに気づくので、どんな装飾音があるか気になった方はぜひインストも聴いてみてください。
ボーカルの多さというのは、ハモリが増えたということです。1番では登場していなかったハモリが、2番ではAメロのしょっぱなから出てきています。高音域のハモリなので華やかさが増しますね。
ボーカルや伴奏楽器が増えたことで1番より賑やかで楽しげになっていますが、変則的なメロディ運び(0:55)があることで、賑やかさや楽しさだけに留まらない驚きももたらされています。
ここ、メロディ運びが変則的なだけではなくて、それまで賑々しく鳴っていた伴奏が一旦全部ストップするんですよね。それも耳への驚きを増す要素になっていると思います。あと、途中まで鳴っていたハモリがラストでは消えているところも印象的です。
2番Aメロ、これ以外にも耳が驚くポイントがたくさんあります。
まずは変則的なメロディ運びの直後に出てくる乾杯音のような効果音です。乾杯の音って音楽の中で聴くことあまり無いじゃないですか。だからかなり意表をつかれるし、この音が印象的に耳に飛び込んできます。
それにこの部分は伴奏もないので、小さいながらもこの音がかなり目立つんですよね。そして結構高いトーンなので、次に登場するタンバリンが違和感なく溶け込めるように作用しているとも感じました。
次の驚きポイントは、声の加工です。1:02の"I got ya"の部分で、声がラジオの音声のように加工されています。
ここに至るまでにこんなにがっつりした声の加工が出てこなかったので、たったワンフレーズといえどもいきなり加工された声が出てくるのは結構印象に残ります。
そして、ここでも一旦伴奏が止まるんですよね。それによって加工された声がダイレクトに耳に届き、耳や脳内に鮮烈な驚きを与えていると感じました。
「破」´
賑やかで様々な展開が織り込まれているのが2番の「序」に当たる部分でしたが、それを受けてBメロという「破」がどう広がるかというと、正直1番とそんなに変わりはありません。
音源だと1:06~1:14の部分です。1番と聴き比べてみると、あんまり違いがないのがわかると思います。
Aメロは1番と2番でかなり毛色が違ったけど、Bメロはどちらもわりと同じ感じです。メロディ運びは1番と全く同じだし、伴奏はタンバリンとウッドブロックが追加されているだけです。
それでも、1番と全く同じではないんですよね。はっきりわかる印象的な違いが二つあると思いました。
まずは、終始ハモリが鳴っているという点です。Aメロでは前半部にしか登場していなかったハモリが、Bメロだとフル出場しています。そして、Aメロの時と同じように、ここのハモリも高音域ですね。華やかで明るい印象を感じます。
もう一つの違いは、サビ前に全ての伴奏が止まるという点です。サビ前は1番も2番も”Do the boogie like”というフレーズなのですが、1番ではこの裏でスネアが一発鳴っていたにも関わらず、2番では完全に無音です。
1番もここで音数がぐっと減ってサビに向かうタメのようなものが作られているのですが、2番は完全に無音な分、1番と比べてタメが深いような気がしました。そうすることで、サビという「急」の爆発力を高めています。
「急」´
やってきました2番のサビ!1:15~1:32の部分ですが、ここもキラキラしていて明るいですね。相変わらず耳馴染みがいいし、伴奏楽器も一気に増えるので、聴いていてとても楽しいです。
でも正直、ここに1番との違いは無い気がします。1番と同じように耳馴染みのいいサビとメロディアスな伴奏で耳を掴んで、2番のクライマックスを鮮やかに彩り、キャッチーなフレーズでビシッと締める。
そして、ラップパートや大サビに繋がる間奏へと突入します。
間奏
1:32~1:49の部分ですが、めちゃくちゃ印象的ですよねこの間奏。サックスのようなブリブリした音を出すシンセが主旋律を担っています。音がきらびやかで明るいし、旋律自体のアクセントとして高音が鳴っているので、キラキラ感や明るさが増幅されています。
そして、曲内の殺し文句である”Get it, let it roll”というフレーズが差し込まれ、キャッチーさに磨きがかかっています。さらに、このフレーズを受けて主旋律がトーンアップします!トーンアップするとともにシンセの音質も少し変わり、ブリブリ感よりキラキラ感が強い音になっていきます。
トーンアップすることで間奏全体がさらに明るく盛り上がるとともに、来たるラップパートを盛り上げるための階段のような役割も果たされています。
キャッチーなフレーズ→トーンアップする主旋律の応酬が聴いててとても楽しく、どんどんテンションが上がりました。
その後は長めのビルドアップが加わります。これによってテンションが最高潮まで達したところで、ラップの登場です!
ラップ
このラップ、めちゃくちゃ聴きやすい!というのがこの部分(1:50~2:04)の第一印象です。
BTSのラップ、というか世間一般的にいうラップってもっと音が詰まっていて、早口で流れるように歌われるものが多いですよね。でもこのラップに関しては音数が少ないし、ラップにしてはゆっくりしたテンポで歌われています。これが聴きやすさの理由かなと思いました。
そんな特徴があるから、この部分って結構ポップスに近い感じで聴くことができるんですよ。BTSの他の曲ってメロディーパートとラップパートがもっとはっきり分かれていて、メロディのないラップパートって正直あんまり耳に残らないことが多いんですけど、ButterのラップはCメロのような感覚で聴くことができて、他のパートと同じくらい耳に残ります。
ベースがかなりメロディアスなリフを弾いていて、途中から加わるシンセも音階がはっきりしたメロディを奏でているので、ラップパートと言えどもメロディがついているように感じました。これもラップパートを馴染ませるための工夫の一つだと思います。
そして、このパートをもっと印象付けているのがコールアンドレスポンスです!早くライブ行ってコールアンドレスポンスしたい、と強く強く思いました。
コールアンドレスポンスが入ることで一気に曲への親しみが増すし、そのフレーズがキャッチーになりますよね。だから、いつもはメインメロディに埋もれがちなラップパートにとても親しみを感じられます。
そして、ラップパートにC&Rが入っていることの何が素敵かって、ラップの中にファンが介入できることなんですよ。
一般的にラップパートはラッパーの独壇場だし、BTSに関してもメインメロディではなくラップパートで深いメッセージとか自分の主張を吐き出しているから、ファンはそれの聞き役に徹するわけですよね。だから、ラップパートってラッパー以外は足を踏み入れない場所という印象がかなり強くあります。
それにもかかわらずラップパートにC&Rを入れてくれたおかげで、今まで不可侵領域だと思っていたラップパートに我々ARMYが足を踏み入れることができるようになったのです。BTSってデビュー当時から今までラップをすごく大事にしてきたから、C&Rを使ってある種神聖とも言える領域にARMYを招待してくれたことが、いちARMYとしてものすごく嬉しいです。
あと、C&Rではない掛け声がたくさん入ってるのも賑やかで素敵ですよね。この曲ってApple Musicによると「サマーアンセム」らしいんですけど、掛け声が入ることによって夏の賑やかさや解放的な楽しさが表現されている気がしました。
解放的でただ楽しんでいるような掛け声を聞くことで、心が夏のビーチサイドに連れて行かれる気がします。早く夏が来てほしいし、ビーチサイドとかプールサイドでこの曲を聴きたいです。
あと、伴奏もそれまでより装飾的ですよね。カウベルが登場していたり、今まででよりキラキラした音のシンセが鳴っていたり、ベースの音が丸く跳ねているものに変わっていたりすることで、この部分がよりポップで明るくて軽やかなものになっている気がします。
大サビ
え、ブラックミュージックどこいった??というのが正直な感想です。
1番、2番、ラップを駆け抜けた先に、スーパーキャッチーで底抜けに明るい音楽が待っていました。2:04~2:24の部分です。
この部分を強烈に印象付けているのが、”Let's go”というフレーズとともに鳴り響くタムロールですね。ドラムが音程下げながらダカダカダカってするアレです。
タムロールが出てくるの、ここが初めてですよね。今まで上昇系の音を使ってサビ前を盛り上げていたし、このタムロールの直前にも上昇系のかなり目立つ音形が出てきます。そんな感じで上昇系の音に耳が慣れていたにもかかわらず、大サビっていう曲の終盤かつ一番印象的な部分に行く直前に下降系の音が出てくると、どんでん返しを食らったような驚きを感じます。
そして、ラップが終わってここに行くまでの一瞬でぐっと音が減っているから、次に来る音への注目度は100%なわけです。そうやって万全の準備を敷いた上でいつもと違う音形が出てくるとよりびっくりするし、来たる大サビがどんなものになるかというワクワク感も増します。
次に惹かれるのが、要所要所に出てくるコーラスです。
woo〜みたいなのがあったり、リフレイン的なものがあったり、形態は様々ですが、とにかくコーラスが多い!コーラスも今まで出てこなかったから、大サビで満を辞して登場することで、よりビビッドに聞こえます。
そして、コーラスがあることで一体感がさらに増します。コーラスがあるとそこに合わせて歌いたくなりますよね。ラップパートに出てきたC&Rでリスナーとの一体感を作り上げていたけど、ここでコーラスが入ることでその一体感がより強くなっています。そしてコーラス自体が高音域で鳴っているので、一体感が醸成されつつテンションも上がっていきます。
テンションが上がったところでトドメのラップ!ここは大サビの一体感をそのまま保つように、先のラップよりC&Rが多めです。しかもレスポンス部の語末がerで統一されているので、レスポンスしていてものすごく口馴染みが良くて気持ちいいです。そしてコール部が一拍、レスポンス部も一拍なので、ここのC&Rはとてもさくさくテンポよく進んでいきます。これも気持ちよさの一因なのでは。
あとここ、メロディ部に比べて装飾音が増えています。ブランコのように上昇、下降の音形を繰り返すシンセが出てきたり、裏メロを奏でるギターやサックスのような何かが出てきたり、歌詞の切れ目でウッドブロックが鳴ったり、とにかく装飾音が多くて耳がとても楽しいです。
楽器以外に、声という装飾もふんだんに使用されています。前のラップで出てきたイェーイという掛け声がそのまま引き継がれており、曲全体の賑やかさを高めています。この掛け声、破裂的で賑やかに聞こえますよね。この破裂感や賑やかさが、世界の多くの国で喜びを表すときに「イェーイ」という言葉が使われている理由だと思っています。
楽器や声など、使える限りの音をふんだんに使って我々のテンションを最高潮まで高めてから、”Hotter Sweeter Cooler Butter”という最高に気持ちのいいライムが削られ、殺し文句の”Get it, let it go”で鮮やかに幕が引かれます。
今までtで韻が踏まれていたのに、ラストにいきなりerの押韻が続くのがとても面白くて、ここを狂ったように歌っています。そして比較級のerとButterのerを同じライムの中に混ぜ込むの、めちゃくちゃセンス良くないですか?最初に歌詞を見た時、「そうやって押韻するのか!」と度肝を抜かれました。
おわりに
微に入り細を穿ちながらButterを観察してきたわけなのですが、もっと大局的にこの曲を観察すると、曲自体が「序破急」という概念に基づいて組み立てられているなぁと思います。
「序」、つまり提示部は1番全体です。趣向を凝らしすぎずシンプルに曲の骨格を聴かせて、Butterという曲はこういうメロディーと歌詞で構成されていると伝えているのが1番の役どころだと感じました。
そうやってリスナーの耳をButterという世界に引き込んでから展開される2番では、1番に無かった装飾をふんだんに使うことで我々の耳をあっと驚かせます。それまでに出てこなかったラップが出てくることも、耳を驚かせて勢いをつけることに一役買っています。これらが序を打ち破る「破」の役割ですね。こうやって1番と同じようにはいかないということを印象付けて、来たる大サビに向けての期待値や高揚感をぐんぐん高めていきます。
高まった先に待っているのが、大サビという「急」です。賑やかな音、破裂的な音、軽やかな音、リスナーを巻き込む演出などなど、クライマックスを盛り上げるのにふさわしい仕掛けがたくさん使われていることで、高まったテンションが一気に解放されます。
そして、最後の”Get it, let it go”の後にアウトロが一切無いことで鮮やかかつ軽やかな幕引きがなされます。アウトロが一切無いからこそ、聴き終わった瞬間にえも言われぬ爽快感やテンションの高まりを感じて、ただただスッキリして愉快な気分になりますよね。
Dynamiteもこういった序破急がかなり色濃く出ているなと思っているのですが、Dynamiteは大サビで転調して曲全体をトーンアップさせることで、急の賑やかさや盛り上がりを演出しています。かたやButterは転調をしておらず、音数の多さや音の質みたいなもので盛り上がりを演出しているので、急という盛り上がりを作るのにもさまざまなアプローチがあることが分かります。
一曲通して聴くとよく分かると思うのですが、Butterって曲全体に大きなクレッシェンドがかかっているような印象があります。最初は3種類しかなかった音が知らぬ間にどんどん増えていき、最後には数え切れないほどの音や声で曲全体がカラフルに彩られていく感じがたまらなく楽しくて、聴いては巻き戻しを繰り返しています。
このように曲全体に大きな序破急があって、その中にも細かい序破急があるという、ある種のマトリョーシカみたいな構成で組み上げられているなというのが、Butterを聴いた第一印象であり、私があまりにも衝撃を受けた点でした。
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。
使用音源
↑Butter
↑Butter(Instrumental)
曲のフルバージョンだけでなくインストまでアップしてくれるHYBE様に頭が上がりません。この記事を書くために狂おしいほどリピートしたので、少しでも再生回数に貢献できていると信じています。
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